森林は鉄火場
エルフの国に着いたので、早速老師さん――アルヴリクさんの元を訪ねる。
前は病院のような大きな建物にいたけど、今はどうなんだろうか?
そこを覗いて……いなかったら、そこら辺のエルフに聞こう。
建物の中へ。
老師さんらしき姿を確認できたので、ウインドウからアイテムを取り出しながら向かう。
「老師さん、今お時間大丈夫でしょうか?」
「んお? おぉ、ラピスの嬢ちゃんか。今日はどうしたのだね」
何かをかいてる途中だったようで、ペンをペン立てに戻しながら振り返る。
対応はしてくれるようだが、作業中であることは事実だろう。手短に行こう。
「少し教えていただきたいことがありまして、こちら情報料の足しにしてください」
「――ほう。ファムラケの亜竜酒か…………。また通な物を知っておる」
「知人のおすすめですよ。老師さんは宴の際色々なお酒を飲んでいらっしゃったので、どうかなと」
「ありがたく頂戴しよう。…………して、知りたいこととは?」
しげしげとお酒の瓶を見つめてから、こちらに向き直る。
かなり受けが良くて結構びっくりしている。
第五の街『ファムラケ』の西側に流れる川に生息する水の亜竜を穀物由来のお酒に漬け込んだって代物らしいんだけど、味は分からない。
視聴者さんの1人がすっごい推してたものだから、例え人を選んでも不味いとは思わないけどさ。
「この森周辺で、性能のいい糸を得る方法って何かありませんか? ユース様にいただいた光霊玉を飾り玉にした帯をつくりたいのですけど……」
「ならば、魔力との相性が良い物か。ちょうど良い奴らが森の北側におるが……………………」
徐に立ち上がり、薬棚の横に設けられた本棚から1冊の本を取り出した。
年季は入っているが、綺麗な装飾がなされたハードカバー。
「ちょいと手伝ってもらえんか?」
「それ自体は吝かではありませんが、詳細は?」
唐突じゃない?
目的地が一緒だったりはするんだろうけども。
その本も地図とかモンスターの情報とかかいてあるんだろうし。
「こいつは森の魔力の状態を記録するものでな、特定の地点でこの本を起動して欲しい。ちょうどそこらは、嬢ちゃんが欲しがってる糸を吐くやつがおってな。ついでにやってくれんか」
「はぁ……。どうやって起動すればいいんですか?」
本を受け取り開いてみる……けど、何か魔法陣が見えた後は数字ばっかりがかかれている。
魔法陣の効果で記録してきた数字がこれらってこと、かな?
「最初にかいてある魔法陣に手を触れて、『起動せよ、記録せよ。秩序の守り手、久遠の魔本』と唱えなさい。魔力は余分に込めずに頼むぞ。場所は今地図をもってこよう」
教えてもらった場所は4か所。
モンスターらしき目標のいる場所もこの辺だから、指標としてみやすくていいね。
それはそれとして、魔力――MPを余分に込めちゃ駄目なのはなんでだろうね?
範囲とか感度とかが変わらないようにかな。記録するならその辺を揃えないとだろうし、使い手の差もでないようにってことなのかな。
まぁ、良いや。
早速行ってみよう。
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目的地まで木々を足場に駆け抜けていく。
行くんだけど…………
「なんか過疎ってない?」
全然モンスターいないんだけど。
何故?
『過疎言うな』
『オーガ狩りまくったからじゃない?』
『オーガがあんなに暴れてたのが異常で、今が普通とか?』
どうなんだろうねぇ。
オーガが異常発生していたのが直りましたっていうのは理解できるけど、ここまで何もいないのが普通とも思えない。
「あと距離どれくらいだろうね?」
マップを開き、現在位置を確認する。
距離としてはまだまだ先。とは言え、私の速度ならば5分もあれば十分に辿り着ける。
ふと、マップのある地点に目が留まる。
「ここさ、気にして無かったけど、何かあるね。森にぽっかり穴が開いてる」
現在位置と最初の目的地との丁度真ん中辺り、丸く森が無い場所がある。
目的地ばかり気にしていて目に入ってなかったのかな。
『割とデカくない?』
『また湖?』
『ギャップ更新にしてはデカい気がする』
「湖とは色が違うね。…………ほら。WJOのマップでは水はうっすく青みがかるんだけど、さっき見せた丸はこの辺の森よりも明るく表記されてるだけで色は青では無いから。あとこの規模のギャップ更新は災害では?」
マップに表示されている色的に湖は違うのはたしか。
ギャップ更新って寿命とかで木が倒れてそこに光が当たるようになって起こるじゃん。丸の直径100mはあるんだけど、それほどの領域木がないの怖いって。狙って焼き畑でもしたりすればいけると思うけど…………老師さんの言い回し的に、この辺のモンスターは人とかみたいな知的生命じゃないと思うんだよね。
「まぁ、行ってみれば分かるか。進行方向は一緒だし、誤差誤差」
――歩法 碧空
と言う訳で、目的地を変更。幹に枝にとどんどん飛び移っていく。
『よく踏み外さないよね』
『着地する場所どうやって見極めてるの?』
そんなこと言われてもねぇ……。
「バランス感覚は結構良い方だし、スキルで足場に出来る場所増えてるしね。あとは単純に視力の問題。遠くの木々もきっちり認識して、飛び移りながら先の先まで道筋を立ててるの」
先んじて考えておくから迷うことも無いし焦って力の加減をミスることも無い。
単純だけど、これが出来ればゲームの中でなら漫画の忍者みたいな移動も可能ってね。
「――なんか、戦ってる? 丁度方向は件の丸の方」
丸い穴まで残り100mを切った辺りだろうか。
結構な音が聞こえる。硬質ながら、金属類とは違う音色。
『ちな俺はモンスターの種類に当たりが付いてる』
『戦ってるって、この森争い多くない?』
『分からん』
『相変わらず肉体性能おかしくない?』
ちゃんと人間の範疇ですとも。
異能力バトルに1人はいる身体能力だけで戦い抜ける化け物とかには到底及ばない、しっかり人間の規格には収まっている。…………筈。
「もう着くよ。『気配遮断』は使ってるけど、バチバチ煩いからバレたら、まぁ乱戦かな」
ちょっと楽しみ。
そのまま木々を足場に走り続ける。
急に視界が開け、今までの比ではない光が飛び込んでくる。
開けた視界に映るのは、花々が咲き乱れる広場。
そこではモンスター同士の争いが巻き起こっていた。
「うわ、きしょ……………………」
その争いが問題なのだ。
方や茶色がかった緑をベースに鮮やかな花を背負い、一対の鎌を振り回す細身のモンスター。高さ2m程。
方や黄と黒で身体を彩り、尻から鋭く太い針を生やして空を飛ぶモンスター。高さ1.2m程。
ざっくり言うと、でっかいカマキリとでっかいハチとの戦いです。本当に死んでください。
『草』
『なんとなく分かってた』
『じゃあ、糸は蜘蛛由来っすね。頑張れ』
もう心折れそうなんだけど。
帰っていい?
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。




