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聖女、弟子(仮)の成長を見届ける

 タウロスは典型的なフィジカル型だ。単純なパワーに加えて、あの角の威力が恐ろしい。

 タウロスホーンとかいう聖女パンチに負けず劣らずひどい名前の技。あれで城壁なんか簡単に吹き飛ぶ威力はあると思う。


「タウロスホーンッ!」

雷属性中位魔術(サンダーネット)ッ!」


 魔術師のサリアさんが前線に出て、雷の網を展開する。

 タウロスがからめとられて、電撃の洗礼を受けた。

 今まで前衛の守りを務めていたハルベルさんが側面からの奇襲。

 デュークさんが角に狙いを定めて、ブレイズエッジで角を切断した。


「やった! ソアさんの講座が活きたぜ!」

「うごがぁぁぁ! この、このクソカスどもがッ!」


 魔力の練度を高めたおかげで、デュークさんのブレイズエッジの切れ味が格段に上がっていた。

 暴れ狂って3人を引き剥がしたタウロスが、反撃の姿勢を見せる。

 その際に雷の網も振りほどいて消し飛ばしたんだから、とてつもない。

 一方、ここで私はすでに半分以上の治療を終えていた。


「あ、あの連中は噂に聞くトリニティハートか?」

「知ってるんですか?」

「噂だけな……。10代という若さで1級にまで上り詰めた新進気鋭、鬼才……。魔物の巣(デモンズネスト)の駆逐数の最高記録を塗り替えた天才パーティだってな」

「そんなに!」


 もしかしたら、私がいなくてもフロッガスに勝っていたかもしれない。

 評価を改めるべきだった。

 私が封印されている間にそんな人達が生まれていたとは。

 でも、驚くのはトリニティハートの3人だけじゃない。


治癒下位魔術(ヒール)!」

「サンキュー!」


 デュークさんがタウロスの肘うちで迎撃された際に、キキリちゃんが一瞬で回復魔術をかけた。

 宮廷魔術師で同じ芸当が出来る人は何人もいない。

 ダメージで一番恐ろしいのは激痛で怯むところだ。

 特にタウロスみたいなフィジカル特化の魔族相手はその隙をついてきやすい。


「目障りなんだよッ!」

「あわわーわーわ! こないでぇ!」

「うるせぇぇ!」


 タウロスの拳をキキリちゃんが回避できるわけがない。

 だけど3人は彼女を守りに行かなかった。必要ないからだ。

 キキリちゃんにタウロスの拳が直撃して、転がっていく。


「はぎゃぎゃぎゃー!」

「そこでくたばってなぁ!」

「いったぁぁい……」

「……あ?」


 痛がっているものの、普通に起き上がった。

 そう、私も最初は気づかなかったけどあの子の真骨頂は頑丈さだ。


「何するんですかぁ……」


名前   :キキリ

攻撃力  :2

防御力  :2+6500

速さ   :2

魔力   :431+130


 ほんの一瞬だけど、攻撃された際に補正値がこの数値まで跳ね上がった。

 魔力値からは考えられない補正値だ。

 通常、補正値は魔力値の前後が限界として収まる。

 野営の時にキキリちゃんの防御力を試すために、ものすごく手加減してデコピンをした事があった。

 何度やっても平然としてるので聖女パンチなら、と思いかけたほどだ。

 結果、私にもわからない事はある。

 幼い頃にいじめられていたせいで人一倍、危険を察知したり身を守る事に敏感だったらしい。

 それが治癒師になって、危険が迫ると自身を魔力で瞬時に強化するようになった。

 その最高値はフィジカル特化の魔族の攻撃にすら耐えるほどだ。それでもかなり痛がってるけど。


「ソア殿、あの者達……特に治癒師の少女は一体?!」

「王都に招集された方々です。ご心配はありません、彼らは強いです」


 ラドリーさんが戦いから目を離さず、生唾を飲む。

 ふと横顔を見ると、胸の奥が締め付けられる思いがした。

 水分が失われたような皺だらけの肌は、これまでの苦労を物語っているようにも見える。

 時だけじゃない。私もこの人にここまで歳を取らせてしまった。

 ラドリー騎士団長。20年もの間、申し訳ありませんでしたと謝りたい。

 お疲れ様でしたと言ってあげたい。

 そんな風に花束を渡せたら、渡せたら少しは気が晴れるかな。 


「……強いな」

「えぇ、本当に」


 部下に容赦なく怒声を飛ばして、心を折らんばかりの厳しさを見せていたこの人が褒めたか。

 事実、トリテニティハートの3人の巧みな連携がタウロスを翻弄している。

 追いつめられたタウロスがデュークさんの一撃を受けて、ついに立てなくなった。

 勝負あったかな。


「ま、待て! て、てめぇらが強いのはよくわかった! もう手は出さねぇ!」


 タウロスが片手でトリニティハートを制する。

 魔族は本来、個人でどうにかなる相手じゃない。

 魔王が率いていた魔族も、今みたいに騎士団や冒険者が束になって戦ったほどだ。

 タウロスは魔王軍全盛期なら間違いなく幹部が精鋭に加えるほどの実力がある。

 でもトリニティハートは噂になる天才だけあって、魔族を追いつめていた。

 英雄級。突出した力を持つ冒険者をそう呼ぶ。

 もう少し早く生まれていたら、魔王軍討伐隊に駆り出されていたかもしれない。

 さて、タウロスが止めを刺される前に一仕事しなきゃ。 


「あの、質問があります」

「ひっ!」


 私が近づくと、タウロスは完全に尻餅をついて降参状態だ。


「あなたはどこから来たのですか? 誰かに仕えているのですか?」

「そんなもんいねぇ! オレはずっと単独で強かった! でもてめぇらには敵わない! 見逃してくれ!」

「ふーん……。そうですか。それでは仕方ありませんね」

「そうだろ! だから見逃し」


 空間切断、千切り。まな板の食材みたいにタウロスが綺麗にカットされた。

 こうなると断末魔の叫びすらあげられない。


「ッ……!!」


「生きる価値があるとでも?」


 肉片になったタウロスにそんな言葉は届かない。汚らしい牛肉が転がった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まさに外道wwwwww
2023/09/11 04:35 退会済み
管理
[良い点] > 空間切断、千切り。  ナイスカット~
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