リベンジ Ⅴ
奥伝。
それは太刀上流に於ける到達点にも等しい技だ。
撃法の奥伝は、巍峨。
その効果は表面上では簡単に見える。
自身に掛かる負荷の一切合切を地面に流して、ダメージを零にする技。
だけど、現状の私のそれはまだ不完全。
現に、力を逃しきれずに1割程のダメージを食らってしまう。
でも、今はそれで十分。
即死級の攻撃をダメージ1割にまで抑え込めるのだからね。
「……フッ…………!!」
――撃法 飛衝
発勁によって、頭上で抑えた前足を跳ね上げる。
逸れる全身。
晒される首元。
そこに一刀を滑り込ませる。
「『纏魔斬』!」
コンパクトに振るった横薙ぎは、しかし、大したダメージにならない。
防御力が上がっている……!
残り一分半。
イノシシの突進を相手に、寸前で真横に回避する。
「『纏魔斬』」
――斬法 裂止
空間に設けた斬撃も効かない。
今の突進も先程よりも速い。
だとすると、時間経過でバフの倍率が上がると考えておく。
「ンとに……、MPが足りないって言うのに…………!」
MPポーションを握り砕いて、思い切り地面を蹴る。
――歩法 嚆矢
急激な加速、それによってイノシシの注意を僅かでも逸らす。
でも、その程度では野生動物の勘で補ってしまう。
横薙ぎ気味に振るわれる前足。動作の癖は、ハエを払うよう。
――歩法 虚空
寸前で一歩引いて、攻撃を避ける。
「『サンダーアロー』」
速度重視の魔法で視界を塞ぐ。
即時、イノシシの側面に回り込む。
イノシシがこちらを捉えていない時間は、ほんの一瞬だけ。
だから、それを引き伸ばす。
「――ラッッ!」
――撃法 浪華
拳で加えた衝撃を相手の体内に留めて、内蔵を潰す。
その時の口元から飛び散る血を、砕けた波に見立てた技。
でも、それはあくまでも対人での話。
イノシシ程の大きさ、ステータスの存在の内臓は破壊できない。
それでも、一瞬を0.5秒に伸ばすことは可能だ。
残り一分。
これは本当に無茶だから、やりたくなかったけど!
そうも言っていられない。
恐らくこれが最後のチャンス。
ならば、無理でも無茶でもやるしかない。
「『纏魔斬』――!」
――歩法・撃法混合 風蝕
地面を抉る程の衝撃を、身体で全て受け止める。
当然HPが大きく減る。
今の私では制御しきれない。
けれど、その一撃は踏み込みの力を一刀に込めきる技だ。
「ハアァァァアアアッッ!」
――斬法 豪雷
力の伝導からの袈裟斬りが、青い炎と共に、イノシシの首元に叩きつけられた。
『レベルが上がりました。Lv.41ー>Lv.42』
『『刀術』のスキルレベルが上がりました』
『『敏捷大強化』のスキルレベルが上がりました』
『『格闘』のスキルレベルが上がりました』
『『雷魔法』のスキルレベルが上がりました』
『『走破』のスキルが上がりました』
『『対魔斬』のスキルが上がりました』
『『電光石火』のスキルレベルが上がりました』
『『纏魔斬』のスキルレベルが上がりました』
一気にインフォメーションが流れる。
いちいち認識出来ない程に疲れたから、確認は後でだけど。
『スローターボスを討伐しました。通常討伐報酬を獲得しました』
『プレイヤーで初のスローターボスの単独討伐に成功しました』
『初単独討伐ボーナスを獲得しました』
…………いや、ちょっと待って。
お願いだから、待って。
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。
次回更新は、土曜になる……と良いなと思います。




