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聖女、聖騎士団の若手に注目する

 聖騎士団の団長は元王国騎士団副団長のレーバインさん。

 そのレーバインさんの息子がアルベール。

 レーバインさんの父親であるラドリー騎士団長は、アルベールからしたら祖父にあたる。

 なるほど、話に聞いていた聖騎士団を率いていたのはあの人だったか。

 魔術を差し置いて、剣聖とまで称えられた王国最強騎士レーバイン。

 その実力は魔術を駆使する魔王軍の魔族を単独で倒すほどだ。

 そんなレーバインさんが王国を離れて聖騎士団なんてものを立ち上げていた。

 明かされてみれば納得、あの人の私に対する敬愛は尋常じゃなかった。

 会うたびに祈りを捧げられるし、かなり暑苦しくて実をいうと少し苦手だ。


「レーバインは元気か?」

「はい、元気すぎて騎士達総出で挑んでも、かすり傷一つ負わせられません」

「信念はどうだ?」

「揺るぎありません」


 ラドリー騎士団長が苦笑して満足したような、それでいて寂しそうな表情を浮かべた。

 レーバインさんは父親であるラドリー騎士団長を尊敬していたのに、お互い違う道を歩んでいる。

 私がいない間に何があったんだろう。


「この私に啖呵を切っただけはある。今や正規軍である我々顔負けの活躍だものな」

「父上……レーバイン様は本気でこの国を守り、そして変えようとしておられます。そのような弱音を吐いてる場合ではありませんよ」

「どのような大義であろうと、王都には大勢の民がいる事を忘れるな」


 険悪な雰囲気だ。

 聖騎士団は王国騎士団から独立して立ち上げられた組織であり、国を守ろうという信念を持っている。

 それ自体はこの人達が掲げる聖女ソアリスの意思とそう変わらない。

 聖騎士団は王家や王都を見限った。王都の民すら切り捨てている。

 アドルフ王の取捨選択と同じかもしれない。守るべきもの、優先すべきものが違うだけ。

 確かに私も王都ばかりにかまけていて、他の街を守っているのかと言われたら無理ですと答える。

 王都か他の街や人達か。お互いに選択したものが違うだけだ。

 だけど――


「聖騎士団は初めから王都を見捨てています。少なくともラドリー騎士団長を始めとする、ここにいる人達は何一つ見捨てようとしていません」

「不躾な態度だな。聖騎士団の在り方を問うつもりか」

「確かに王都は危うい状態です。未だよろしくない人達が蔓延っているのも事実です。ですが、あなた達はどう取り繕っても離反者です」

「名誉だと自認している! そもそも騎士団という守り人がいる王都にいながら何を言う! 悲惨なのは王都以外だ!」

「詭弁はやめてください」


 アルベールやプリウだけじゃなく、全員が硬直した。

 また剣を抜こうと身構えているけど、かすかに手元が震えている。

 それだけの実力があるなら、その構え自体に意味を成さないのはわかるはず。

 臨戦態勢なんて無意味だ。


「どのような状況でも腐らず、信じて戦い続けたラドリー騎士団長やこちらの騎士達に対する侮辱です」

「そ、そのような事は……」

「あなた達が王国騎士団を抜けたせいで戦力がガタ落ちした中、彼らは命をかけて守ってきました。理解したのなら、非礼を詫びてください」

「お、お前は何者だ……。ただの治癒師とは思えない」

「理解できないのですか?」


 アルベールがギクシャクした動きで、頭を下げるのを躊躇している。

 そんなに非を認めるのが恥ずかしい事なのかな。

 聖騎士団だか知らないけど、そもそも正規軍であるこの人達に何か言えた立場じゃない。

 どんなに綺麗ごとを並べたところで、反乱軍と認識されるほどの事をやったわけだし。


「わ、私が、悪かった……」

「ア、アルベール様……」

「プリウ、お前も頭を下げろ」

「いえ、私は何も言って」

「パートナーである私の失態なのはわかっている……頼む」

「パートナー! はいっ!」


 プリウが勢いよく頭を下げた。速い。

 流されやすいのかな、この子は。


「それであなた達はここへ何をしに来たのですか?」

「そのタリウス討伐だ。目的を達成した以上、ここにいる意味はない」

「あの方々が弱らせていたおかげで、あなた達は勝てたのです。その事を忘れないで下さい」

「いや、私達だけでも勝てた戦いだ」


名前 :アルベール

攻撃力:3,555+100

防御力:3,187+100

速さ :3,399+100

魔力 :250

スキル:『必中眼』 敵の急所がわかる。

    『残像』  残像で回避率を上げる。

    『騎士道』 一対一の時、ポテンシャルが上がる。


名前 :プリウ

攻撃力:1,730+600

防御力:1,981+600

速さ :1,873+600

魔力 :1,444

スキル:『逆境』       格上と戦う時、ポテンシャルが上がる。

    『フィーリングラブ』 好きな異性と共に戦う時、ポテンシャルが大幅に上がる。

    『騎士道』      一対一の時、ポテンシャルが上がる。


 さすがの強さとスキル、レーバインさんが目をかけるだけある。

 必中眼と残像だけで格上とも渡り合えるし、プリウの逆境がアルベールといいシナジーだ。

 フィーリングラブも異性と組むだけでいいんだから反則としか言いようがない。

 だけど――


「いえ、あなた達だけでは難しい戦いでした。敵の急所が見えるようですが、あのタリウスの真価は長距離射撃です。不意に飛んでくるそれを回避できますか?」

「事前に把握済みだ。常に集中していれば回避など、造作もない」

「そうですか。ですが、あなた達の勝利に貢献した方々を忘れないで下さい」


 アルベールがトリニティハートや騎士団、そしてラドリー騎士団長を一瞥する。

 少し沈黙した後、長くため息を吐いた。


「私はレーバイン様に認められなければいけなかった。事実を報告すれば、どうなるか……」

「あなたの剣は多くの命を守りました。そこに偽りなどありません」

「そ、それは……父上の……」


 レーバインさんなりの励ましの言葉だ。

 剣を振るった結果に偽りなどない。そんな信念だからこそ、王都を見限ったのかもしれない。

 なんて、思わずレーバインさんの言葉を口走ってしまった。


「あ、今のは別に」

「何故かわからないが、あなたには言葉にも力がある。疑ってしまったが、信用させてもらおう」

「は、はい……」


 聖騎士団か。あの二人は多分、まだ若手の部類だ。

 王国騎士団から独立したとなると、他にも名のある騎士が流れたはず。

 アルベールとプリウは戦力として氷山の一角だし、こっちも負けてられない。

この作品をここまで読んでいただいてありがとうございます!

おかげ様で10万文字を超えました!


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