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聖女、カドイナの街の変化に驚く

 久しぶりのカドイナの街は様変わりしていた。

 まず門や高い壁が新設されて、屈強な門番が目を光らせている。

 私が先行して挨拶してから素通りしようとしたら、止められた。

 ラドリー騎士団長のおかげで事なきを得たけど、私ひとりじゃたぶん入れてもらえなかったと思う。


「初めまして。俺がこのカドイナの警備隊長レックスです」

「騎士団長のラドリーです。本日は大所帯でご迷惑をおかけします」

「いえ、警備隊の宿舎も空いているので問題ないかと」

「宿舎もあるのですか」

「増設し過ぎたようでしてね。ハハハ……」


 元四級冒険者のレックスさんだ。自称自警団に対して寝た振りをしてやり過ごした時の事を思い出す。

 あれから街の人達に対して鍛錬をお願いしたけど、まさかここまで大きくなっているとは。


「あ! ソアさんじゃないか! 久しぶりだなぁ!」

「レックスさん、とてつもなく強くなりましたね」

「なんか成り行きでこうなってしまったよ……。皆が育ってくれたおかげだ。おかげで他の街との交流も復活してくれたよ」

「物資なんかも充実してるように見えますね。本当によかったです」


 確かにこの辺りに魔物の影はほとんどなかった。

 魔物の巣(デモンズネスト)の存在も感知できなかったし、ほとんど以前の活気を取り戻しつつある。


「弱いオレを奮い立たせてくれたのは君だ。皆も同じように感謝して……そうだ。後でエルナちゃんにも会ってやってくれ」

「エルナちゃんは今、何を?」

「今は街の見回りをやっているよ。熱心すぎて頭が上がらん」


 聞けば、今やこの街一番の実力者らしい。

 あれから真面目に修行もやってくれたみたいで、魔術指導なんかもやっているとか。

 おかげでこの街から更に魔術師が何人か誕生しそうらしい。うーん、聞けば聞くほどすごい街になりつつある。

 あのエルナちゃんがねぇ。嬉しい、嬉しいんだけど教えた子が巣だっていくのは少し寂しい気もする。


「ソアさん! エルナちゃんとは何者ですかぁ!」

「この街に住んでる女の子ですよ。魔術の才能に関してはサリアさんやキキリちゃんと並びますね」

「サリアさんはともかく! 私とだなんて! そんな! そんなっ!」

「キキリちゃんはもう少し自分に自信を持って下さい」


 でもこの謙虚さが強さかもしれない。

 謙虚なら慢心しないし、ザイーネみたいな事にもならないと思う。

 そのザイーネが目線でまだ周囲を観察している。隙なんて与えませんからね。

 それにしても、もう少しバレないようにやればいいのに。


「クイントさん。お休みの前に食事でもとりましょう」

「ちょうど腹が減ってたんだ。そうしよう」


 まともな晩餐会になればいいけどね。すでに準備は整ってあるみたいだし、これで滅炎のザイーネは終わりだ。

 何の知識も環境もなく、自力でここまで魔術を扱えるようにしたのはすごい。

 きちんとした教育と性格があれば国内でも上位の魔術師として名を馳せられたのに。


「えぇ、お口に合えばいいですけど」


 外道の為に調理される食材がもったいない。食事なんておこがましい。あくまで生かす為の過程でしかない。


                * * *


「ふぅ……なんとか侵入できたな」


 侵入した頃にはすでに夜だ。幻術でもよかったが、それよりも死角があるんなら利用しない手はねぇ。

 手持ちのフックを壁に引っ掻けて、一人ずつ昇った。


「あぁ、くたびれたぁ。グスカス、どうすんの?」

「この街はオレも初めてだが、まずは適当な家を襲う。食料を確保した後は足がついちゃ面倒だから、人間は殺す」

「うわぁ、えっぐぅい」

「ひとまずはそうだな……。あそこから狙うぞ」


 眺めると灯りが点々とついてる。今頃、一家団欒ってか。このうちのどれかが悲惨な事になるんだがな。

 店は人が多そうだからダメだ。となると狙うのはやっぱり民家しかねぇな。

 ターゲットは一人暮らしで、欲をいえばジジイかババアがいい。大した抵抗もなく殺れるからだ。さて、行くか。


「誰かに見つかったら殺っちゃっていい?」

「お前は殺してぇだけだろ……。オレとしちゃ女が欲しいんだけどな」

「私がいるじゃーん?」

「お前、最近つれねぇじゃん……待て! 隠れろ!」


 建物の影に身を隠すと、遥か前方から騎士らしき奴らが歩いてくる。

 警備が固いとは思っていたが、騎士までいるのかよ。この前の大部隊か?

 背中をきちんと見送って一息だ。


「ふぅ……何とかやり過ごせたな」

「騎士なんかぶっ殺しゃいいじゃねえか! ギャハハハ!」

「キャラン、幻術を使え」


 キャランの幻術で動き回れば見つかる事はない。

 今のオレ達はその辺の一般の奴らと変わらない姿で見えるはずだ。

 これで安心して――


「そこの人達、止まって」

「は……?」


 女がオレ達を呼び止めやがった。見ると、いかにもな立派な魔術師風の女だ。

 純朴そうな顔立ちで、歳はオレより下か。キャランの幻術を見破りやがったのか?


「なんだ?」

「この街の人達じゃないよね。どうやって侵入したの?」

「待てよ、オレ達が何に見えるってんだ?」

「この街の住人の魔力は把握済みだけど、あなた達のそれは初めてだから。両手を上げて後ろを向いて」


 見つかるの早すぎだろ。しかも凄腕の魔術師っぽいな。

 けどな、魔術師なんて魔術を使わなきゃただの人だ。

 脳天に一発、といきたいところだがまずは手足をぶち抜く。お楽しみはその後だ。

ハンターズ編?もそろそろ終わりです


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 敗北者ザイーネはもういいとして、グスカス一行VS修羅の街カドイナ一同のステータス対決が見ものですね(;^ω^)
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