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聖女、魔族を討伐する

 魔力強化で全力疾走して、少しでも移動時間を短縮する。

 ふと空間魔術で行った事のある場所へ転移できないかと考えたけど、結構難しい。

 空間掌握の範囲を限りなく広げないといけないし、今の私じゃ無理だった。

 もう少しじっくりと研究すればいけるかもしれないけど、ここ最近は教えてばかりだったな。

 落ち着いたら久しぶりに魔術の研究や修行に打ち込もう。うん。


「ダーーッシュ!」 


 ちんたら街道を移動している余裕なんてない。

 休憩や仮眠を挟みつつ、走り続けて二日が経過している。かなりきつい。

 聖女時代でもここまで無茶をした事はなかったと思う。


「ジャーンプ!」


 川や岩、丘を飛び越えて何度も近道していた。今は森の中を突っ切っている。

 カドイナの街で地図をもらっておいてよかったと思う。

 正直に言うと、あの街もそれなりに心配だ。

 エルナちゃんも板についてきたけど成長途中だし、数少ない冒険者さんは全員が4級だった。

 修業中の若い人達も基礎の段階で、そうなると実質的な戦力は本当に少ない。

 あの騎士さんはしばらくカドイナで休んでもらっている。

 手紙は預かってるから安心。

 もし良くなったらカドイナの街の守りをお願いしてあるし、後は私だ。

 ここから王都まで、かなりの日数がかかる。となるとすでに――


「だいぶ近道したと思うけど……あれ、何あれ?!」


 森の奥に見えるのは泡か何かだ。

 一帯を包むほどのサイズで、よく見たらそれは目玉みたいな卵だった。

 気持ち悪いくらいの数と規模だ。知らないうちに魔物の巣(デモンズネスト)に入っていたかも。

 もう少し近づいてみると、冒険者らしき3人が魔物と戦っていた。


雷属性低位魔術(サンダーブリッツ)!」


 魔術師の一人が、蛙型の魔物を次々と倒している。

 感電するように魔物から魔物へと電撃が移り、蛙型の魔物が焼け焦げていく。


「とっとと潰すぞ! 主がいたらまずい!」

「なーにがまずいってぇ?」


 卵の陰からのっそりと現れたのは赤色の巨大蛙だ。

 ぬめりとした表面から体液がぽたぽたと落ちる。

 登場した途端、魔術師の一人が魔術を放つ。


「おめぇら……」

雷属性高位魔術(トールスピア)ッ!」


 相手の口上も待たずに先手必勝、正しい。私もよくやってた。

 だけど雷の槍は体液のせいか、命中したところで拡散するようにして消える。

 できれば自分達の手でどうにかしてくれたほうが経験になるんだけど、これはまずいかも。

 というか今、喋った?


「かゆい、かゆい。今夜の餌がノコノコやってくるなんてなぁ」

「こいつ、魔族か!」


 やっぱり魔族だ。リーダーの剣士が怖気づくのも無理ない。

 喋る魔物は魔族と呼ばれていて、喋らない魔物と比べて知能も実力も段違いだ。

 滅多に出現しないけど、討伐の際にはより大規模の部隊編成をする。

 その上で冒険者に協力を仰ぐのも珍しくない。ただし1級より下はお断りの超危険案件だ。

 面倒だから大体は私一人で討伐に向かうんだけど。


氷属性高位魔術(フリーズジェイル)!」

「ぬおっ?!」


 森の地面から氷の柱が突き出して、うねりながら一瞬で巨大蛙を拘束した。

 氷に魔力を加えて操作している。基礎がしっかりと出来上がった高位魔術なら、魔族といえども簡単には抜け出せないはず。

 助けがいると思ったのにこの人達、何者だろう?


「こいつでどうだ! ブレイズエッジッ!」

「もう一度、全魔力を集中よ……! 雷属性高位魔術(トールスピア)!」


 更に容赦なく残りの2人が全力で攻撃を叩き込んだ。

 巨大蛙に直撃した炎の斬撃が体液を蒸発させて、雷の槍が突き刺さって。

 消し飛んでもおかしくないほどの光と音を周囲に響かせた。


「やったか?!」


「ウイウイウイ……。このフロッガス様に話もさせねぇとは、おんめぇらアレだな? えーと、なんだっけなぁ」


 拘束していた氷の柱が崩れて、身体の表面を少し焦がした程度の巨大蛙がいた。

 うん、やっぱりこれが魔族だ。


「あー、ジョーシキだ。おめぇら、人間のくせにジョーシキがねぇ。ひょっとして頭悪いんでねえか?」


名前 :フロッガス

攻撃力:7,145

防御力:9,011

速さ :2,808

魔力 :6


 魔術を使うタイプじゃないけどその分、フィジカル特化だ。

 私はどちらかというと、こっちのほうが嫌いだったりする。

 魔術使いなら魔術で対策出来る事が多いけど、こういう身体そのものが神秘に満ち溢れているのはシンプルに強い。

 今みたいに細かい理屈抜きでゴリ押ししてくるんだもの。


「ほとんど効いてない! ば、化け物かよ!」

「1級の魔物だって倒せるのに!」


「はい! そこまで!」


 躍り出た私に驚いたのは人間も魔物も同じだ。

 これ以上はまずい。この人達じゃ勝てない。


「な、なんだ? 女の子?」

「あなた! 危ないから逃げて!」

「あなた達、すごい冒険者みたいだから今からお手本を見せます」

「はぁ?!」


 フロッガスが目玉をぎょろりと向けてくる。

 強さ的に魔王の幹部の手下ってところかな。それでも並みの冒険者じゃ歯が立たないレベルの魔物が多いから仕方ない。

 時間がないけど、少しでも魔術のレクチャーをしよう。


「そんだぞぉ。頭悪いこいつらでもそれはわかる。ひょっとしておんめぇ頭すげぇ悪いんでねえか?」

雷属性低位魔術(サンダーブリッツ)


 私の手の平から雷が拡散して、巨大蛙を包囲するようにして突き刺さった。

 爆裂ともいえる音をまき散らして、眩しい光に冒険者達が目をつぶる。


「が……あ……」


 一瞬にして原型すら止めなくなった巨大蛙がいた。

 焦げた臭いと煙が立ち込めて、鼻をつまみたくなる。


「はい。これが魔力の正しい調整です。そちらの女の子の雷属性高位魔術(トールスピア)は一か所に集中するあまり、全体に魔力が届いてません。

魔術の性質上、それは正しいのですが今の魔物は体液が邪魔をしています。つまり一か所の体液を飛ばしても、周囲の体液がすぐにカバーするんです。

すべてを弾き飛ばす意味でも、全体を包み込むように攻撃する必要があったのです。て、聞いてます?」

「あんまり……」


 口をあんぐりと開けたまま停止してる。

 驚くのはしょうがないけど話が進まない。

 あまり時間がないから手早く済ませたいのに。

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