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ロイヤルウェディングはお断り!  作者: 徒然花
裏側とか、その後とか
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灰かぶりじゃない

本編33話目あたり。リヨンちゃんが継母たちに『サンドリヨン』と呼ばれてるのを聞いたトロワは……?

 やっとメリニャック侯爵家とヴィルールバンヌ侯爵家を取り潰せた。

 悟られないよう慎重に証拠を集め、逃げられないよう、周到に用意をしての逮捕状。僕の仕事はこのせいでしんどかったと言っても過言ではないほど。なかなかヘビーな任務だった。

 しんどいけど、これをやらなきゃ未来がない。

 そう、僕の狙いは『クリーンな政治』だけじゃない。もらいたくもない嫁候補の排除という側面もある。


「やっとこの日が来た……!」

「そうですね。侯爵たちには青天の霹靂でしょうが、自業自得です」

「加担していた奴らも逃げられないようにな」

「もちろんです」


 今日捕まえるのは両侯爵(とその家族)だけ。もちろん加担した貴族たちも捕まえるが、そこは見せしめの意味も含めて後日に。

「まあ、城に呼び出して一網打尽だけど」

「国内の全貴族に当てた招集命令、そろそろ陛下がお出しになっているんじゃないですか」

「そうだな。そっちは父上たちに任せて、僕はリヨンのところに行く。この騒動に怯え……」

「……るような方ではないと思いますが」

「……まあな。でも心細い思いはさせるまい。行ってくる」

「お気をつけて」


 


 城は今日の〝大捕物〟のことでざわついていたが、町はそんな動きを知る由もなく、いつも通り平和そのものだ。

 しかしリヨンは凹んでいた。 

 どうやら昨日の仕事の失敗と、義母たちにまた仕事をたくさん押し付けられたようだ。

 あのクソババアたち……。次に排除すべきはやつらだな。


 今日は早めに帰るというリヨンに付いて市場を出たところで、侯爵家に向かう騎士団に出くわした。

 騒然とする庶民たち。そりゃそうだ、いきなり武装した騎士たちが現れたんだから。

「ほんと、何があったのかしら?」

「なんだろうね?」

 驚きながらも好奇心を隠せないリヨンに、僕も知らないふりをした。

 興奮した庶民たちにリヨンが押されたりしないよう、そっと守る。

「護送馬車まできたわ」

「誰か捕まったとか」

「騎士様の数がハンパないけど、いったい何人捕まえたのかしら?」

 正確に言うと『これから』捕まえるんだけど。

「そっちの方は貴族の屋敷が立ち並ぶ区画だよね」

「ええ、そうだけど……帰りがてら付いて行ってみようかしら」

 メリニャック家とかヴィルールバンヌ家とか……って、そうだ、リヨンの家も同じ方向だった。

「危ないから、お屋敷までにしようね」

「は〜い」

 内心のニヤニヤを隠せないリヨンに、僕は苦笑した。


 見張りの騎士にいったん身分確認(?)されたけど無事にパスして子爵家まで帰ってきた。

 僕まで確認されそうになった時はちょっと焦った。だって、さすがに僕が変装して町にいるなんて一部の者しか知らないことで、こんな末端の騎士にまでお達しが来てるわけがない。バレなくてよかったよ。

 リヨンの荷物を持っててよかった。


 まだ好奇心をうずうずさせてるリヨンをなだめて子爵家に着いたところで、


「サンドリヨン! どこにいるんだい! 毎日毎日お前ときたら……!」


 という怒鳴り声が家の中から聞こえてきた。

 そういえばリヨンは義母たちに『サンドリヨン』と呼ばれてこき使われてるとショーレが報告していたな。

 

 呼ばれている事実は知っていたけど、実際聞くと……すっげぇ腹が立ってきた。


「サンドリヨン……」

「あっ、は〜い! ここにおります! すぐ行くのでお待ちください。……そう、『サンドリヨン』って私。掃除してたら暖炉の灰を頭からかぶっちゃってね、それから奥様たちにそう呼ばれてるの。あははっ、私ったらドジでしょ! ごめん、呼ばれてる。急ぐから、またね!」

 リヨンはバツの悪そうな顔をしたけど、すぐに笑顔を貼り付け、まくしたてるように言った。

『サンドリヨン』と呼ばれる理由はわかってる。だってここは『物語の中』だから。そしてリヨンは主人公だから仕方ないこと。

 少し切なげに笑ったリヨンは、僕から荷物を受け取るとすぐに家の中に入っていった。




 いつもより勢いよく扉を閉めたら、ショーレに「荒れてますね」と訝しがられた。

「さっき生で『サンドリヨン』と呼ばれるところを聞いた」

「ああ……子爵夫人ですか」

「いや、義母なのか義姉なのかわからない。でもとにかく呼んでるのをはっきりとこの耳で聞いた」

「おやまぁ。一番聞かれてはならない人に聞かれてしまいましたね」

 僕がイライラしている理由を知ると、ショーレはくすくすと笑った。

「しかしむかつくババアどもだ」

「実の父親がいないからといって、やりたい放題ですね」

「ババアども、絶対潰す」

「リヨン様がからむと全力出しますね」

「当たり前だ」


 今生こそ、リヨンを幸せにしたいんだ。邪魔者は退場してもらう。


「リヨンをいじめた罪で逮捕」

「それは流石に無理がありますよ」

「う〜ん」

「リヨン様に対する仕打ちは腹立たしいものがありますが、本人たちは遊び呆けているだけなので、社会的な罪に問うのは難しいですね」

 ショーレに突っ込まれたけどそんなもんわかりきってるさ。これがまかり通ったらいいのになぁっていう、僕の希望だ。いや、まかり通る国っていうのも、それはそれで問題ありだけど。

「なんかこう……表立って罪を犯してくれたら捕まえやすいのにな〜。私財の使い込みとか……」

「それはあくまでも個人の私財ですから、使い込みも何も罪にならないでしょう」

「だよな〜。まあ、あいつらをどうにかする策はおいおい考えるとして、次にやるべきことは、『妃選びの舞踏会』の開催だな」

「え? そこにいきます?」

「そりゃそうだろ。リヨンが妃に選ばれたら、堂々とあの家を出て行けるんだから」

「まあそうですけど」

「ということで、舞踏会を開く準備も急ごう」

「わかりました」

 

 僕は……十二時の鐘にも解けない魔法を用意しようか。




「もとの物語では、義母と義姉たちは熱々に熱した◯◯◯(ピー)を履かされたり、サンドリヨンが仲良くしていた鳥たちに目を◯◯(ピー)られたりしてたな」

「うっわ、えっぐい」


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