表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロイヤルウェディングはお断り!  作者: 徒然花
裏側とか、その後とか
61/71

男三人はかく語りき

 とある酒場で、スダンとジヴェ、ヴージエが酒を飲んでいる。

 話題は一つ。リヨンのこと。

 

 その新しい使用人が初めて姿を現した時、市場は騒然とした。


「初めて見た時、めっちゃびっくりした」

「顔だけならどこぞのお嬢様と言われても納得したよな」

「ああ。あんな可愛い子、初めて見た」

「くたびれたワンピースにエプロン姿だったから〝使用人〟だってかろうじてわかったけど」

「それにしてもオーラのある使用人だけど」

「確かに」


 突如現れた美少女は『フォルカルキエ子爵家の新しい使用人・リヨン』と名乗り、あっという間に若い男たちの注目の的になった。


「フォルカルキエ家……いや、リヨンの御用達になろうと、みんな必死になったなぁ」

「空前絶後のダンピング大会になったね」


 市場にはいろんな店がある。肉屋だって一軒だけではない。

 数ある店のうちから自分の店を選んでもらおう……リヨンとお近付きになろうと、みんなあの手この手で勧誘した。値引きしかり、おまけしかり、味見しかり……。

 そのうちに体力のない店がどんどん脱落していき、最終的に肉はスダン・果物はジヴェ・野菜はヴージエの店がリヨン御用達の店になった。——が、リヨンは何も知らない。

 御用達争奪戦が落ち着いた頃には、しれっとまた以前と同じくらいの物価に戻っていたが。


「おれ……リヨンと上手くいってると思ってたのにな」

「それはこっちのセリフだよ。甘くて美味しい果物を食べてる時のリヨンの顔は僕のもの——」

「うっとり夢見顔になるな変態。リヨンの血色のいい頬は俺んちの肉のおかげだ」

「いやいや。いつもリヨンが健康でいられるのはウチの野菜のおかげだ」

「「「なんだと〜」」」


 ギリギリとにらみ合う三人。

 とにかく、この三人は『抜け駆けはなし』という紳士協定の下に、せっせとアピールしまくったのだ。

 そして団子状態のまま、どうやってリヨンの中の好感度を上げようか、頭一つ抜け出そうかと考えていた矢先——あの男が現れた。


「いきなり現れて。なんなんだ、あいつは」

「掻っ攫われたって感じ半端ない」

「リヨンもまんざらじゃなさそうだったし」

「手ぇつないで歩いてるよな。羨ましい」

「こんなことになるなら紳士協定なんて真面目に守らなかったのに〜」

「「おいジヴェ、てめぇ」」


 いつの間にか現れた、酒屋の息子トロワ。彼が〝みんなの〟リヨンを独り占めし始めたのだ。


「リヨンには優しそうな顔向けてよ」

「そうそう! ちょっとヘタレっぽい感じのね」

「でもって、リヨンが見てない隙に俺たちのこと睨んで牽制」

「ある時は笑顔で牽制」

「「「あいつ、牽制しかしてねーな」」」

「俺たちだってリヨンの護衛したかったよ」

「荷物だって、リヨンが遠慮するから、気持ちの負担にならないようにって、時間ずらして持って行ってたのに」

「なのにあいつは、堂々とリヨンをお屋敷まで送って行ってさ」

「なんなの? あいつヒョロイじゃん」

「俺の方がいい体してるぞ」

「あいつにリヨンは守れないだろ」

「てか、あいつ、ほんとに酒運べるのか?」

「持ち上げられないとか言わないよね?」

「まさか! ははは!」


 すらりとした体型のトロワは、力仕事の多い市場においては珍しい。ジヴェも細くて華奢な方だが、スダンとヴージエは背もあるしがっしりしている。


「でもさ、トロワって、あんなモサイ見た目だけど、俺たちを見てくる時ってなんか……こう……すごみ、ない?」

「あ〜わかる。リヨンに向かってはニコニコしてるくせに、リヨン越しにこっち見てくる目とか、めっちゃ冷たい」

「あの鬱陶しい前髪の奥からこっち見るの、一見穏やかそうだけど目が笑ってないんだよなぁ」

「氷みたいだよね」

「『リヨンに近寄るな』って、すげー伝わってくるし」

「隠そうともしない」

「店の前通り過ぎる時、絶対僕らの方見てくるよね。あの不敵な笑いが怖いよ」


 リヨンと仲良く話しつつ、店先にいるスダンたちに視線を向けては一瞬微笑んでいくトロワ。しかしその冷たい視線に背筋を凍らせる男たち。

 三人はトロワの氷の視線を思い出して身震いした。


「あいつほんとなんなの」

「得体が知れないっていうか、俺たちとも全然交流しねーし」

「誰ともつるんでるところ見たことないね。あ〜あ、僕も、リヨンがいるならボッチでもいいな〜」

「「ジヴェ、てめぇ」」


 だいたいトロワを見かけるのはリヨンが市場にいる時。それ以外ではほとんど姿を見かけないのだ。

 スダンたちは、暇な時間などは適当に友達(知り合い)としゃべったりしているものだが、トロワに関してはそんな姿も見られない。


「つるんでるっていうと、トロワって、よく騎士連中と一緒にいない?」

「あ〜それな。俺も思った」

「居酒屋の常連だろ?」

「ん〜、でも、知り合いには違いないよね」

「「確かに」」

「あいつに何かあったら騎士が出てくるのかな」

「バックに騎士がついてるとか……」

「やな感じだな」


 いきなり現れてリヨンを独り占めし(おまけに牽制までして)、バックには騎士がついている。市場でもあまり見かけなくて、友達もいないボッチ。


「考えれば考えるほどトロワってよくわからない奴だね」

「ああ」

「まったくだ」

「「「とにかく『なんか嫌な奴』ということだけはわかった」」」




 三人の中でそうまとまってからしばらく後。リヨンとトロワが結婚したとの情報が市場を駆け巡り、男たちは——やけ酒を飲むのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ