Function:Semiauto Fire Ⅱ
ちょっとボス強くしすぎてますね、私……。
反省せねば。
「死ぬ死ぬ死ぬっ。本当に過去最高レベルで命の危機ですよ、現状!」
ぶっ壊れたように叫びながら、逃げ回る。
迫り来る触手と魔法。
ポイゾネス・へディオス・マッシュは、多数の触手を伸ばしての物理的殴打と、水属性魔法による遠距離攻撃を並行して行なっている。
魔法に毒が含まれているのは、水魔法が毒魔法に派生するフラグかな……?
そんなこと考えてる場合じゃ無いんだけどさ。
すこぶる状況が悪い。
流石に(少なくともまだ)避けられないことはないけど、それでも数は多い。
触手と魔法が断続的に向かってくるから、攻めるに攻めれない。
多少のダメージは必要経費と割り切って攻撃に意識を総動員した場合、5度攻撃を当てたら、HPが限界になりそう。装備が良くても、私自身の防御が紙レベルなせいで、そう何度も攻撃を食らってはいられない。
『思考加速』はまだ使えない。ここで自棄で使ったとしても、状況は万が一にも良くならない。多少は、攻撃して相手の物理防御力を確かめないと。
ならば、様子見は早めにしておこう。
「――やろう」
一度声に出しながら、私を殺しに来た魔法数発を後ろに下がって、躱す。
回復アイテムには余裕がある。
真っ向から突っ込んで、感覚を確かめよう。
グッと脚に力を込める。
――歩法 滑歩
上体の動きを極限まで減らして、相手に像を結ばせない技。これがAI相手にどこまで効くかはわからないけど、それでも出来る限りのことはしないとね。
「――――」
案の定、大した効果は見込めず、魔法が次々に放たれる。
多分、モンスターが生物の形を取っているか、否か、でAIの動作なんかが違うんだろうね。確か生物モチーフのモンスターには効いたはずだし。
魔法の数は、5。
最初に放ってきたのはもっと多かったから、出血大サービスでもしていたのだろうか。そのまま血溜まりで潰れればよかったものを。
不規則な順序で私に向かってくる。お願いだから、右から順番とかにして。やりにくいったら……。
――歩法 隘路
魔法の間をすり抜けるように走り抜ける。
けれど、一発だけは正面に位置している。
だから――
「『対魔斬』!」
炎のように揺らめく軌道で切り捨てて、一気に身体を倒す。
ポイゾネス・へディオス――ええい! 長い!!――ボスキノコの攻撃ごとの間隔は、2〜4秒。その間に、詰め寄る必要がある。
――歩法 迅雷
一瞬で彼我の距離を零にもっていく。
加速した勢いのままに、一閃。いくつかの触手が斬れ落ちて、地面に溶けるように消えていった。
…………ちょっと不気味な消え方止めてもらっていいですか?
超至近距離であっても、触手攻撃は止まらない。でも、魔法は使ってこないみたいだね。
でも、近すぎて無理が出ているよ。
元々、遠中距離用の攻撃手段で、至近距離を狙えば、それは勿論何処かしらに無理が出る。
それに、私は体術を以て、近距離で動き回っているから、余計に、攻撃は食らいづらい。
袈裟、逆袈裟、横薙ぎ、切り返しを挟んで、上段。
斬って、斬って、斬って、また斬り刻む。
「――ッ」
主だった触手による攻撃ごと斬り飛ばしているとは言え、全ての攻撃を防ぎきれるわけではない。少しずつ身体の節々を掠っていく。
段々と私のHPも減っていって、連撃を始めて20秒程で、3割を失った。
けれど、失った分の収穫はもちろん得ている。
ボスキノコのHPも3割程減っている。
でも、ボスモンスターである以上、何かしらの大技は持っているだろうし、早々に決めないといけないかも知れない。
そんな思考を打ち切るように、触手が2本、私に直撃する軌道を描いて、迫ってくる。
攻撃も継続どころか更に加速したい時に、本当に邪魔だなぁ……。
「円環!」
周囲一帯を薙ぎ払い、もう一度、更に強く地を踏みしめた。
基本的に円環から繋げるとしたら、円環・輪廻だけれど、火力を出したい今は別だ。
一回転することで、遠心力を大きく乗せた一撃。
「――伐刀・二重!」
――斬法 抜刀・二重
抜刀をより強力な一撃に昇華した代わりに、前準備も、後隙も双方大きくなったため、使い所が限られる技。俵昇は殺傷性と真剣じゃないと使えないから困るけど、こっちは純粋に実戦に組み込むのが難しい技だ。相手の目の前で一回転してから攻撃するんだから、使いづらいのは当然だけどね。
速く鋭い横薙ぎは、ボスキノコのHPを大きく削り取る。でも、まだ足りない。
今の攻撃で、HPは5%程減らせたから、後65%無いくらい。
50%まではこのラッシュで無くしてみせる!
トンッ、と軽く地を蹴って、身体の捻りを剣に通す。
「聖刃!」
――斬法 聖刃
身体の捻りを加えた後に、高速三連突きを放つ技。
一撃目と二撃目は軽く、そして三撃目は強く。威力の変調を織り交ぜて放つ連撃。
技名は、恐らく聖柄(三鈷柄)からだと思う。
今回は、鎧通を使うには遠く、箒星を使うには、相手の攻撃の間隔が短すぎる。
威力の大きな技の後隙は大抵大きいのだ。
削れたHPは、3%程。私のHPの減りも中々危険域に近づいてきた。
なら、もっと加速しないとね!
「玲瓏・鐘響!!」
聖刃の三撃目から技を繋げる。峰を殴り抜いて、そのまま振り切る。刀がボスキノコの身体を裂きながら、抜き放たれ、その瞬間私は再度地を蹴った。
「セエアァッ!」
――撃法 金剛
肘打ちを叩きつけて、お互いに一瞬動きが止まる。
そこを縫うのは、剣技では不可能。だから――
「『サンダーボール』」
魔法で対処する。今回は、MPの温存のために『サンダーボール』を選択する。
ボスキノコの残HPは55%。なら後一回で、半分まで切り捨ててやろう。
でも、HP半減によるボスの行動の変調を考えると、隙きの大きい技は使えない。
ここは、隙きの少ない、又は相手との距離を離せる技じゃないと。
「刹那」
――斬法 刹那
最速最短で駆ける突きの一撃。疾風の剣戟バージョンだと思えば良いと思う。
でも、この技は威力的に足りない。現実での対人なら兎も角、ゲームの中でのモンスター相手では必殺になり得ない。なので、もう一発。
「牙壊!!」
――撃法 牙壊
寸勁による攻撃。本来なら内臓に直接衝撃を叩き込んで潰す技だけど、今回はノックバック多めで打ち放つ。その一撃を以て、ボスキノコのHPは半分を切った。
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