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聖女、王都防衛戦を決意する

 王国内の状況のまとめ。

 特記戦力であるトリニティハートやラドリー騎士団長率いる精鋭部隊の活躍が著しい。治癒師ソアの助力により、騎士団を始めとした戦力が大幅に強化された事も関係している。

 これにより魔物の巣(デモンズネスト)の駆逐が進み、物資の流通ルートを確保。特にアルカマイダ草原開通は大きい。その勢いで魔物の巣(デモンズネスト)化していた鉱山や工場を解放。

 復興費用捻出の懸念があったが、意外にも各要人からの支援を受けられる。ルイワード侯爵やグレースを始めとした悪の根の根絶による影響か。

 食料や生活用品が行き渡りつつあり、治癒師の活躍もあって病人は激減。温泉施設のおかげで人々の娯楽満足度もわずかに上昇。

 かつての賑わいには程遠いが、状況は確実に上向いている。


 一方で雇用問題や難民問題が浮き彫りとなる。

 依然として王都以外は安定した状況下になく、主要の街の中には未だ多くの問題を抱えていた。特に農業や酪農といった産業の復興は未だ目途が立たない。荒らされた田畑。生産者の失踪や死亡により、逃げ出した家畜など。

 ハンターズの動向も見過ごせず、彼らの駆逐も重要課題として挙げられる。というまとめをアドルフ王の自室で教えてもらった。


「簡潔なまとめとなるが、以上だ。特に食料の確保が思うようにいかないのが厳しい」

「小さい魔物の巣(デモンズネスト)をあえて放置して、魔物が増えたところで肉に……とやった事もありましたが。狩りでの供給には限界がありますね」

「恐ろしい事を思いつくな……」


 何をするにしても、人が足りてなさすぎる。

 それは鍛冶師も同じだ。あれから持ち帰った鉱石を国内の鍛冶師のところへ持っていき、生産体制を整えた。ただ連日、戦闘続きの騎士団の装備事情のせいで激務が続いている。無理はさせられないから、魔石装備はもう少し後になると思う。

 つまり炎の魔人討伐は当分、お預けというわけで。


「ここ数週間、思いつく限りの村や街を巡りましたが滅んだ場所も少なくなかったです。特に村は絶望的ですね」

「出来る限り、主要の街を優先的に守るようにはしてある。実はトリニティハートのような者達のおかげで、協力に志願する者が増えたのだ」

「本当ですか? それは朗報ですよ」

「うむ、それもそなたのおかげだ。トリニティハートが奮起したのも、そなたがいたからこそなのだからな」


 確かに思った以上に討伐が進んだなとは思った。そんな事情があるなら、私も奮起しちゃおう。


「やっぱり味方の増員は不可欠ですね。それに思うように復興が進まない原因がハッキリしました。ハンターズです」

「ハンターズ……。多くの冒険者が取り込まれた組織だな」

「かつて国内が潤っていたのも、冒険者ギルドがあったおかげでもあります。それを腐らせたのがハンターズですからね」


 ライザーさんによるとハンターズが村を襲ったのは、誘拐と強奪目的だ。ハンターズは人身売買の斡旋もやっているらしく、一人当たり高額の報酬が貰えるらしい。

 ところが村人が予想以上に抵抗した為、結果的にほとんど殺された。ライザーさんも抵抗したけど、とてつもない強さの魔術師がいて成す術もない。

 絶望の中、隙を見て残った親子を連れ出して逃げ出したと悲痛な表情で語ってくれた。


「非合法の依頼ですが報酬額が高く、こんなご時世のせいで釣られる冒険者が多いようです。ところが誰でも入れるわけでもなく、一定以上の実力が重視されるようですね」

「それは意外だな……」

「ライザーさんも村が襲われた際、村人の命と引き換えに勧誘されたそうです。あそこで断らなければ村人の命は……と後悔していた姿が痛々しかったですね」

「一人でも踏みとどまった者がいるだけで希望が湧く」

「えぇ、その通りです」


 つまりいつかの自称自警団は実力が足りてなくて、声がかからなかった。あんな人達もいれば、ライザーさんみたいな人もいる。私もアドルフ王と同じ気持ちだ。


「私はその希望を拾いたい。一つが小さくとも、集まればよい」

「その希望を拾う為にはハンターズが邪魔ですね。どんな人でも、心の隙を突かれて悪の道に引きずり込まれる事もあるでしょう」

「うむ。まずはハンターズを叩き、人員を確保する。ルイワードやグレースが王都の癌であれば、ハンターズは国内の癌だ」

「えぇ、蝕まれる人達がより増える前に討伐しましょう」


 きっとハンターズは王国内における最後の敵だ。そして人身売買斡旋があるという事は必要としてる人達がいる。


「ソアリスよ。ハンターズだけではない。ハンターズの恩恵を受けている者も排除して構わん」

「かなり手荒になりますね」

「今更だろう?」

「ごもっともです」


 二人揃って苦笑する。容赦なんて言葉はどこかに捨ててきた。


「王都……王国復興などと奮闘していたが違ったようだ。これはもはや王国防衛戦に他ならない」

「不埒な人達から私達の国を守りましょう」


 国を脅かすなら人も魔族も等しく敵だ。この20年間、好きに暴れてくれたようだけどもうお終い。

 ハンターズ、魔族。あなた達はかつて聖女と呼ばれたソアリスが討伐するよ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ソアリスの口調がホント癖になります。 楽しい気持ちになります。 続きが気になる書き方をされるので、すごく更新が楽しみです。 日曜日ふと、他の更新がないのに更新されているのに凄みを覚えます。…
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