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聖女、鉱石を求める 1

 対炎の魔人戦の準備と並行して、私は鉱石発掘に行く事にした。

 騎士団によって解放された鉱山は通常の鉱石は発掘できても、魔石はほとんど採れない。

 魔石は魔力を帯びていて、いろいろな効果があるものがある。

 例えば炎に強い耐性を持つ赤い魔石があれば、炎の魔人戦でも有利に戦える。

 そう、私は皆と炎の魔人を戦わせるつもりだ。

 少し前までは地道に強くなってもらえればいいかなと思ってたけど甘かった。

 今後、ジェド級の魔族が襲ってこないとも限らないから無茶をしてでも強くなってもらう。


 それとは別に鉱石や魔石が充実すれば国内の装備事情も解決に向かうはず。

 現状、武器や防具もあまり足りてない。


「というわけで魔力感知の結果、王都より北にある山岳地帯にやってきたのです」


 一人旅の場合、こうやって独り言を呟く事でストレスを発散できる。

 気楽な旅ならいいんだけどここも例にもれず、魔物が多い。

 貴重な鉱脈があったとしても、手付かずなわけです。

 でもせっかく辿りついた先で先客がいた。


「プリウ、ここは人里からかなり離れている魔物の巣(デモンズネスト)だ。情報はほとんどなく、主の存在も不明だ」

「ハッ! 心してかかります!」


 アルベールさんとプリウちゃんだ。

 まさかあの二人に先を越されるなんて。

 というより、あの二人は魔物の巣(デモンズネスト)が目的らしい。

 片や鉱石目当ての私、お互い邪魔しないで済みそうではある。


「こんにちはー」

「ち、治癒師ソアァァ!」

「なんですかー!」

「なぜ貴様がここいるー!」

「治癒師の勝手ですー!」


 出会いがしら、いきなりな反応だ。

 プリウちゃんが臨戦態勢だし、だからなんで敵と認識してるの。


「アルベール様! 先制で仕掛けます!」

「いや、敵ではないだろう」

「そうでしたっ!」


 そうですよ。

 今回も修業の一環として、ここを叩きに来たのかな。

 私もここにどんな魔物がいるかなんて知らない。

 何せ山奥もいいところで、遭難したらまず出られないような場所だもの。

 そんな場所にいい鉱脈があるんだから、いろいろとままならない。


「私は鉱石目当てなので、お二人の邪魔はしません」

「鉱石だと? こんなところにそんなものがあるのか?」

「みたいです」

「引っかかる言い方だな。そうか、鉱石か」


 ゲッ、まさか横取り。じゃなくて、目的が一致しようとしている。

 口が滑った。ケチ臭い事は言いたくないけど、こっちも王国防衛がかかっているんだ。

 炎の魔人も魔石装備なしじゃ、きっと誰も対抗できない。


「よし、鉱石を持ち帰ろう。我が聖騎士団の補給事情に潤いを与えられるはずだ」

「さすがはアルベール様! 大胆かつ聡明な発想です!」


「そんな要素あった?」


 私の発言で思いついただけじゃ。

 まぁいいや。こんな人達はおいて探索しましょう。

 どれどれ、入り口は狭かったけどなかなか広い。

 枝分かれしてる様子もないし、後は魔物かな。


「空間掌握……」

「む、何をしている」


 アルベールさんは無視して洞窟内の魔物と数を把握した。

 結果、想定外の事実が判明してしまう。


「お二人はゴーレムと戦った事がありますか?」

「ゴーレム? 経験はないが、鉱石の塊だろう。討伐に支障はないな」

「そうですか。それならいいのですが……」


 ゴーレム。

 長い年月をかけて鉱石や魔石が進化して魔物化したものだ。

 進化したのは何も人間や十二魔星(マスタートゥーエル)だけじゃない。

 物言わない物質だって進化する事もある。

 別の国では付喪神なんて言い方をするらしいけど。

 術者によって人工的に生み出されたゴーレムじゃないだけまだマシだ。


「鉱石にもよりますが、彼らは恐ろしく硬いですよ。生物と違って急所もありませんし、痛みも感じません」

「フン、そんな事はわかっている。私とプリウなら敵ではない」


 どうも聞く耳を持ってくれない。

 未知の相手ならもっと慎重になるべきなのに。

 情報がほとんどないはずなのに、二人はどんどん先へ進んでいく。


「治癒師ソア、お前の手は借りん」

「私も自由にやらせてもらいますよ」


 奥からぎこちなく歩いてきたのは紛れもなくゴーレムだ。

 あのメタリックなボディはアイアンゴーレムか。鉄も欲しかったところだ。


名前 :アイアンゴーレム

攻撃力:966

防御力:1,674

速さ :65

魔力 :0

スキル:なし


「出たな……」

「ソアパンチ!」


 複数個所に拳を叩き込んで、鉄の体を分断させた。

 バラバラになったゴーレムは少しの間だけ足掻くけど、すぐに動きを停止する。

 生物じゃないとはいえ、私達の定義でいう死というものはあった。

 これは私の推測だけど彼らは生物のつもりで活動していて、同時に活動停止の瞬間も心得ている。

 もっとも、私達よりもその基準は遥かに高いけど。

 胸を貫いたくらいじゃ止まらないし、頭だけ切断してもダメ。

 もっと徹底的にやる必要があった。だから魔物の中でも手強い部類なんだけど、このペアには危機感がない。

 それはさておき、さっそくこの鉄を回収しよう。

 私のポーチを空間魔術で改良して、たくさんのアイテムを収納できるようにした。

 小さいポーチの中を空間魔術でいじって、広々とした空間にしてある。

 もちろん無限収納というわけにはいかないし、物を縮小させて入れる感覚に近い。

 もっと空間魔術が上達すればたくさんのものが入ると思うんだけど、なかなか時間を取れないのが悩みどころだった。 


「治癒師……ソアァァァ!」

「なんですかー!」

「私達の邪魔をするなぁ!」

「じゃあ、ゴーレムは任せますー! 苦戦しても知りませんからね!」


 そういえば討伐はお任せしたんだっけ。私は鉱脈を探ろう。

 赤い魔石はもっと奥にあるみたい。それに比例してゴーレムも増えるし、アイアンどころか更に硬いミスリルゴーレムもいるんだけど。


「プリウ、ゴーレムのような木偶も討伐できなければレーバイン様は失望されるだろう」

「はい、心得ております」

「うむ。それにしても治癒師ソア……。拳であの鉱石の塊を粉砕など……」

「私達とて、この剣があります。拳などよりもスマートに討伐してみせましょう」

「そうだな。そもそもあんな治癒師がいてたまるか」


 聴こえてるからね。

 あんなも何も治癒師の勝手です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 聖騎士団(笑)ってアイドルの親衛隊並みに役に立たなくて変な選民思想に染まり切っとりますな。 同じ親衛隊でもNSDAPの武装親衛隊の方は役に立って見せたと云うのにね。
[一言] ソアロケットパンチも夢じゃない 腕を空間魔法で取って魔力推進で目標にアタック 戻ってきたところを治癒魔法でくっつける
[一言] どうせだからバカ共も一緒に殴り倒しちゃえばいいのにw
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