黒羊
「『ウィンドランス』。……やっぱ威力低いな」
「十分でしょうに。――地嵐」
サニーの魔法で動きを止めた瞬間に、頭蓋をかち割る。それだけで、ヒツジは沈む。脳イかれたんだから、そりゃそうだけど。
何度かのヒツジとの戦闘で、ヒツジ自体のポップ(出現)確率が然程高くないのに、割と素材集めが面倒な事が判明した。
まず、『火魔法』や『雷魔法』などの一般的に羊毛(アクセ用の素材ね)が燃えるような類の攻撃で、一定以上の割合のダメージを与えてしまった時点で、羊毛はドロップしない。
次に、こいつら割と斬撃に強い。羊毛の影響で、刃が通りにくく、斬撃耐性などを保有している訳じゃないから、アンバーとかの力押しとか、太刀上流の地嵐やら伐刀とかの威力重視の奴なら、強引に切り裂ける。
結論、サニーはメインウェポンが、私は技の多くが、ハーフェン君は殆どの攻撃手段が使い物にならない状況となった。
アンバーだけなんだよね。パフォーマンスが変わらないの。
当人的には、ちょっと切りにくいとは言ってる。
まあ、それは同意するけど、贅沢言うなと言いたい。
「ナチュラルに雑談しながら、戦闘してますよね。何かコツとかあるんですか?」
「身体の制御を真面目にする瞬間には喋らないようにはしてるかな。ほら、息吐く時に身体に力入っちゃうからね」
「なる程……」
ハーフェン君がこれを使う日は来るのだろうか?
まあ、戦いながらの指示とか意思疎通とかで、出番来るでしょう。
特にハーフェン君の戦い方は、身体制御がぶれたら危ないから、参考程度にはなるはずだ。
「今、何割集まったん? 私考えてないから、お姉ヨロ」
「まったく……。確か視聴者さん達とかサニーの話から考えると、アクセ一つに素材が3つくらいだと思うんだ。……で、現状サニーは3箇所、アンバーは2箇所装備してるから、最大私達は15個分、要は素材45くらい必要じゃん?……今の素材数は…………幾つ?」
待って。素材数数えて無かった。
――ん? 何か黒いの居るな。
取り敢えず、全員に聞けば良いか。
サニー2。
ハーフェン君2。
アンバー5。
で、私は3。
計12個。
必要数を45とすると、
「26.6%かな」
「……あ、そこ、6ドットって言って良いんだ。じゃあ、まだ1/4だけ?!」
「アンバー頑張ってね」
物悲しい雄叫びが空しく響いた。
――あ、黒いのがちょっと反応しかけた。
……まあ、うん。言いたいことは分かる。
流石に、多い。
『ごめん。何%って?』
『26.6666666…………って続いているって事ね』
『なっつ』
『中学だか、高校でやったな』
『何故最初から四分の一って言わないんだ……?』
『↑それが拗らせた理系という事だ』
『つうか、ヒツジなんか狩りしづらい人多くね』
サニーのところの私の配信よりも多いコメントの中には突っ込みたいことも多いけど、まあ、概ね間違ってはいない。ただ、拗らせた言うな。
後、最後のコメントの人ね。
「MMORPGに於いて自分の攻撃手段を偏らせるって事は、多少の不利益を許容するってことだからね。その分、弱点を突ける時はひたすらに強いけど」
「――とは言え、今回はまだ温情だろうに。流石に火と雷だけの奴とか超レアだろ。斬撃武器だって、刺突あるんだし」
「まあね。刀剣の類いも刺突の向き不向きあるにはあるけど」
バスタードソードが分かりやすいかな。
奴は、斬撃特化のゲルマン系の剣と刺突特化のラテン系の剣との複合的な武器とする説がある両手剣なんだよね。
まあ、バッソはその二つを合わせて、斬突両方に強くしようとした結果みたいなものだけど。
それでも、一応一括に刀剣と言っても、適正はあるんですよって話だね。
「…………でさ、そろそろあれ触れていい?」
「黒いの?」
「サニー、配信者としてあれスルー気無いよね?」
「戦いたいだけだろうに……」
何かヒツジ型で体色が黒い奴が見えているんだよね。
……あれ? 角生えてるな。いや、ヒツジにも角は割合と通常装備だけど、目に見えるレベルになってるんだよね。
黒い角だね。このゲームだと、武器素材になりそうだね。
……ほら、あれだよ。なんかに使うんだよ、きっと。
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