槍は便利で厄介で Ⅰ
また連投するのかって?……しますよ。(ストックの量から目を逸らしながら)
祝10万字!! なんか早かったですね。処女作に比べて……。
「――まあ、とっとと第三の街に行こうか」
ぶっとんだ感じの雰囲気をなんとかして、ボスエリアを抜ける。
空気感を崩壊させたのは私だからこそ、自力でなんとかしなきゃなんだけどさ。
こぉれが難しい。…………今度近くにモンスターいたら見せしめに一撃で屠ったりして、空気を強引にもっていったりしようかな? それが手っ取り早い気がしてきた。
兎も角、キノコにまみれた森的サムシングを抜けたら、そこには――
「湿地帯が深い森のすぐ横にあるのなんか、なんかっ…………」
違和感すごいの私だけ?
『キノコが多い時点で湿度高いだろうし……』
『魔法のある世界で現実の話持ち出してもね』
『アマゾンとかそれっぽいから、別に』
あ、はい。私だけなのかな……? なんか悲しい。
「久しぶりのちゃんとした陽の光だね。いや、長かった」
湿地帯だからジメジメしてはいるけど(よくVRで再現できたよね)、それでも陽の光は気持ちいいよ。
『こちらとしては、非常に面白かった』
『虫は……まあ、ドンマイ』
『目がくらむやつだ』
『湿地帯は濡れるんですよね……』
『↑通報しました』
「湿地帯のあたり、確かに足元酷いみたいだし、ちょっと戦いづらそう。――まあ、虫とキノコよりはマシだしいっか!」
悍ましくないだけで、オールオッケイ!ってね。
……うん、この言葉初めて使った。それだけテンション高いのだろうか……?
まあ、良いや。そんなことよりも新エリアですよ、新エリア。
早く進みたいので、ちょっと駆け足。
「街までどれくらいかかるか――――ッ?!」
瞬間、強引に身体を仰け反らせる。
僅かに、陽の光に紛れる不純物。それは鈍色の閃き。
それをギリギリで躱して、無理やり蹴りつける。
「――それで、誰なのか聞いても良い? いきなり殺しに来たんだから、それぐらい良いでしょう?」
一度、息を吐き出して、私は目の前の不届き者に問いかける。
そこには、何かの鱗を用いた軽量鎧に軽微なアーマーを身に着けて、一振りの黒槍を肩に担いで、髪を短く刈り揃えた女性がいた。彼女の髪色は深緑、瞳の色も同様。
その瞳は、鋭く私を射抜いていて、野生の肉食動物を思わせる。
そして、額には二本の角。それは彼女のアバターの種族が鬼族である事を示している。
「ハッ、お前肝据わり過ぎてんだろ。初撃にカウンター合わせてきた褒美にでも、言ってやるか……。オレの名前はカルネイジ。――それでお前は?」
殺そうとした癖に名乗るんだね。ダメ元で聞いたのに。
普通名乗る? 恨まれると分かっているだろうに。……いや、それが目的?
それにしても――
「大量虐殺とは物騒な名前だね。まあ、ゲームでの名前だし気にしなくていいのかな。……ラピス。宜しくね。宜しくついでに見逃してくれると楽なんだけど?」
ボス戦で割と全力出したから、今の私は疲労困憊も良いところだ。
多分パフォーマンスは平時より4割位落ちてる。
それに早く第三の街に行きたいんだけどな。
まあ、多分無理だけどさ。
「ああ、夜露死苦。だが、見逃してやるわけねえだろ? お前みたいな上玉は久々だからなぁ」
「まあ、だよね……。それに私も強くは言えないし」
何しろ友人に喧嘩売りまくってたわけだしね。ちょっと喧嘩売られた位じゃ非難できない。そんな事したら、過去の私は牢屋に入れられかねない。
2〜30回は売りつけたし。
それに、元とは言え剣士である以上、彼女程の戦意を、殺意を叩きつけられて、無視は出来ない。
「――んじゃまぁ、始めるとするか……!」
槍を構える。構えは下段。重心も下に下げて、どっしりと構える。
下段に構えられると、相手としては間合いをはかりづらいから面倒なことこの上ない。
更に、槍という武器は対剣士においてかなり強いのだ。
まず突き技自体が強い。斬撃に比べて後隙きが少なく、視認性も悪い。
剣士の間合いの外から攻撃し続けられるのもその強さに拍車をかけている。
そもそも槍自体が、突き、打ち(石突等による打撃)、払い(斬撃)と取れる攻撃方法が豊富なのだ。
薙刀も同じような特徴を持つけど、両者の違いは、簡単には突き主体か、斬撃主体かだね。
兎も角、槍は使う分にはかなり強力な武器だけど、相手にするには厄介なのだ。
相手の技量は未だ未知数。
立ち姿から察せられる情報は少ない。
スキルでいくらでも補強が効くから、武術経験とかが実際に刃を合わせてみないととてもわかりにくい。
先程の発言から、かなりの数のプレイヤーを殺してきたのだろう。
このゲームPKにゲーム的なペナルティ以外なにもないから、一定数はPKがいるらしい。ゲーム的ペナルティは、街に入れなくなる事位。
厳密にはシステム的に入れなくなるんじゃなくて、街の入口にいる衛兵(めちゃ強い)を突破しないと入れないから、実質的に入れないだけらしい。
実力が、レベルが、分からないから、想像するしか無い。
少なくとも、レベルは私以上と思っていい。
技術レベルは太刀使用時のアンバー位を想定しておいた方が良いかな。
かなり大げさに見積もっているけどね。アンバーはかなり手練れだから。
まあ、結局戦ってみれば全部はっきりする。
私は鯉口を鳴らして、下段に構える。
下段に構えた状態での長柄の武器で警戒すべきは下半身への攻撃だと思う。なら防ぎやすいほうがいい。
私の場合は避けたほうがいいけど、保険だね。
数瞬睨み合って、初動は全くの同時。
「――ふっ……」
「オォラアァッ!」
穂先と刀身の鈍色が火花に照らされた。
お読み頂きありがとうございます。
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