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聖女、ハンターズと遭遇する

 例の鉱山は鉱脈だけじゃなくて、金脈にもなる。

 あれからゴーレムを一掃して、時間をかけてようやく完成させたのがこの鉱山村だ。立地条件が最悪だから普通なら手をつけにくいけど、今は私の空間魔術で何とか出来た。

 まず現地に私が空間転移で作業員と護衛の騎士団、治癒師を派遣。周辺の森を開拓して簡易宿舎を建てる。王都から通える場所じゃないから、ここに一定期間だけ滞在して仕事をしてもらう形だ。食料なんかの問題もあるから、私が定期的に面倒を見るのがややデメリットだった。

 だけどそれを考慮しても有り余るほどのメリットがここにある。


「ライザーさん。鉱山の警備を担当していただいてありがとうございます」

「なに、今の俺は騎士じゃないからあくまでフリーだ。好き勝手にやらせてもらってるだけさ」


 騎士に復帰する気にはなれないけど、こうして積極的に活動してくれる。

 元々あの親子を守りながら剣を振るっていた人だ。ハンターズも何人か返り討ちにしたみたいで、かなり腕が立つ人だから頼もしい。

 ここに割く人員がネックだったから、ありがたかった。


「あの親子は元気ですか?」

「母親は織物工場で働いてる。あんな働き口があるなんて、さすが王都だよ」

「そこまで元気が出たのはつい最近ですけどね……。でもずいぶんとあの親子に付きっきりのようですね」

「ま、まぁ、面倒を見ると決めた以上は放り出すわけにいかないからな」


 ライザーさんが照れて頬を指でかく。

 この鉱山のおかげで雇用問題解消に繋がるし、いっそ鉱山街すら出来るかもしれない。希望者が殺到して、王国も処理が追いつかないとか。

 だけどいい事ばかりじゃない。噂が広まるという事は良くない人達の耳にも入る。意図せずとも、ここが囮の役割を果たしてしまう。


                * * *


 夕刻、作業員達が宿舎に戻って食事を取る。

 私は散歩目的で鉱山周辺をうろうろしているわけじゃない。

 ここが囮になってしまうなら、待ち構えていればいい。ライザーさんには今日は警備を控えてもらった。たまには休んで下さい。

 ハンターズはたまに商隊を襲っているらしく、見過ごせない被害を出していた。かといって私から捕まえにいくのは難しい。この広い王国内、がむしゃらに探すのは非効率だ。


「王都からは離れてるけどいずれ山道や街道を整備して、途中で宿場を用意すれば……ブツブツ」


 思えば空間魔術のおかげで、今みたいな芸当も出来る。怪我の功名というべきか、悪い事ばかりじゃない。

 周辺は本当に山だらけだから木材なんかの資源も当てにできるし、動植物も豊富だ。少しでも他の問題解消に繋がればいいな。

 本当に少しずつだけど、かつての王国を取り戻しつつあった。あったんだけど。


「こんな山奥に迷い人ですか」


 先に私が声をかけたものだから、侵入者達が姿を現す。四人ほどのパーティで、一見すると冒険者だ。


「あぁ、魔物を追いかけていたら迷っちまってな。お嬢ちゃんはここで働いている治癒師かい?」

「はい。こんなところに迷い込むとは不運ですね」

「まったくだ。くたびれたよ。すまないが今夜はここに泊めてくれないか?」

「あいにくですが、宿舎はすでに満員です。それに迷い人以外を泊めるわけにはいきません」


 一人がぴくりと眉を動かして、一気に表情が険しくなる。武器を抜いて、脅しかける気満々だ。困った時の武力行使、私もよくやる。


「あまり滅多な事はしたくないんだが、こっちも疲れてるんでね」

「迷ったにしては、この光景を目の当たりにしてもリアクションが薄いですね。普通、こんなところに鉱山があるなんて思わないでしょう」

「オイオイ、お嬢ちゃん。生意気な口を利くが、なんか自信でもあるのか?」

「あなた達も同じでは? ハンターズの皆さん? 奇襲の為に最初は隠れていたんでしょう」


 全員が殺気を放って、得物を見せつける。一番強いのが、あの男だ。魔力的に魔術を使うかもしれないけど、大した事ない。


名前 :ハンターズのパーティリーダー

攻撃力:943

防御力:306

速さ :1,040

魔力 :167


「なるほど……。単なる治癒師ってわけでもなさそうだな」

「お察しの通り、俺達はここの鉱石をいただきに来た」

「散ッ!」


 一人のかけ声と同時に全員が散った。それなりにパーティプレイの経験を積んでいる。

 リーダー格の男が私の背後に回り込んできた。


「ぐがっ?!」

「遅いんですよね。他の方々も、この方の命が惜しければ」


 リーダー格の男の首を掴んで人質にしたけど効果なし。残りのメンバーが私に集中攻撃を仕掛ける。だけど、それは悪手だ。


「ぎゃあッ!」

「づぅッ!」


 互いの刃が互いの体を斬り、刺さる。

 何が起こったのか理解できず、リーダー以外の男達が私の周囲に倒れた。私がいる部分だけ、不可侵の空間が出来上がっている。

 侵入した武器が私がいる空間を突き抜けて、奥にいる仲間を刺した。


「ぶ、武器が、すり抜けて……」

「どうなってる……うあぁ!」


 空間圧縮で全員を一か所にまとめて終わり。

 使い慣れなかった空間魔術だけど、こういう手合いがいてくれるおかげで練習できる。自分の時間があまり取れないから助かった。


「あが、か、身体が潰れる……!」

「私の質問に答えてもらえれば見逃してあげますよ」

「わがった! 何でもこだえるあががが!」

「本当に不運ですね。悪い事ばかりしてると、いずれこうなるんですよ」


 なんて言ったけど、事情次第で生かす。救いようのない悪党と判断したら殺す。どっちに転べばこの人達にとって幸せかはわからない。

 私のもう一つの狙いはハンターズになった冒険者達をこちら側に引き込む事だ。全員が救いようのない悪党というわけじゃないと思う。中には甘言に惑わされている人だって多いはず。

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