太刀上流
何やかんや1500ptを超えたことが感慨深く感じます。
「まず、すっごいざっくり分けると剣術は二通りに分けられるんだ。ハーフェン君、その二つは?」
「殺人剣と活人剣ですね。前者が自身の得意を押し付ける、後者が相手に合わせて柔軟に対応する、といった感じでしょうか」
これらは辞書的には、別の意味があったりするけどね。
『これはちょくちょく聞くな』
『雑いな』
『ラピス達の剣術流派はどっち寄りだ?』
『ラピスとかアンバーは殺人剣よりかな。ハーフェンは受け流しとかが多かったし、カウンター寄りだから、活人剣?』
『統一してもろて』
大体の剣術流派は、殺・活のどっちかに大別できると思うんだけど、太刀上流はそうはならない。
その話をするには、成り立ちを知ってないとだね。
「私達が納めている流派は、殺人剣とか活人剣とかには分けづらいんだ。その理由なんだけどね――」
昔、戦国時代にある武士がいた。
その時代では珍しい程に、妻含めた家族を溺愛していた様子が、彼の手記から分かる。
家族のためになら、主君さえも蔑ろにする変わり者だったようだ。
彼は生活のため、家族の安寧のために、幾度となく主人を変えながら、多くの戦場を渡り歩いた。
その間にたいへん多くの剣士と斬りあったらしい。
彼が刀に求めたのは、生き残ること。
生き残るためなら、それこそ何でもしたようだ。
相対した敵の流派の技を取り込んで、時には刀を犠牲にしてでも、しぶとく生き残るために鍛え上げた。
それが太刀上流の始まり。
要は、太刀上流は色んな流派のあれこれをゴチャ混ぜにした結果、全体を通して見えてくる特徴がわからないという言ってしまえば、器用貧乏な剣術となった。
「まあ、そんな感じのカオス剣術ですって話だね」
「酷い言い草だとは思いますが、否定は出来ないですね」
色々混ざりすぎてるから、カオスが一切否定できないというね。
分かっている限り、一撃必殺、カウンター、柔術とは別の打撃攻撃、など多岐に渡る。
渡りすぎて、極めるのが困難すぎる。
『カオス剣術というパワーワード』
『剣術流派で複数の武術を取り入れているとこはあるけど、それにしてもこいつらのは更に雑多だな』
『否定したれよ』
『ハーフェン君、すっごい苦笑い』
コメントにあった通り、ハーフェン君は現状苦笑いというか頬が引きつってる。
うん、悪く言いたくは無いけど、事実だからなぁ……ってところかな。
「…………流派の簡単な話も終わったところで、ハーフェン君を呼んだ理由なんだけどね――」
「打ち合い、というか切り合いに付き合え、ですか?」
話が早くて助かるなぁ、本当に。
『めちゃ物騒なんですが』
『まあ剣術やってる人間からすると打ち合いは割と日常でしょ』
『型の確認は?』
「型の確認は私は済ませてあるけど、ハーフェン君は時間いる?」
「いえ、今日はやってきた後なので」
ああ、そう言えば、今日ハーフェン君、家来てたね。
PVPのルールは……初撃決着で良いかな。
初撃(掠りとかじゃなくてクリーンヒット)で終わるルール。
あと、HPがⅠ/4を切った場合も負けだね。
ハーフェン君がPVPを承諾した時点で、専用のエリアが形成される。
周囲20mにいるのは、私達二人だけ。
カウントが始まった時点で、お互いどちらともなく一礼。
揃って、相棒を抜刀する。
彼は、二刀流。両刃をハの字に広げる。
対して私は正眼。彼の喉元に鋒を向ける。
カウントがゼロになっても、私達はどちらも動かない。
ハーフェン君はそもそもがカウンター型だからね。
私は、まあ、様子見、かな?
ハーフェン君の様子から、スキルを考える。6個、だと思う。
少なくとも『刀』は確定。
現実と動作に差が見られないから、『走破』とか『重心制御』とか無いのかな。
これ本当に、そもそものハーフェン君の構えが安定しているから分かりづらい。
現実で良く見ていても、それでも困難だね。
それにしても、付け入るべき隙きが少なくなったなぁ……。
「――来ないんですか?」
基本的に私は最初から突っ込むから不審に思ったのかな。
カウンター型だと分かっているのに、無策に突っ込むのもねぇ……。
でも、そうだね。他に理由があるとしたら――
「弟弟子の成長を噛み締めているところだよ。……まあ、でもそこまで言うのなら」
ぐっと、アバターに運動命令を送る。
「――行こうか」
――歩法 迅雷
私の平均速度において最速の歩法。
まあ、言ってしまうと太刀上流の門下生は皆んなそうだけど。
前進のエネルギーをも一撃に込めるように、刀を上段に持っていく。
「……!」
ハーフェン君は構えから私が放とうとしているのが、地嵐であると気が付いた。
まっすぐ振り下ろすだけと言ってしまえばそうだが、地嵐の最も困難な点はその振るい方。
一切のブレなく放たねばならない地嵐は、流水のような技に対して相性が良い。
流水を使おうとしていた体勢を戻して、回避を選択した。
まあ、誰でもそうするよね。
「……ふっ……!」
――斬法 朧月
手首のスナップのみで刀の軌道を変える。
「甘いです」
ハーフェン君は左の小太刀を用いた流水で、私の刀を巻き取る。
そして、外側に流す。私の右側。
うん、良い判断だよ。
流れるように、右の小太刀が私の左二の腕を狙う。
力を上手く伝導させていて、流水の余りのエネルギーも混ざっている。
――撃法 廻踵
左足の回し蹴りで、ハーフェン君の右手首を、正確にはそこに装備している籠手を打ち払う。
ハーフェン君は不利を悟って、私は間合いの関係で、互いに、一歩ずつ後退する。
仕切り直しだね。
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