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聖女、ハンターズ撲滅作戦を開始する

 ハンターズは今や冒険者ギルドにとって代わるほどの存在で、街の中で堂々と案内人と呼ばれる人物が斡旋している。

 とはいえ、さすがに王都では活動してない。つまりハンターズは王都以外での活動が目立つらしい。王都を中心として活動していた私の視界に入らない理由がわかった。

 さすがにハンターズも馬鹿じゃないから、国王のお膝元で悪さはしない。というのがライザーさん情報だ。


「ハンターズは冒険者ギルドの依頼と違って報酬も桁違いなんだ……。そりゃ最初は俺達も疑ったさ。だけど冒険者ってのはつらいもんでな……。提示してきた報酬を相手が出し渋ったり、未払いなんてのもある」

「騎士団への通報はしなかったのですか?」

「したところで、相手は本当に提示した報酬分の額を持ってなかったんだからな。そいつがしょっぴかれたところで、俺達がただ働きなのは変わらん」

「しかし未払い云々はハンターズの依頼も同じでは?」

「俺達が報酬を貰うのは案内人……いわゆる仲介役さ。仕事さえすればきちんと報酬を貰える」


 非合法で何でもありだから、資金源なんて考えるだけ無駄かな。

 案内人を捕えれば解決する? どうだろう。私の予想では案内人も割と下っ端なんじゃないかと思う。

 何せ大きすぎて実態がわからないとまで噂されているんだもの。

 案内人すら何も聞かされず、指示された仕事だけをこなしているだけの可能性が高い。案内人に指示している人物は正体を隠しているかもしれない。

 それも各街に無数にいるとなれば、下から切り崩してもトカゲのしっぽ切りをされて終わりだ。


「それであなた達は今までどんな仕事を請け負ったのですか?」

「実は今回が初仕事なんだ……。俺達は三級パーティだから、実績を積んで信用してもらわないと大きい仕事を貰えないんだろうな」

「この鉱山襲撃はかなり大がかりだと思いますが……」

「奇襲しようとしたところで、あんたに見つかっちまったからな。ここにいるのは大半が戦闘能力もない作業員だろ? 先手さえ打てば簡単だって案内人が言ってた……」


 もし本当だとしたら、ハンターズも大した情報を持ってないかもしれない。それとも単にアホなのか。周囲には魔物もいるし、非戦闘員だけじゃ成り立たないってわからないかな。

 もしかしたら、村の襲撃くらいに考えていたのかも。


「こんな仕事すらもこなせないから、俺達は三級止まりなんだ……」


 その三級でもハンターズ入り出来た。

 いつかの自称自警団は実力や実績がないせいで、それすら叶わない。更にその下には戦う力さえない人達が苦しんで喘いでいる。そんな人達がグレースやルイワードみたいなのに利用されて、使い捨てられる。この世の不条理と嘆くわけじゃない。それが世の中だ。

 でも、だからといって従う筋合いなんかない。それはこの人達だって同じだ。


「……事情はわかりました。未遂に終わったとはいえ、立派な襲撃犯。生かしておくわけにはいきません……と言いたいところですが」


 空間圧縮を解除した。自由になった途端に襲いかかってくる事もない。それぞれが表情に焦燥の色を浮かべて抵抗の意思すら感じられなかった。


「私からの依頼を引き受けてくれたなら見逃してあげます。報酬額はこのくらいでどうでしょう?」

「じょ、冗談だろ? 一級の討伐依頼並みの報酬じゃないか……」

「その価値はあるからです。何故なら王国防衛に繋がりますからね。どうです? といっても拒否権はありませんけど」

「……聞こう。お嬢ちゃんみたいな化け物に捕まったのが運の尽きだ」


 冗談とも取れない発言に私はひとまず笑っておいた。

 信用したわけじゃない。せっかく接触できたハンターズだから、利用できるならしたいと思っただけ。

 それになんとなくだけど、この人達はまだ踏みとどまれる。そんな元聖女の勘があった。


                * * *



「ソア、そいつら信用できるのか?」


 開口一番に疑いの言葉を口にしたのはデュークさんだ。無理もない。むしろ完全に信用できないからこそ、この人達に頼みたかった。


「それを見極めて下さい。私からのトリニティハートへの依頼です。この人達の紹介でハンターズに接触して下さい」

「まさか俺達にハンターズに入れと?」

「さすがハリベルさん。そうです、ハンターズ入りして情報をこちらに流して下さい」

「やりたい事はわかるが、こいつらの話が本当なら下っ端に大したものは回ってこないんじゃないか?」


 とりあえずやる気にはなってくれてるようで安心。ただデュークさんが短気を起こさないかが心配だ。そこはハリベルさんとサリアさんが手綱を握っていてくれることを願いたい。


「こちらの三級パーティは鉱山襲撃に成功して、鉱石や魔石を手に入れました。その際にトリニティハートという大物と知り合って、引き込んだ。実績となりませんか?」

「……なるだろうな」

「鉱山や王国側には口裏を合わせています。ハンターズ入り後の行動は任せますよ。情報さえ手に入れば、先回りして仕事そのものを潰せますからね」

「仕事がなくなれば存在意義を失う……理に適っているが、うまくいくのか?」

「お任せしますよ」


 私が見込んだ一級パーティだ。これ以上は何も言わない。

 もちろんこの依頼はトリニティハートだけにしているわけじゃなかった。王国側で活動している有望な冒険者にハンターズ入りしてもらって、各方面の情報を集める。

 その際に被害に遭いそうな人達を救出したり、ノコノコやってきた他のハンターズを返り討ちにする。

 要するにスパイチームと討伐チームに分かれた上での合同作戦だ。


「それにしてもなぁ、こいつら本当に大丈夫なのか?」

「デューク、年上だからね」


 本当にデュークさんが心配だけど、きっとやってくれる。ちなみに三級パーティへの報酬はデイビットの資産売却時に発生したお金だ。

 高級な衣服も売ってもらったし、あれはあれでかなり役立っている。あ、ルイワード邸の資産売却も大きいかな。

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