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聖女、若手の戦いを見守る

 丘の上にいたタリウスの下半身は馬、上半身は人間だ。

 左腕と一体化している金属製の弓、背中まで伸ばした長髪に獣のような顔。

 牙を覗かせそうな口元を歪めて、私達を睨みつけている。


「獲物どもが……」

「あなたの手下は全滅しました。ここで終わりですね」

「あの化け物女か。お前がボスである事は疑いようもない。何者だ?」

「治癒師ソアです。あなたにはいくつか聞きたい事があります」

「聞くとでもッ!」


 タリウスは私に向かってくる気満々だ。

 でもその進路を遮るように、デュークさんとハリベルさんが立つ。


「粋がるなよ! 命砕の蹴り(フェイタルキック)ッ!」

「ぐぅッ?!」

「がッ……!」


 タリウスが上体を上げて、前足を踏み下ろす。

 デュークさんとハリベルさんが防御態勢を取るも、簡単に弾き飛ばされた。

 踏み抜いた地面が爆発するかのように、土煙をあげる。

 寸前で身を逸らして回避したから二人とも、助かった。

 あのまま踏み潰されていたら死んでいたと思う。


「な、なんだ、この威力……!」

「接近すれば勝ち目があるとでも? 楽しいなぁ!」


名前 :タリウス

攻撃力:8,395

防御力:2,109

速さ :7,405

魔力 :240

スキル:『狩人の目』『精密射撃』


 タウロス以上の攻撃力と速度に加えてあの射程。

 狩人の目は遥か遠くを捉えるスキルで精密射撃は命中精度を格段に引き上げる。

 私の頭に当てられたのも、このスキルのおかげだ。

 防御力がタウロスより低いけど、あの速度があればほとんど関係ない。

 このレベルの魔族が今まで隠れ潜んでいたなんて、やっぱり考えにくいな。


「ソア殿。若手だけでは少々厳しい相手かと」

「ラドリー騎士団長、もちろんあなた達に任せます。私が教えたアレを使いこなせば、集団ならいい勝負になるかと」

「なるほど、それならば奮起しましょう」


 ラドリー騎士団長が大剣をタリウスに向ける。

 その挑戦状を受け取ったとばかりに、タリウスがラドリー騎士団長に対してニヤけた。


「老いぼれ、獲物の中でもお前がマシだが無理はするな。あの時、狩ろうと思えば狩れていたのだからな」

「ならば判断を誤ったな。狩っていれば、ここで殺される事もなかっただろうに」

「口が減らんな! 命砕の蹴り(フェイタルキック)ッ!」


 前足の踏みつけをラドリー騎士団長がかわす。

 地面を爆発させた後、ラドリー騎士団長がタリウスの側面に大剣を振り上げた。

 しかも、弓が装着されていない死角だ。騎兵相手の定石だけど、果たして――


命砕の蹴り(フェイタルキック)!」


 前足を軸にして半回転。その勢いでラドリー騎士団長に後ろ足でなんとかキックを炸裂させた。


「ぐあッ……!」

「ほう、私の命砕の蹴り(フェイタルキック)を受けて倒れないか……」


 態勢を崩すラドリー騎士団長に勝ち誇っている場合じゃない。

 騎士達が全方位から攻撃を開始して、その中にはデュークさんとハリベルさんがいる。


「烏合の衆が! 蹴散らして終わりだッ!」


 正面の騎士達に突撃したタリウス。

 だけど、騎士達は寸前のところでばらけて回避した。


「なに……!」


 跳躍して騎士達の襲撃から逃れるも、タリウスは皆を捉えきれていない。

 ステータスだけなら比べものにならないけど、皆には魔力感知を教えている。

 騎士達の魔力値は一般の人達とほぼ同じだから、魔力感知は不可能というのが常識だ。

 実際、少ない魔力で何を感知できるのかといった感じだけど無駄じゃない。

 よく視線を感じる、人の気配を感じるみたいな事がある。あれは無意識のうちに微弱ながら魔力を感知している証拠だ。

 魔力はそのままなら毒にも薬にもならないけど、その生物の状態をよく表している。

 敵が攻撃すれば、その方向に魔力が動く。

 魔力が低い一般の人でも、魔力感知の訓練を受ければ勘程度だけど敵の動きがなんとなーく掴めるようになるというわけです。

 まぁないよりマシ程度なんだけど、ここにいるのは戦闘訓練を嫌というほど積んだ人達だ。

 勘だろうが、割と大きな武器になっている。


「ちょこまかと……!」


 タリウスのほうがずっと速いはずなのに、騎士達を捉えきれない。

 跳躍しつつ、騎士達に蹴りを放つ。

 一度、受けてしまった騎士達は戦闘不能になるけどそこにはキキリちゃんだ。


「これで元気全快ですよ! さぁ! お馬さん退治再開です!」

「すまない……!」


 どんな状況でも厄介なのは治癒師だ。

 このポジションをどうにかしない限り、長期戦は避けられない。

 当然、タリウスも馬鹿じゃないから目標をキキリちゃんに定める。


「まずはお前からだ!」


 騎士達は守りに行かない。

 賭けているからだ。


命砕の蹴り(フェイタルキック)!」


 治癒師であるキキリちゃんが耐えられるわけがない。

 と、タリウスは思っているはずだ。


「全力……防御ぉ……!」


 足腰はへなへなになり、涙目だ。

 だけど両腕でしっかりとあのなんとかキックを防いでいる。

 事前の打ち合わせ通り、騎士達は賭けに勝った。


「な、何だと……」

雷属性高位魔術(トールスピア)!」

「ぐぎゃぁぁぁッ!」


 皆は初めからこれを狙っていた。

 決定打となるのは高威力の魔術しかない。

 闇雲に撃ってもキキリちゃんが狙われたように、タリウスは真っ先にサリアさんを潰していた。

 だからサリアさんが姿を隠しつつ、皆がタリウスを牽制。

 キキリちゃんに狙いを定めてくれるのも計算済みだ。

 まさか囮のキキリちゃんがご自慢の蹴りを防げるなんて思わなかったと思う。


「こんなもの……」


 強がっているけど、こっちも足腰ががたついている。

 いつかの蛙ほどの防御もないから当然だ。

 それにサリアさんの魔力や魔術の精度はあの時よりも格段に上がっているわけで。

 当ててしまえば、この手のタイプは脆いのです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 正しく「狩られる獲物」の立場を思い知っているなぁ。 認めたくないだろうけど。 >当たらなければどうということはない なお当たると大変なことになる模様。
[一言] 回避型は当てれば事故る うむ
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