第三の街
「はい、今日も今日とて、配信を始めましょう。今日は昨日ほとんど見られなかった第三の街『トレハブ』を見て回りましょう」
ボスキノコを屠った後に、PKプレイヤーと戦った翌日、昨日の内に到着していた第三の街の観光をしようと恒例となった配信を開始した。
昨日のうちに見て回ることは出来なくは無かったけど、流石に疲れててやりたく無かった。というか、そんな元気は無かった。不可能では無かったけどね。
『第三の街、水辺?』
『かなりハイペースだな』
『トレハブは海に面している』
『ラピスのことだから、観光でも何かしら起こるだろ』
「おいこら、誰がトラブルメーカーだ。私基本的に巻き込まれる側でしょうが!――んんっ、兎も角、第三の街である『トレハブ』はコメントにもあった通り、海に面した街だね。屋台とか覗くと色々な魚介があるよ。……あ、あと真珠とかのアクセサリーとかもあるね」
街の西側が丸々海に接していて、潮の香りとかも仄かに、というか、はっきり感じられる。モンスターとかは西側のは基本的にプレイヤーじゃ相手できないから、ちょっと残念。
でも、仮に戦えても水中で刀振るうのは難しいから、良いけど。
南側は、昨日も通った湿地帯。西側は海、と街の中では今の所最も人気がないみたい。見た目だけは良いけど、この手のゲームは戦闘したい人が多いからね。しょうがない面はある。
「海とか入りたいんだけどさ、『水泳』スキルがないと、まともに動けないんだって…………」
せっかくなら入りたかった。
久しく行ってないからなぁ。
その場合は勿論配信外でだけど。衆人環視の中水着とかは、さ。流石に無理。
『リアルというものがある』
『内陸の人間に対しても、同じことが言えるのか』
『日焼け対策面倒だし、この時期混むからね』
『ぼっちで行くの虚しくね?』
『サニーとかに引きずられて行きそう』
私が住んでいるところ、言うほど海から離れて無いから、行けないことも無い。
そして、小学校高学年の頃、サニーに引きずられて行ったことはある。
でも、今は無理なんだよね。
「リアルじゃもっと無理だよ。私もう泳げないからね」
言ってから後悔した。
こういうのは、駄目だよ。こういっちゃなんだけど、赤の他人に話すことでも無いし。
でも、また泳ぎたかったなぁ……。
『すまぬ』
レスポンス速いなぁ、まったく。
「謝らないで。これは私のせいだから」
他人に頼っちゃ駄目なわけでは無いだろうけどね、こればっかりは言ってもどうしようも無いし。
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「――正面に見えるのが、街の中心の広間にある大噴水ね。近くに水資源が有り余っているからこそ、出来ることかもしれないね。いくら魔法があっても近くに海とかでっかい川とか無いと、難しそうだし」
直径10mの円形で高さは5m程。要はとても大きい。
視界的に涼しいね。現実じゃ夏真っ盛りで現に今日も真夏日だし。
『目の付け所よ……』
『こいつ本当に現役JKか?』
『情緒も糞もない』
『さらっと個人情報が……』
失礼な。れっきとしたJKです。
クラスの〇〇君、格好良くない? とか聞かれてます。彼のことは、全然気になんなかったけど。そして、なんやかんやあって、玩具(肴)にされたけど。
「個人情報の方は、まあ、それぐらいは良いよ。サニーと同い年の幼馴染なのはもう公開してて、サニーが現役JKなのは皆んな知ってるからね」
あの子、ネチケットちょっと危ういけど。まあ、今の所何年も配信とかしてる割には個人情報流れてない方でしょう。多分。私あんまり配信動画とか見ないから分からないけど。
「――あ、そうそう、トレハブからの新要素の話しようか」
トレハブには、街の中心部に大きな建物が二つある。
一つは、トヴェッグにもあった職業管轄センター。これはジョブの設定とかが出来るところだけど。まだあれから10レベル位しか変わってないから、行っても大して意味がないだろう。
私の場合は、もう一つのほうが気になる。というか新要素はこっちだ。
それは――
「目の前にある大きな建物が、冒険者ギルド。ギルドの名の通り、冒険者、プレイヤー含む戦闘する人たちがまとめてそう呼ばれるみたいなんだけど、その組合で、様々なクエストが受けられるらしいんだ」
クエストの種類は、大きく分けて、二種類。
即ち、戦闘系か非戦闘系か。
細かく分けるのは簡単だけど、突き詰めていくと種別がとんでもないことになるから、大雑把でも良い気がする。
私が受けるのはもっぱら戦闘系。
一口に戦闘といっても、それが単純にモンスターの討伐数が決まっているものから、ドロップアイテムの数とか色々だから、受けられるクエストの数は多い。
取り敢えず、登録からだね。いくつかある中で空いていたカウンターに向かって、受付の人に声を掛ける。
「すいません、冒険者ギルドの登録をお願いします」
「登録ですね。でしたら、まずはこちらの水晶に手をかざして頂けますか?」
言われるまでよく見てなかったけど、各カウンターに一つずつ大きな水晶があった。多分何かしらのアイテムなんだろうけど、見ただけじゃそれは分からない。
ちなみに『識別』しても分からない。
言われたとおりに手をかざす。
すると、水晶が仄かに光を放つ。
数秒で光は収まったけど、これで何が分かったのかはまるで分からない。
「――はい、問題ありませんね。登録を行いますので、こちらの用紙にお名前とジョブを書いてください」
少し黄色っぽい色の紙と羽ペンが差し出された。
必要なことをかきながら、きいてみると、
「あの水晶は、手をかざした人の犯罪歴などを調べることが出来るものなんですよ。なので、こちら調べて問題ないようでしたら、登録していただくことになっているんです」
素直に成程なと思う。
多分あのアイテムはプレイヤーのログにアクセスして、違反行為の有無を確認しているんだと思う。こういうこと考えているから、情緒がないだとか言われるんだろうな。
「《侍》のラピスさん、登録が完了しました。あちらのクエストボードから受注可能なクエストは確認できますので、ぜひ一度受けてみてください」
受付さんが指し示した方には、大体の日本人がイメージを共有していそうな横長の大きなボードにたくさんの紙が張り出されていた。
そこには、多くのプレイヤーらしき人物が集まっている。中でも目立つのは大剣を背負った軽装の男性。大剣って、防御固めるべきじゃ無いのかな?
まあ、いいや。取り敢えず、試しにやってみようか。
結局戦闘はするつもりだったし。
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