対人と対怪
脳死で描くと、話が進まないのは分かっているはずなのにね。
――ここは、ゲーム。
――現実での戦闘を忘れろ。
「…………どういう事だろう………………?」
配信の準備をしながら、先程のサニーの言葉を考える。
現実の戦闘を忘れろ、という事は、私の太刀上流の戦いに何か問題があるのだろうか?
けれど、あれは長い年月を掛けて数え切れないほどの人が練磨し続けたものだ。そうそう大問題が生じるとは思えない。
私の立ち回り自体もちょっとずつ勘を取り戻しつつあるはずだし。
…………いや、それが問題なのか。
洗練されたものだから駄目なのか。
「太刀上流は対人剣術、か…………」
太刀上流は飽くまでも、人が人を斬るための技術体系だ。
だから、人の性能に合わせたものになっている。
人の弱点に、人を殺し得る威力で攻撃する。
人の攻撃に対して、対処する。
その為のものなのだから、対人以外で使うのは元々無理矢理気味だ。
そして、ゲームに於いて、最大の落とし穴は人が殺せる威力じゃ足りないという事だ。
初日のボスウサギからして、そうだった。
一撃、とまではいかなくともHPを正しく削るようにする他無かった。
現実の人を殺すのに必要なだけの威力では、ゲームのモンスターを斬り倒すのに足りている訳がない。
要は、人と同じやり方では、モンスターは殺しきれないという事。
現実での対人用の武器自体の威力だけでは駄目なのだ。
どんなに技を研ぎ澄ませても、斬れ無い物は斬れない。
剣の達人でも、岩を斬り裂けないように。
それを解消する方法はいくつかあるが、まずは一番簡単なのからにしようか。
__________
「――今日はスキルを探します」
配信を開始して、開口一番私は宣言した。
今日は戦闘メインにはならなそうだよ、と。
『説明をしなさい!』
『スキル枠埋まってんのに、やるんだ』
『何系?』
『視聴者の順応能力が段々と増している気がする』
あっはっは、割と配信の始め方が適当なせいで、視聴者さん達の対処能力が上がっているのは否定できない。反省はするよ。後悔は特にしてないけど。
「この前、スローターボスへのリベンジを誓った訳じゃない? それで私に足りないものを補おうと思ってさ」
人形なら兎も角、イノシシは流石に、ね?
対人剣術そのままじゃ、ちょっと厳しい。
技をそのままに使うのは二流と言えば、そうなんだけどね。
まあ、型と呼ばれるものは最も基本で、最終的に立ち返るものでもある。
最終的に型自体じゃなくて、そこに含まれる根本的な要素何だけどさ、必要なのは。
「それで、私に足りないものの一つは火力だなってなったので、火力上げるスキルを探したいと思います!」
『ステを一時的に強化するのなら探すまでも無いが』
『魔法斬るスキルみたいなのかな、探すのは?』
『一時的なバフじゃ駄目なのか……?』
「うん、時間でステータスが変化する奴は勘弁だね。武器攻撃力を変えるのは、ありだね」
加えるのなら、次の一撃の威力を上げる、とかそういう奴だと望ましい。
武器攻撃力を一定時間上げるのでも良いは良いんだけど、それだと勝負を仕掛けたいタイミングで使えないとかになりそうだからね。
『瞬間的な強化系か……。聞いたこと無いな』
『掲示板とか見た?』
『Wikiという便利なやつが…………、載ってない、だと……?!』
『掲示板にも無し。と言うかあったら皆んな欲しいでしょ、それ』
『↑確かに』
ですよね。私も調べたんだよね。
ゲーム内掲示板、Wiki、ネット上のサイトなど色々調べたはいいんだけど、全然見つからなかった。
「でも、調べ回っている内にね、面白そうなもの見つけたんだ。それ始まりの街にあるみたいだから言ってみよっか」
『いや、そこ第三の街』
『めっちゃ遠いんですが』
『まさかの今から』
『直線距離軽く5kmはあるらしい』
5kmか……。あんまり時間かけたくないしな……。レベリングしたいし。
道成だと更に遠いだろうし。
ならば――
「ちょっと全力ダッシュしましょうか!」
――歩法 迅雷
最高速度で突っ切ろうか。
今まで鍛え上げたAGIに『敏捷大強化』の効果も合わせて、全力で駆け抜ける。
時速60kmはくだらない。(ただし平地に限る)
『まさかの全力ダッシュ』
『速いな。流石AGI特化』
『足の回転速度がちょっとキモいんですが』
キモいとは何だよ。泣くぞ。
__________
「モンスターとか森とか合っても、15分位で行けたね。うん、こうやって考えると、ステータス上がったね」
『途中ジェットコースターだったんだが』
『モンスター避けに、木々を足場にしてたからな』
『AGIいくつよ……?』
AGI今いくつだろ……。
見るか。レベルが36ね。
「150超えてるけど、細かい数値は良いでしょう。どうせ私相手にそれは当てにならないし」
元々の反射速度的に、平均的な人の数割増しで速いし。
『うん、偏りかな見たいな』
『5倍の差とかありそう』
『普通にありそうで嫌だな』
そんな感じで、駄弁りながら調べた地図に従って道を進んでいく。
いくつか入り組んだ道を通って、視界が一気に広がった。
そこにあったのは――
「着いたね、お目当ての訓練場」
庭にあたる土地の至る所で、沢山の人が打ち合っているそこは、剣術道場みたいな感じだね。
『道場であって欲しかった』
『世界観ぇ』
『ここプレイヤーが行くと武器の使い方教えてくれるぞ』
初心者は割とお世話になる人も多いのだとか。
まあ、良いや。
行こうか、ちょっと喧嘩売りに。
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。




