復想
クリスマスですね。
番外編も何もありません。
物語の中は夏休みなので。
「――――ァッッ!!」
激痛。
不快感。
あらゆる負荷がかかって身体が殆ど動かせない。
かわりに迫り上がってくるのは――
「――ゔううぅっ…………!」
強烈な嘔吐感。
今すぐにでも、胃の中身をぶちまけたいけれど、身体が動かないから起き上がることも出来ない。
そんな状態で長く保つ訳もなく、決壊する。
「――お姉!!」
吐く寸前で、琥珀が扉を蹴破るように部屋に飛び込んでくる。
琥珀の存在で、一瞬、ほんの一瞬だけ吐き気を忘れた。
琥珀が歩法まで使って、私の元にやって来る。
その手には、部屋の隅に置いてあるゴミ箱があった。
琥珀が優しく、されど迅速に私の起き上がらせる。
その動作と安心感からか、すぐに私は、胃の中の全てを吐き出した。
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「………………ごめん、ね。琥珀」
「ううん、大丈夫。お姉は寝てて。ご飯とかは心配しなくて良いから」
一番に言うことがご飯って……、全くもう。
「うん。……今日はカップ麺とかで我慢してね」
お願いだから、レトルトとかやらないでね。
すぐに事故起きそうだから。
「……はぁ…………」
ぱたり、と頭上に持ち上げていた腕が落ちる。
頭痛はもう無い。
何故かは不明。記憶が戻ったかと言うと、否なのだ。
これが良く分からない。
未だ私自身が認識できていないのか。それとも、記憶を封じ込めていたのではなく、断片的にしか残っていなかったのか。
吐き気も無い。
頭痛とは違って、一度全部戻したからかな。多分だけど。
何だろう、理由が酷い。
「はあ……」
もう一度ため息を吐き、ごろんとベッド上で身体を回す。
もう寝てしまおう。
明日はご飯作りたいし。
今日は疲れた――――
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「――悪かった、瑠璃。あれ以来、一度もまともに会えなくて」
「大丈夫だよ、寂しくはあったけどね。……でも、私もなんて声掛けていいか分からなかったし…………」
気が付くと、悠真と並んで道路横の歩道を歩いていた。
口からは、私が一切意識すること無く言葉が紡がれる。加えて言いたいことは言えない。
その事から、これが夢――特に明晰夢と呼ばれる類のもの――なのだと分かる。
一度似たような状況下の夢を見たことがあるからこそ、分かる。
これは、事実だ。
私は、この光景を知っている。
過去起こったことの回想なのだ。
「ああ、いや、俺としても声の掛けようが無いな。……まあ、良い。それは置いておくぞ」
「口ぶりからすると、何か用事?」
私の預かり知らぬ所で、会話が進んでいく。
身体も思うように動かない。
眠る前の動けない状態とは違い、勝手に動いていると言った表現が正しい。
「そうだな。これを――」
「これは…………」
彼の声を遮るわたしの呟き、その原因は悠真が差し出したものにあった。
「――ノート?」
以前見た写真に映っていたものに良く似た、けれど、異なるノートがそこにはあった。
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