下世話な尾行 Ⅱ
デート中の妹と弟弟子を見つけたので、ちょっと尾行しよう。
こんな面白い話――良い肴は中々無いからね。
と言うよりも、あの子たち、付き合い始めたのかな? お姉ちゃん、そんな話は一度も聞いてないんだけど? 報告は欲しいぃ…………。まだ付き合っていなかったらごめん。
取り敢えず、隠形しましょ。
まだ『隠蔽』スキルは無いけど、持ってたとしてもスキルレベルが低いと効果少なそうだし、まあ、問題は無い。一応、視覚と聴覚とちょっとの剣士的勘なら、自前である程度対処できる。
――歩法 静穏
本来なら、走る時の音を抑える歩法だけど、その時の身体の使い方を歩きで再現すれば良いのだ。出来ないはずが無い。膝で抑え込むから、戦闘時とかは維持出来ないけど。
近くの茂みなどに忍び込んで、様子を伺う。この時に、二人に注目しては駄目だ。あくまで視界全体を俯瞰するようにしないと、あの子達は気がつく。
アンバーは、勘で。湊君(仮)は、情報の集積で。各々の得意分野に限れば、二人はかなりの者だ。だから、尾行する際は、限界までこっちもやらないと失敗する。
ついでに聞き耳を立てておく。ちょっと自分でもどうかと思うけど。
でも、気になるんだもん!
「アンバーちゃん、どうしたの?」
「んん……? なんかスライムとかじゃない気配を感じた気がしたんだけど、今は分かんない」
「プレイヤーとかじゃないの? 確か第二の街周辺に現状プレイヤーが集中しているって話だし」
「そうなんだけど、明らかに薄かった。それも武芸者特有の感じ……」
勘怖ぁ…………。そこまで当てられると、最早バレてる気がするよ。強くなったねぇ、アンバーや。
そして、水色の髪の男の子は、湊君で確定だね。声音も口調も琥珀の呼び方も背格好も一致してる。あと、アンバーの表情が、何というか蕩けてる。湊君、スクショください。……あ、あの子写真撮りたがらないから、無理だな。アンバーも写真嫌いだし。
顔の方は、ちょっと、私を感知して持ち直したけどね。残念。
「それにしても、今日は急に誘っちゃってごめんね。予定大丈夫だった?」
「特に無かったから大丈夫だよ。……それに、ハーフェンが誘ってくれて嬉しかった、し……」
へぇ……、湊君改めハーフェン君(暫定)、君から誘ったんだ、へぇぇ…………。
アンバー凄いデレデレしてるな、お姉ちゃん、妹のそんな顔見たこと無いんだけど!
というか、ハーフェン君もアンバーの顔直視できてないわ。うん、甘いねぇ。
お姉ちゃん、砂糖吐きそう…………。ゲームだから、嘔吐はしないはずだけど。
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「――せぇいっ!」
アンバーの振るう戦斧が敵である赤いスライムを薙ぎ払う。
その隙を突くような青いスライムの突進を、ハーフェン君が小太刀二振りで巧みに妨害、着実にダメージを積み重ねる。
小太刀を片手で振るう以上、火力が低いのは仕様が無いと理解した上で、スライムの身体を削ぎ落とすように攻撃しているのが、ポイント高い。不定形のものはただ斬りつけるよりも、体積を減らしたほうが良いだろうからね。
普通の動物が切りつけたところから出血するみたいに、スライムも切り口から中身が出ているなら、ただ斬るだけで良いんだけど、WJOのスライム見た感じ粘性高そうなんだよなぁ。まあ、その分打撃に弱いはず。
「ドラッシャアアッーー!!」
全霊での振り下ろし。まさに一撃必殺とでも言うべき斬撃で、スライムを潰す。
良い一撃だとは思う。
でもね、アンバー。流石にその掛け声はどうなの……? まあ、私も割と叫び散らしているけど。
「おつ〜」
「アンバーちゃん、怪我は?」
「パーティ組んでるからHP確認すぐ出来るでしょ?」
「お約束かなって……」
お、なんかいちゃついてますね。湊君、漫画とか大好きだから、言ってみたかったんだね。アンバーは漫画とかよりはゲームよりだからなぁ……。
それにしても、二人の連携の練度は中々だと思う。というか、ボスゴブリン戦でのアンバー・サニーコンビよりも動作がスムーズに思える。なんだろうね、愛のチカラかな?
現状、二人を背後から見てるから、表情が見えにくいのが残念。特に、ハーフェン君の顔が見たい。アンバーは隙きあれば溶けるから良いとして、ハーフェン君がアンバーとの時間をどう思っているのか知りたい。
旗から見れば、相思相愛そのものだけど、ハーフェン君が、LoveかLikeのどっちなのかが私にはいまいちわからないからね。アンバーより感情隠すの上手いし、そもそもの付き合いの長さが圧倒的に違うから、顔見ないと分かりづらいったら、ありゃしない。
移動しようかな…………? でも、見つかりやすくなるしなぁ……。
「――そろそろ、良いんじゃないの? ストーカー」
突然、ぐりん、と首をこちらに向けるアンバー。
あれま、いつ気がついたのかな?
あの子のことだから、前々から違和感を感じていて、ついさっき分かったとかかな?
まあ、とにかく、バレちゃったものは仕方ない。大人しく出ていこう。
そうして、姿を現した私に対して、アンバーは予想通りと言った感じで、ハーフェン君は驚いた後、赤面。あ、ごめん。恥ずかしかったよね。デート中に、相手の身内に見られたら。
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