未探索遺跡 B30
これで20万字ですね。
「いやぁ……、長い道のりだったね」
現在時刻は午後8時半。
私の目の前には地下30階のボス部屋がある。
マップを全て埋めながらとは言え、中々時間が掛かった。
最初は本当に手探りでやってたけど、段々効率化できている気がする。
『マップ埋め切ってる、だと……?!』
『阿呆だ。ある程度視認した範囲は直接その場に行かなくてもマップが埋められると気が付かないあたりが』
『マップガン無視のサニーは只今26階。今回のダンジョンデカ過ぎね?』
『難易度順にかなりの倍率でデカくなってるな』
煩いよ。そんなシステム知らなかったんだって。
「ダンジョン一周にかなり掛かってるなとは思うけど、これ今度からは16階から30階をひたすらグルグルすることになりそうだからね。大きくても、まあ」
20階を超えたあたりでモンスターのレベルが40を超え出したらしく、トップ層でもソロはキツいみたい。
これ多分30階のボスのレベル50くらいだよね。
『マッピング済んでるから後は最速で回るだけだしな』
『トラップ、落とし穴と矢だけなの悲しい』
『AGIの暴力で解決してるから、広くても良いとか言えんのよな』
トラップはお願いだからこれ以上増えないで。面倒。
「皆んなもAGI上げよう? これ何気に落下ダメージ軽減してくれるんだよ」
敏捷性と言うことで、アバターの運動速度だけを司っているように思われてるけど、実は落下時のダメージを減らしてくれる。
ちなみに、ダメージを受け始める高度もちょっと高くなっている。
だから何だと言われればそうなんだけど。
『タンクなんで無理っす』
『戦槌なんでSTRっすね』
『純魔なんで』
『DEXの方が便利』
『弓使いなんで』
『総スカンで草』
『大事ではあるけど、落下ダメが明確に減り始めるのかなりの数値になってからだし』
なんでぇ?!
速度とは最強のステなんだよ? 使いこなせればだけど。
運動エネルギーなんて質量✕速度✕速度で算出するんだから、速度があればある程VRなら威力も上がるのに。反動もあるけど。
…………ま、良いや。
「AGIを上げることの良さはおいおい伝えていくとして、ボス戦入りまーす」
………………これ、これから1週間この糞重い扉開け続けるのか?
今更だけど嫌だなぁ…………。
――あ、カメラ遠距離撮影に切り替えなきゃ。
『テレビの撮影じゃ無いんだから』
『カメラはずっと入ってるよ』
『暫定ラスボス相手に緩すぎる』
『あ、カメラ設定変わった』
鯉口を鳴らして抜刀。
ゆっくりと部屋の中央へと進んでいく。
今回のボスは、メインがスケルトン系であるのは多分そうなんだけど、それ以外の情報らしい情報が無い。
加えて、モンスター数自体が不明だから、どうしようも無い。
15、20階で4体、25階で5体だから、30階で5or6体だとは思うけどね。
ぼう――と微かな灯火が灯る。
いよいよだ。
瞬間、出現しだすモンスター達。
数は…………6。
コウモリは2。だけど、羽音が今までの奴らよりも少し強い。若干強い個体か?
残りがスケルトン。武器種は、直剣と盾、槍、戦鎚、そして弓。
「厄介な…………」
数が多いのは勿論なんだけど、何より遠距離攻撃持ちがいるのが嫌だ。
敵に遠距離攻撃らしい攻撃がない場合は、近接型がきっちり防御出来れば、後は遠距離からチクチクすればそう負けない。(近接で大差で負けたら話が変わってくるけど)
「……ふぅ…………」
態とらしく息を吐き出して、一気に集中力を高める。
――歩法 滑歩
膝をクッションとして上体の揺れを抑えて、敵に像を結ばせない。
まず狙うは弓使い。コウモリとかもそうなんだけど、近接攻撃しか持っていない奴らが5体いる時点で、全員での同時攻撃なんて夢のまた夢。だから、一旦無視する。
……無視できたら苦労しないよね。
しっかりと私へと振るわれる直剣と槍のコンボ。
――歩法 隘路
僅かな隙間に身体を捩じ込んで、弓使いへと接近していく。
剣と槍を超えた先には、振りかぶられた戦鎚。そして、その後ろからコウモリ二体の波状攻撃。
――歩法 旋風
横薙ぎに振るわれた戦鎚に刃を合わえて、攻撃を回転エネルギーに変換する。
鎚使いの後ろに回り込み、コウモリ二体の対処を――
「――チッ…………!」
――歩法 虚空
放たれた矢をギリギリで躱して、再度加速する。
「『纏魔斬』」
――斬法 烈火
頭上のコウモリ一体をスキル付きの突き(ダジャレでは無い)で貫く。
もう一体も一旦無視して、弦を引き絞る弓使いに視線を向ける。
――歩法 迅雷
体を思い切り倒して、加速する。同時にスケルトンが攻撃できる範囲を狭めて、予測をより単純化させる。
ギリギリ、と弓全体に力が掛かり、一瞬静止する。
――今!
――歩法 委蛇
重心のみを傾けることで、強引に軌道を曲げる。
既に放たれた後の矢が、急激な変化に対応できるはずも無く、矢は見当違いの場所に突き刺さる。
「『サンダーボール』!」
目眩まし代わりに、使える『雷魔法』の中で一番打撃寄りの『ボール』を放つ。
初期の魔法とは言え雷と言うだけあって弾速は割と速い。
元々数mしか離れてないのだ。スケルトンの回避行動が間に合う訳がない。
「――ラアァッッ!!」
――撃法 砕氷
砕くは肋骨。メキメキと悍ましい音が響く。
けれど、倒すには至らない。ので――
「ちょっと退いてて、ねっ……!!」
――撃法 廻踵
後ろのモンスター達の方に思い切り蹴飛ばして、一旦時間稼ぎ。
これでスケルトンどもの動きは数瞬鈍る。
なので――
「まずはお前から! 『纏魔斬』」
残りのコウモリを叩き斬る……!
コンパクトに振るった刀に対して、コウモリは回避を試みて飛ぶ軌道を変えようとする。そんな程度で避けられるわけがないのに。
――斬法 朧月
手首のみで刀の軌道を急変させる。
その性質上威力は出ないけど、『纏魔斬』の威力ブーストでお釣りが来る。……と思う。
ザッ、とエフェクトと共に斬撃音が少しだけ響く。
残りHPは5割か……。
「シャァァッ!!」
――撃法 神風
一回転を挟んでの踵落としで地面に叩きつける。残り2割。
「『サンダーランス』」
雷槍を放って、視線を外す。多分殺せたし生きてたとしても虫の息。ならば別の敵を優先する。
――歩法 嚆矢
一気にトップスピードにまで加速して、体勢を整えたスケルトン達に突っ込んでいく。
ギリッギリHPの残った弓使いを庇うように、盾と直剣の奴を残した二体(槍と戦鎚)が向かってくる。
先に振るわれたのは戦鎚。先程と同様に、けれど少しだけ低い軌道で横薙ぎを放ってくる。
足首を狙ってきている。
なので、踏む。
ガギンとダンジョンの硬質な床と戦鎚がぶつかり、鈍い音が足元から聞こえてくる。
――歩法 飛燕
高く飛び上がらない。けれども確かに飛び掛かる。
地面を基準とした時の角度が低いって言えばいいかな? 兎も角、飛び掛かった私の丁度目の前にはスケルトンの胸部がある。
――撃法 飛衝
空中だから満足な火力には届かない。けれど、ふっ飛ばすには十分過ぎる。
瞬間着地して、槍に備える。
限りなく低姿勢からの足払い。それに追加して放たれた矢が私の頭を狙っている。
これは二次元的な移動じゃ回避しきれないね。
「……ふっ……!」
バク宙一回。丁度上下逆さまになった時に地面に手を着いて、全力で力を込める。
――撃法 輅脚
ブレイクダンス宜しく脚を思い切り開いた状態で身体を回す。
正直な話、輅脚は威力が無い。だから、まあ、ただの繋ぎなんだよね。
「――――ッッ!!」
――撃法 金剛
身体の向きを直しながらも回転運動はそのままに、全力で肘打ちを叩き込んで槍使いを破壊する。
再度飛んできた矢を半身になって回避して、振るわれた直剣に刃を合わせた。
――斬法 流水
直剣を巻き込んで、外へと放る。
体勢を崩しながらも盾は未だに構え続けている。でも、全身を隠せているわけでは無い。
――撃法 伸蹴
所謂ヤクザキック。正面を向いたまま膝の曲げ伸ばしと体重移動だけで放つ技だが、一点を狙える為今回はピッタリだった。
頭蓋へと真っ直ぐに伸びた脚を盾は拒むことが出来ずに、綺麗にヒットする。
弓使いは剣盾の奴が壁となって私に攻撃出来ない。
ならこれを有効活用しよう。
――撃法 徹震
肩からの体当たりで衝撃を徹する。
スケルトンがポリゴンへ還る。でも、その瞬間までは視覚的な、対攻撃的な、壁となる。
「『サンダーアロー』」
弓使いに現状最速の魔法の『アロー』を放つ。元々瀕死だったんだから、結果は明らか。
弓使いが矢に射抜かれて死ぬのは何か狙ったかのようだけど、全然そんな事は無い。
カタリ、と骨のぶつかる音がする。
「……ああ、まだ居たんだったね。――――降魔」
戦鎚使いに近づき、ぐしゃりと踏み潰した。
『レベルが上がりました。Lv.53ー>Lv.54』
『『刀術』のスキルレベルが上がりました』
『『敏捷大強化』のスキルレベルが上がりました』
『『格闘術』のスキルレベルが上がりました』
『『雷魔法』のスキルレベルが上がりました』
『『立体機動』のスキルレベルが上がりました』
『『電光石火』のスキルレベルが上がりました』
『『纏魔斬』のスキルレベルが上がりました』
これで漸く一周が終わった。
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。




