リベンジ Ⅱ
豪、と振るわれる前足。
本当にイノシシなのか、己は。
構造的にどうなのかな?
兎も角、その一撃は私を地面のシミにさえしかねない。
なので、すれっすれで躱す。
身体の左側からの突きを、崩す。
――斬法 弾抜
半身になりながら、柄を左手で下に弾きながら、右手首を回す。
それによって回避と、地面と水平方向の斬撃を同時に行う。
けれど、威力はお察しの通り、無いに等しい。
――歩法 嚆矢
急加速を掛けて、即時イノシシの側を離脱する。
『電光石火』の加速ブーストも相まって、平均的な人では追いきれない程だ。
イノシシの視線がこちらを向く。
その瞬間を待っていた。
「『サンダーアロー』」
視界を魔法で埋める。
雷魔法は眩しいのだ。
視界を塞ぐって意味なら、かなり便利だ。
――歩法 迅雷
一瞬の内に、接近しなおす。
狙うは前足の関節部分。
そこに一撃を叩き込む。
「『纏魔斬』!」
――斬法 箒星
全力の一突きを以て、関節に損害を与える。
けれど、このままでは終わらない。
「ゼエァァァアアッ!!」
思い切り身体を捻って、突きから斬撃に強引に繋げる。
その一撃は、確かにイノシシにとっても大きなダメージとなった。
けれど、その程度で止まる程、コイツは軟じゃない。
イノシシは、身体を投げ出した。
斬られた前足をもフルに使って、身体を旋回させる。
その結果、放たれるは巨体による後ろ回し蹴り。
「――っぶな…………!」
バックジャンプ。
即時特攻。
辛くも回避して、もう一度斬りかかる。
割と無理やりな動作をしたのだ。その後隙きはかなり大きいはずだ。
だが、そうは問屋が卸さない。
「――――!!」
――ゴガンッ
イノシシが思い切り地面に脚を叩きつける。
瞬間、周囲の地面が捲れ上がった。
「ぐぅっ……!」
なんとか刀と籠手を滑り込ませたけど、それでもその一撃は容赦なく私の身体を打ち据えて、大きく吹っ飛ばす。
HPは今ので3割も持っていかれた。
「――チッ……」
慌てて回復アイテムであるHPポーションを取り出しても、それを飲むほどの時間は無い。
握り砕いて、攻撃に備える。
ポーションが経口摂取だけじゃなくて、皮膚接触でも多少は効果あって良かった。
イノシシは再度突進を開始した。
今度は、牙を突き出していない。
私の動きを最大限警戒しながらの質量攻撃。
それは、本当に私にとって一番対処し難いものだ。
掠ればその時点で一発アウトな攻撃が、私の動きに合わせられるように、行われている。
厄介極まりない。
加えて、イノシシの周囲にはあまり長くいられない。
恐らく、先程の攻撃は『土魔法』のそれで、物理よりの魔法は『雷魔法』ではまともに対処できなく、やるとしたら『対魔斬』の他無い。
ただ地面から出てこられると、それはそれで飛来物よりも対処が大変なのだ。
取り敢えず、突進を躱さないと。
地面からの攻撃の弱点と言えば、対空に弱い点があるはずだ。
なので、イノシシの頭上、それも直近に避難する。
「天風!!」
空中での斬撃で、瞳を狙う。
だが、それは分厚い瞼に遮られた。
でも、狙い通りだ。
――歩法 滑歩
視界が塞がった隙きに、普段でさえ正確に像を結ばせない歩法で、認識から逃れて、イノシシの上に乗る。
首元で放つは、地面をも抉る一撃。
――撃法 降魔
全身のエネルギーを集約した踏みつけは、イノシシの首に少なくない負荷を掛ける。
衝撃にイノシシの脚が負けて、がくんと力が一瞬抜けた。
ここだ。
「『纏魔斬』――ハアァァァアアーーー!!」
――斬法 豪雷
首元から飛び降りながら、空中で無理やり全力の一閃を叩き込む。
力が抜けている状態なら、首への攻撃もダメージが増すはずだ。
地面に着いた瞬間、すれすれまで下がった首を見据える。
瞬時『纏魔斬』を再度発動する。
「ラアァァアッッ!」
――斬法 豪雷・昇竜
袈裟斬りの豪雷の逆袈裟バージョン。威力は若干低いけど、轟雷から繋げられる。
ザンッ、と言う効果音とともに、イノシシのHPがかなり減る。
これでHPは5割を切った。
……さあ、ここからだ。
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