聖女、コンビネーションを褒める
名前 :マテリアルゴーレム(赤)
攻撃力:3,502
防御力:1,232
速さ :254
魔力 :2,000
スキル:『炎の鎧』 近接攻撃時、炎で反撃する
名前 :マテリアルゴーレム(青)
攻撃力:2,621
防御力:1,044
速さ :444
魔力 :2,000
スキル:『水の防壁』 近接攻撃時、水で反撃する
名前 :マテリアルゴーレム(黄)
攻撃力:4,621
防御力:995
速さ :444
魔力 :2,000
スキル:『放電』 近接攻撃時、雷で反撃する
「魔石がこんなに!」
「魔石にしか見えてないのか?!」
いえ、危ないゴーレムとして見てます。
赤いのが炎を纏い、青いのが足元から水柱を放ち、黄色いのが雷を帯びている。魔石のゴーレム化は極めて危ない。私達、人間が放つ魔術攻撃をノーコストとノータイムで撃てる。
危険すぎて、魔石がゴーレム化したら諦めろと冒険者の間で鉄則になってるほどだ。他の鉱石と違って耐久性はさほどでもないのが唯一の救いだった。
「治癒師ソア! どう攻略する!」
「あ、頼ってくれるんですね?」
「こんな時にイラつかせるな!」
「何が厄介って、今までの方法だと反撃されます。一級冒険者の方々でも手を焼くほどなので、これといった攻略法はありません」
いつまでも悠長なやり取りをさせてくれるはずもなく、三体が襲いかかってくる。通常のゴーレムより速いとはいえ、二人なら余裕でかわせる攻撃だ。
「反対属性の魔術があれば楽なんですけどね。反対属性の魔術が」
「そんなものはない!」
「そうですか? ありますよ。一応、ヒントです」
黄色いゴーレムが片手から雷を放った。アルベールさんがスキルの残像で回避。反撃はしない。
「プリウが使えるのは簡単な治癒魔術のみ……。これが今の私達に欠けているものか」
「あー! 今度は青いゴーレムが水柱を放とうとしています!」
「わかっている!」
回避し続けるアルベールさんだけど、やっぱり反撃はしない。カウンターを恐れているからだ。
この二人に攻撃手段が欠けているのは事実だけど、今はそんなに重要じゃない。出来れば、二人に自力で気づいてほしいんだけどな。
「今度は炎が!」
「いちいち言われなくてもわかって……いや、待てよ」
アルベールさんがちらりと他のゴーレムの位置を伺っている。気づいてくれたかな?
「プリウ! こっちに来い!」
「何か策でも?!」
「こんな子ども騙しの手が通じるかどうかわからんが……」
プリウちゃんにアルベールさんが簡潔に作戦を伝えた。二人まとまって、また動く。高速で攪乱すると、ゴーレム達が二人を捉えきれずにグルグルと回る。
そして青いゴーレムが水砲を撃った。二人が回避したところで、赤いゴーレムに水砲が直撃する。焼石に水をかけたように、蒸発音と湯気が発生した。
「次!」
黄色いゴーレムの雷を青いゴーレムに。炎のゴーレムの炎をどちらかのゴーレムに。気づいてくれたみたいでよかった。
ゴーレムの攻撃の斜線上に別のゴーレムを誘導する。こんな事で、とも思えるけど誰にでも出来る芸当じゃない。
属性攻撃が入り乱れるこの状況でゴーレムの位置を把握して、攻撃させて当てさせる。口で言うほど簡単じゃない。一歩間違えれば大惨事だ。二人はバラけて、別々に誘導を始めた。
「いいですよ。その調子です」
とはいえ、これだけじゃ倒せない。でも二人は優秀だから気づいている。水で炎の鎧が一瞬でも消失すれば、攻撃のチャンスが訪れる。
「合わせろッ!」
「はいッ!」
一気に斬撃を叩き込めば、二人の攻撃力なら一撃だ。赤いゴーレムの胴体が千切れる様にして真っ二つになる。ミスリルゴーレムほどの硬さはやっぱりないか。
「ここだ!」
黄色いゴーレムが片腕を突き出して、アルベールさんを電撃で狙う。光の速さの雷がアルベールさんの残像を通過した。
その斜線上には青いゴーレムだ。水の障壁が消し飛ばされた時。アルベールさんの剣で青いゴーレムが倒れる。
「残るは……!」
残った黄色いゴーレムだ。さすがにまずいと思ったのか、両腕を広げてフロア全体に放電を開始しようとしている。その隙が命取りだった。
「これで……」
「終わりですね」
寸前、両腕がそれぞれ二人によって斬り落とされる。更に瞬時に増える斬撃の跡が夥しい。
アルベールさんが剣を仕舞った時、ゴーレムだった痕跡すらなくなる。鉱石に戻ったかのように錯覚するほどだった。
「……見事です。鳥肌が立ちました」
「大袈裟な事を言うな。貴様なら半分の時間もかからなかっただろう」
「それはそれです。大袈裟でも何でもありませんよ」
「そうか……」
少しくらいは嬉しそうな顔をしてほしい。こういう人にこそ笑顔になってほしい。だから私はその日まで頑張るよ。
「ソアさん」
「プリウさん、何でしょう?」
「あの、私……」
「はい?」
まさかお礼かな?刺々しい子だけど、素直なところもあるね。
「私、負けませんから!」
顔を赤くして、力の限り叫んできた。アルベールさんより、プリウちゃんのほうが負けず嫌い?
意外な事実だ。私としては勝負なんかしてないけど、目標としてくれるのは悪くない。
「いいでしょう。私も負けてられませんね」
「勝つのは私ですから!」
すごい闘志だ。なんとなくだけど、アルベールさんがこの子をパートナーにした理由がわかった。
確かにこれならアルベールさんもしっかりと頼れる。私を糧にどんどん強くなってほしい。
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