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エピローグ

 舞踏会の後日譚。


『お妃様を探す』舞踏会で、王子様は遠い国のお姫様に一目惚れをしてしまいました。

 そこで王子様は『私の妃になってください』と手紙を出しました。

 ところがお姫様はその国の王太子様でしたので、嫁入りすることはできませんと王子様の求婚をお断りになりました。

 それでもお姫様のことが諦めきれない王子様は悩みました。

 自分がお姫様の国に婿入りするなら、この恋は成就する。しかし自分もお姫様と同じく王家の後継ぎ、いなくなるわけにいきません。

 お姫様を想い恋患う王子様は食事も喉を通らない日々が続いていましたが、そこに救世主が現れました。

 それは妹姫です。


「お兄様の一途な想い、どうにかして叶えてさしあげたい。わたくしが王位を継ぎますから、お兄様はどうか、想い人の姫様と幸せになってくださいませ! 王位は男女関係なく継げますし」


 そう言って、王子様を笑顔でお姫様の元に送り出したのです。


 いつも賢く王様の補助をしてきた王子様の初めてのワガママ。国民は、王位を投げ打ってでも貫きたいという王子様の一途な想いに心を打たれ、王女様の、兄や国のことを考える健気さに感動しました。

 王子様、王女様の株は爆上がりしました。




「ツッコミどころが多すぎて困ってるんだけど」

「なかなかいい感じにまとまったでしょ」

 そもそも舞踏会って『国中の女の子を集めて』じゃなかった? 外国のお姫様も呼ばれてたの?? 王子様って、恋愛ごときで食事も喉を通らないようになっちゃうナイーブな人だったけ?? ——枚挙にいとまがないっ!

 もうツッコミどころ各箇所に『(笑)』ってつけていきたいわ。

「これは、誰が考えた『王子様失踪のシナリオ』なの?」

「ん? 僕とショーレとアミアンで考えたんだよ。いやぁ、三人寄れば文殊の知恵とはよく言ったもんだ」

「黒幕三人組……」


 そんなことをヒソヒソと話している私と〝元〟王子様の『トロワ』。


 今日はお城へ、妹姫様——アミアン王女——の正式な立太子と結婚のお披露目会に来ています。


 さっきの後日譚、ツッコミどころは多いけど素直な国民は全員信じてくれたようです。もちろん高位高官の貴族たちは『王子はフォルカルキエ家に婿入りした』ということを知ってますけどね。

 最初王様は〝千夜〟の現代知識(前世の知恵)がもう利用できないかもしれないと考えて『トロワ』になることに反対しましたが、王女様が『私もお兄様と同じような知識持ってるし、そもそもお兄様はよその国に行くわけじゃないからいつでも呼びつけられるわ』と王様を説得したら『ほんとだ〜、そうだよな〜』ってことになって、あっさり出奔を許可してしまいました。

 もうちょっと粘ろうよ王様……。そして今回は(・・・)ちゃきちゃきいい仕事してくれてるよね王女様……。

 そう、現代知識といえば。

「疑うべきだったのよね。こんな中世というか科学とか医療とかが全然発達してない国で、伝染病が流行ったからって、いきなり上下水道完備しーの病院建てーの、一足飛びに近代化しすぎだったもの」

 このまま産業革命起こるんじゃないかと思ったわよ。

 そんな時代を早送りしたような知識がいきなり現れるのなんておかしいでしょ。誰かそこに『そういう知恵』を持った人がいるってこと、疑えばよかった。だからって、それが私の知ってる人とは限らないけど。

「まあね。まだまだ技術が追いついてないから、これからどんどん充実させていくつもりだけど」

「それに『ガラスの靴の指紋採取』! なんであれをスルーしたのか自分でもびっくりだわ。こんな時代に『指紋鑑定』なんてあるわけないのに」

「指紋も鑑定できるし、なんならルミノール反応も調べられるからね」

「事件は現場で起きてる!!」

「そうだなぁ、城に科捜研でも作るかな?」

 飄々とそんなこと言ってるけど、さすがに技術が追いついてないでしょ。

「この時代じゃせいぜい『魔法使いの仕業』とか『魔法』で片付けられちゃうわよ」

「まあそれはあながち間違いじゃないけどね」

「どうして?」

「だって、上下水道に関しては、この国じゃまだ設備が整ってないから城仕えの魔法使いたちの力も借りているからさ」

 前世ではごく普通のサラリーマンだった千夜。たしかにいい学校出て普通に頭良かったエリートだけど、研究者だとか天才的頭脳の持ち主とか、そんなチートくんではありませんでした。

 だから『こういう設備を作ったら衛生的だよ』と大まかな仕組みを魔法使いたちに伝授して、それを魔法使いたちが一部魔法(どういうものかは国家秘密だそうです)を取り入れつつ実現したんだそうです。

「上下水道が、現代知識とファンタジーの夢の共演だったとは……!」

 めっちゃ便利な世界ですね!


 そうこうしてるうちに王女様が大広間に姿を現しました。隣に新婚ほやほやの〝花婿さん〟を連れて。


「まさか王女様とショーレが結婚するなんてね」

「お似合いだよ」

「黒幕仲間で?」

「違う違う。ずっと影武者やってきってたから王子的な振る舞いも身についてるし、僕の留守の間の公務をアミアンと一緒に片付けたりしてたから、王族としての仕事もわかってるってことだよ」

「なるほど」


 ショーレ(本物)は、いつの間にか王女様と〝いい感じ〟になってたんです。


 もともと王子様の側近ということもありしょっちゅう顔合わせていたし、王子様が毎日街に出かけちゃうから、その分の仕事を王女様が片付けてるのを手伝ったりしてましたし。

 トロワはああ言ってましたが、やっぱりわたし的には黒幕仲間でお似合いだと思います。え? 別に根に持ってないですよ!

 まあショーレは公爵家のおぼっちゃまだから血筋も申し分ないですしね。未来の王配としてこれ以上ないんじゃないでしょうか。


 そして肝心の私ですが。


 お父様と一緒に実家に帰ることになりました。

 せっかく部屋を提供してくれたおばあちゃんにどう話そうかと悩んでいたら、

「あ、僕とリヨン、結婚することになったから。リヨンはもらってくね」

 なんてトロワが言っちゃって!

「そうかいそうかい、そりゃめでたいねぇ。リヨンが結婚するって聞いたら、どれだけの男たちが泣くことか」

 なんておばあちゃんに言われましたが、あっさり家に戻ることができました。


 そしてうちのお父様ですが。

 あのあとすぐ、なぜかフォルカルキエ家は『侯爵位』をいただくことになりました。

 死んでもないのに二階級特進!? どういうことだ?? と首をかしげていたのですが、王様曰く、「フォルカルキエ子爵の、命を賭けた外交のおかげで、これまで取引のなかった国との国交が成立した」からだとか。


 んんん? 


 お父様、確か普通の商人——もとい、商人よりの貴族だったと思うんですけど? 国の外交を背負ったなんて聞いたことないですけど??

 これまでお父様のお仕事に関して詳しく聞いたことなかったから断言はできないけど……だからお父様のことを王子様たちが粘り強く探してくれたのかな?

 いやいや、これは密かに王子様の婿入り先に箔をつけた感じですかね。あ、なんかしっくりきた。きっとそうだ。

 とにかく、フォルカルキエ家は元の領地にプラスしてまた新たに、さらにいい領地を得たのでした。


 そんな『フォルカルキエ侯爵家』にも後日譚がありまして。


 王子様が他国の王女様の元に婿入りしたのと同じ頃、ずっと行方不明だったフォルカルキエ子爵が発見されました。船の難破で無一文になった子爵は、流れ着いた見知らぬ土地で、帰るための資金をせっせと稼いでいたのです。

 そんな子爵を見つけたのが、酒屋の息子であるトロワでした。

 たまたま酒の買い付けに来ていたトロワが、たまたま子爵によく似た人を見つけたので『あなたはフォルカルキエ子爵ですか?』と聞けば、『そうです』と返事がありました。

 そこでトロワは子爵と一緒に国に帰ってきました。

 トロワのことが気に入った子爵は『どうかうちの娘のお婿さんになってください』と言い、娘も、父親を助けてくれたトロワを気に入ったので、二人は結婚することになりました。


「…………この後日譚もツッコミどころが多すぎて、もうどうしたらいいのやら」

「そう?」

「これも黒幕三人組のシナリオ?」

「まあね」

「……はぁ。もうため息しか出ないわ」


 とにかく。

 今日の立太子&結婚お披露目会に、フォルカルキエ侯爵と令嬢、そしてそのお婿さんとして『トロワ』が参列しています。

「王女様、綺麗ね」

 王子様もそうでしたが、王家の方はほんと美形ぞろいです。

 王子様は『トロワ』になったので、外に出る時はきらびやかな素顔は封印。黒縁瓶底メガネと黒髪がトレードマークになっています。黒髪は、今までのようにヅラだと手入れが面倒くさいからなんとか言って、黒髪に染めました。綺麗な金髪だったのにもったいない。

 以前のトロワは目元を隠すためにもっさりとした髪型でしたが、さすがにもう隠す必要ないので、目元だけは鬱陶しくない程度のダサい髪型にしています。もちろん瞳の色は『黒』。これはメガネの魔法を継続しています。


 どうしてあえて『ダサめ』を目指すのか?


 それは、私のため、だそうです。


「リヨンはイケメンエリートがトラウマなんだろう? 目立たなければ問題も起こらないからね」

「まあ、確かに。でも、そもそもトラウマの原因、千夜だからね!」

「だからあえて目立たなくしてるんだろ。あ〜あ、でもさ」

「? 何よ?」

「どう考えてもこれ、リヨンの方がモテるでしょ。非の打ち所のない美少女だし、未来の侯爵夫人だし。今までも大変だったけどこれからはもっと大変になるんだろうなぁ」

「はあ?」

「リヨンに寄ってくる悪い虫を全部追潰さなきゃ」

 僕の方が気が気じゃないわ〜と大げさにため息をつくトロワですが、トロワ(=王子)が『潰す』とか言うと現実味ありすぎて怖い。

 じゃなくて。


「……あのね、裏切られる方の気持ちが痛いほどわかってるのよ? そんなことすると思う?」


 あんな気持ち味わうのは前世の私だけで十分です!


「リヨン……っ!」

「もうっ! こんな人前で抱きつくなっ!!」


 もう十分にバカップルだわ。




 ロイヤルウェディングはお断り!


 でも、王子様たちの方が一枚も二枚も上手で、なんか、いい感じにまとめられてしまいました。


 私は、普段は市場でお化粧品屋さん。そして時々、侯爵夫人。


 改心した(?)トロワに大事にされて、今生は平和に幸せに暮らせるようです。

最後までおつきあいありがとうございました(*^ー^*)


ラストまでこれましたので、リクエストがあれば受け付けします♪

本編の裏話的なところ、気になるところがあればリクエストしてくださいませ。

詳しくは今日(5月3日)の活動報告でいたします m(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] 徒然花さんの作品は面白くて一気読み! とても楽しい気持ちになって、うふふと笑えます。他の作品も読みましたがはずれなし!今後も面白い作品どんどん書いて下さい! 
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