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ロイヤルウェディングはお断り!  作者: 徒然花
裏側とか、その後とか
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いづこも同じ

 日暮れ時の田舎道を通りゆく一台の馬車と、その前後を守る騎乗の騎士が二名。

 粗末な馬車は作りも悪く、振動が体に直に届き疲れることこの上ありません。


「ったく、なんて乗り心地の悪い馬車!」

「お母様とリールはまだいいじゃない、お尻に肉がいっぱいついてるから。私なんてそんな天然のクッションないからめちゃくちゃ痛いのよ」

「「なんですってぇ!?」」


 そこに乗っているのは、シャルトル王子によって都を追われたリヨンの義母と義姉たち。

『僕とリヨンの前に二度と顔を見せるな』という命令のもと、都から遠く離れた辺境の地を目指しているところです。

 都落ちしたとはいえ、しょぼくれていないところがこの人たちのバイタリティ。

 わやわやと喧嘩しつつ、田舎道をゆきます。

 

「子爵家の馬車は乗り心地よかったのに」

「その前だって、お父様はお金持ちだったから、こんなボロ馬車になんて乗ったことないし」

「それもこれもサンドリヨンのせいだわ! おのれ、サンドリヨンめ!」


 環境が悪くなれば気持ちも荒ぶというもの。

 三人の憎悪は『地位・金・イケメン』を手に入れたサンドリヨンへと向きました。……あれ? いつも通りですね。


「美人でよく働いて頭もいい。性格もよかったし器用だったし……なにもかもがムカつくのよ。天はあの子に何物与えたら気がすむのさ」


 前世ロクな終わり方しなかったからです(by神)。


「財産だってうなるほどあったし」

「私たちはお父様を亡くしてからすごく苦労したっていうのに」

「苦労知らずののほほんとお嬢様っていうのが腹立たしい」

「嫌がらせで使用人にしたっていうのにまったく気にしてなかったし」

「お嬢様よね? 普通は嫌がったり泣き暮らしたりするもんじゃないの?」

「なのにあの子、しれっとしてたわよね」

「そういう〝堪えないところ〟がまた腹たつポイントなのよ」

「そうそう!」

「「「なんであの子はあんなに強いのかしら?」」」


 どうやらリヨンの『前世の記憶持ち』という特性からくる(したたか)かさも、義母たちには癪に障ったようです。


「くっそぅ……覚えてなさい!」

「いつかギャフンと言わせてやるんだから」

「リール、ニーム。外を見てごらん」

「「外?」」


 三文芝居の悪役のようなセリフを吐いて悔しがる娘たちを促し、ヴァンヌは外に目を向けさせます。

 そこはちょうど、荒野の向こうの山の端に日が沈んでいくところでした。


「都もここもお日様は同じ。いづこも同じ……よ。この悔しさを胸に、いつか都に返り咲いてみせましょう!」

「「そうね、お母様!!」」


 力強く『返り咲き宣言』をしたところで——


「盛り上がってるところ悪いが、お前たち、都に一歩でも入ろうものなら次は国外追放だからな」

「「「あっ…………」」」


 しっかり護衛騎士に釘を刺されたのでした。

寂しさに 宿を立ちいでて 眺むれば いづこも同じ 秋の夕暮れ  良暹法師

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