ウェットな奴ら Ⅰ
「クエストの目標の生息地、湿地帯にやってきました。さっさと狩ろう」
今回私が受けたクエストは限界量の3つ。
①ジャイアントフロッグというカエル型のモンスター10体の討伐
②ジャイアントフロッグの粘液(多分表面のぬめぬめ)を10個納品
③ウェットリザード(こいつはトカゲ人間)の革(というか鱗)を15個納品
だ。
リザードはカレジさん(暫定)に勧められたから、試しにやってみようと思って受けた。
カエルは、ねえ? 視聴者さんたち問い詰めたほうが良いかな。
ぶっちゃけ言うと、湿地帯で泥濘んだ地面が気持ち悪いから、早く終わらせたい。
「取り敢えず、モンスターを片っ端から切り刻んでいこう」
『割と嫌そうな声』
『カエルと湿地どっちも嫌だな、こりゃ』
『スピードキャラなんだから、走れば良いのに』
『泥水が跳ぶのが嫌なんだろ』
『カエルにぼこされてもろて』
いや、両方嫌なんだけどさ、私そんなに分かりやすいかな?…………分かりやすいか。
そして、最後の奴。お前、私に何を期待してるんだ?
「つい昨日、誰にも負けない、なんて言っちゃったんだから、カエルの一匹や二匹に負けるわけにはいかないんだよね」
あの時のテンションはかなりおかしかったとは言え、迂闊な発言だったかな。最強に言ってもらえたのもあって、嬉しかったのはそうなんだけど。
『イキってて草』
『まあ、基本的に強いが』
『昔話でさんざんボコられたトークしといてそれはどうなん?』
『もしかしたら、もう越えたかもしれないだろ!』
「私をボコってた人が言ってたからね、それ。あと、残念ながら越えられてない! あれ、どうしたら越えられるんだろう……?」
不意打ちのつもりがかっ飛んでくる攻撃、真剣白刃取り…………うっ、頭が。
「スパコンの攻略法、募集しようかな」
『電源切る』
『導線を狙え、奴は防御できない』
『物理的に破壊』
役立たねぇ…………。
いや、私が思いつかなかったから、聞いたんだけどさ。
「電源は私のほうが早く切れる。基本的に燃費が悪いのは私。導線を狙えって、神経でも断裂させれば良いの? それは止めたほうが良いよ、不便だから。そして、電車の直撃で死なない人間を物理的に壊すのは本当にどうやろう……?」
……あれ、詰み?
多分、認識外から一撃で屠ればいいんだよね。あっはっはっはっ…………むっず。
「まあ、もう良いや。――で、何の話だっけ?」
『クエ』
あ、はい。申し訳ない。
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「――あれかな? ジャイアントフロッグって」
視線の先には、体長2m近い正しくジャイアントなカエルがいた。
……ええ…………、私あれに切り込むの?
「普通のサイズなら兎も角、流石にでっかいと気持ち悪いね」
『普通にひどい』
『デカいのは確か』
『現実でも体長30cmくらいのいるぞ』
『ゴライアスガエルだな』
『知らんかった』
私の率直な感想に割と同意の声とは、別のあれこれが……。
「カエルにでっかいのがいるのは知ってたけど、そんな名前だったんだ……」
『体重3kg超える位』
『10年は生きる』
『詳しくて草』
鳥肌立つんで止めて欲しい。いや、VRだから、そうはならないけど。
一応『識別』はしておく。あんまり直視したくないけど。……あれ、これキノコでもなかった?
『ジャイアントフロッグ Lv.24
属性:物理・打撃
耐性:物理・打撃 』
うん、なんか予想通り。打撃攻撃メインで、打撃に強い。
ということは、その巨体から繰り出される体当たりに注意することと、撃法が通用し難いってことだね。
撃法あると便利だから、ダメージソースになり得ないのは残念、というかぶっちゃけ面倒。
まあ、やるしか無いんだけど。
「まずは、様子見だね」
とは言え、最初からアクセルは思いっきり踏むけどね。
――歩法 迅雷
身体を思い切り前に倒して、加速する。
普通泥濘んだ地面でこれをやるとバランス崩しそうになるんだけど、そうはならなかったのは多分『走破』のおかげ。もともと立体機動する時に便利そうだから取ったけど、思わぬ収穫。
割と久々にやるかな? これ。
「瞬雷!」
一閃抜きざまに切りつけて、時計回りの身体の運動を更に上げる。
瞬雷を振り切った姿勢から、身体を追加で捻って、エネルギーを溜める。
「――セアアッーー!」
――斬法 鎧通
個人的に他の動作から放てるから、何かと重宝するこの技。
威力自体は箒星の方に軍配が上がるんだけど、もともと窮屈な状態からの攻撃として想定されているから、使いやすい。
刀身を捻って、傷口を多少なりとも抉ってから引き抜く。
そのまま一歩下がる。
「割とタフだな。このカエル」
直近二撃で削れたHPはわずか1割5分。思いの外効いていない。多分身体が大きい分、刃が内側まで入り込みにくく、致命傷になりにくいんだと思う。
そして、身体を覆う粘液(これが狙い何だけど)のせいか、切った時の感触がちょっと独特。
あんまり好きではない。いや、切る時の感触の好き嫌いとか何なんだか分からないけど。
「――――!」
次はカエル側の攻撃から始まった。
舌を伸ばしてくる。その速度はおおよそ30km/h。
要は思ったより速い。
「うおっ……」
咄嗟に身体を傾けて避けた。
彼我の距離がそこまで離れているわけじゃないから、結構ビビった。
普通、打撃が来ると思うじゃん? 前足とか体全体とかでの。
「――ひょあっ…………?!」
そして、避けたは良いんだけどさ、唾液らしきベタついた液体が滴り落ちてきた。
思わず変な声出たよ。ついでに凄い臭い。
これは精神衛生上、良くない。
速攻でケリを付けたい。というか服と身体洗いたい。
「許さん。クリーニング代払わせてやる」
『殺せばクリーニング代出るよ』
『いや、足りなくね?』
『やの付く自由業の人の発想では?』
悪ノリ的に言った言葉でそんな反応返されるのは、ちょっと。
あと自由業の人は、壊れてないものの損害賠償とか求めてくるあれでしょう? 私はきっちりと汚されているんだけど。……きっちり汚されるって何?
取り敢えず、目の前の奴は極刑で。
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。
カエルは何とか触れる作者です。
ラピス氏も一応触れます。率先して触りたいかと訊かれれば否ですが。




