新装備
実は二月経ってる。
更新遅いですね。
「今日も今日とて、配信やっていくぞぉ!」
『だから平日の昼間は止めいっ!』
『昼休みじゃ見きれないでしょうが!!』
『自宅警備員の私、低みの見物』
『テンション高ぇ……』
『一人悲しみが深い』
気合十分、殺意十分。テンションは……振り切れている!
コメント欄が怒り心頭のコメントで埋まりそうになる。
社会人の人とか、まだ夏休みに入っていない大学生とかも見てくれているのかな? 何にせよ、怒りのコメントに対する言葉じゃないかも知れないけど、嬉しい限りだ。
「昨日の夜に、ナフトールさんから連絡があってさ、頼んでた装備出来たって!」
私の今日のテンションはかなりヤバい。私のことを着せ替え人形にしている日向(ついでに琥珀)くらい思考がぶっ飛んでいる。
気をつけないと、何かやらかす気がする。……けど、取り敢えず装備受け取るまではこのままでいいや!
『装備、どうなったんだろうな』
『若干忘れてたわ』
『現状のトップ生産職への依頼とか値段どうなるんだ?』
装備忘れかけていたのは私もそう。
割と私は服装に無頓着な人間だ。というか我が家で一番服に興味がないと言っても過言ではない。お父さんも無い方だけど、前に「瑠璃はもうちょっと格好に気を使いなさい」って言われたよ。……ははっ。
それはどうでも良いんだけど、
「ナフトールさん、服飾系トップなの?」
そんなの聞いていないです。いや、本人的には自分からは言いづらいか。
そもそも、生産職の実力ってどう比べたら良いの? 同じ素材でどちらが、より性能の高い装備を作れるかで競えば良いのかな……? 何というか非常に面倒な比較方法だね。
『トップレベルではあるが、単純比較出来ん』
『腕は確かだから良くね?』
『些末な問題、ってやつ?』
『とりま、所持金晒せや』
まあ、うん。そりゃ比較できないよね。でも、腕は良いんだ。いや、β版からやっているなら、効率的なスキルレベル上げの方法とか知ってるだろうし、自ずと性能も上がるのかな。あと、PSの問題もあるか。
というか、恫喝じみた人いないっ?!
「今の所持金は、245,326ベルグ。ナフトールさんとの契約だと――」
システムウインドウから契約書の内容を確認する。見れる状態にはあっても、こういうのあんまり見ないんだよね……。
「ナフトールさんの、任意…………?」
『おおっと、これは』
『まさかのラピス借金?』
『このゲーム借金制度あるん?』
『プレイヤー間でなら、一応。する奴いないけど』
『契約書はしっかりと目を通しましょう』
『迂闊だったな』
あれ? これもしかしなくてもヤバい? いやいや、ナフトールさんみたいな人がそんな法外な(ゲームでの法外の値段てどれくらいなんだろう)値段にする訳……、人は見かけとかじゃないし、殆ど関わりは無いけどさ。
「ま、まあね……? 見かけに寄らず警戒心強めのアンバーが懐いてる、し? 大丈夫でしょ………………」
大丈夫だと思う。大丈夫……だよね?
もしもやばかったら今日も金策に走り回ろう。それしか無い。
私は、身の毛がよだつ感覚を覚えながら(なんでVRで感じるの?)、ナフトールさんとの待ち合わせ場所へと急いだ。
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「私ってそんな恐ろしい人に見えるの?」
「いや、ははは……」
開口一番、ナフトールさんは不服げにこちらを睨んでいる。
ナフトールさんが借り受けている鍛冶場(賃貸のようなシステムが存在するんだとか)に、訪れた私を待っていたのは、ナフトールさんただ一人(ジト目付き)。
この件に関しては全面的に私が悪いが、上から睨まれるの割と怖いので、止めて欲しい。
もう乾いた笑みを浮かべる他ない。弁明の余地など無いのだから。
「そんなこと言う人からは、盛大にふんだくります」
「はい、すみません……」
声が生気が籠もっていない平坦な感じでこちらの恐怖を的確に掻き立ててくる。
普段穏やかな人が怒ると怖いって、本当なんだなぁ……。(現実逃避)
「――まあ、今回は不問としましょう。ラピスさんの新装備はそこに飾ってあるから、もう被せてある布取っちゃっていいわ」
何とか許しを得られたのか、示された部屋の角には、布で覆われたトルソーらしきものがあった。
あれを取っ払って、見ろということだろう。
「い、いくよ……?」
『若干手震えてて草』
『ラピスが珍しく緊張している、だと?!』
『wktkが止まらねえ』
布を掴んで、一拍深呼吸を挟む。
一気に力を込めて、被せ布を取る。
まず目に着いたのは、
大きく広がった裾を持つ丈の長い羽織。雪原のような白色に、袖先の方に水浅葱色とでも言うべき色のグラデーションが入っている。控えめな色だけど、良く馴染んでいると思う。
羽織の下には、洋服のような出で立ちのものがあった。藍色のブレザーのような服。背後にはフードとフードの近くにマフラーのような、30cmほどの布が二枚ある。けれど、首元は覆っていないため、フードの装飾としての立ち位置なのだろう。
視線を下に向けると、そこにあるのは袴。深縹に染められたそれには、白藍色の外帯が付けられていた。基本的に打刀を腰に差す時には袴の帯の中に入れるんだけど、外帯(甲冑とかつける時に使う刀を差す用の帯)を使うことで、袴の帯に差した時よりも、鞘を動かしやすい。その為、太刀上流では鍛錬でも外帯を用いる。私も、使い慣れたものに近づけたかったから、頼んでおいたのだ。
最期に、籠手と脛当て。
ボスであったジャイアントホーンラビットの肥大化した爪を用いて制作してもらったそれらは、特有の光沢を放っている。強いて言うなら、オスミウム結晶が近い……かな? 青味がかった銀色がそれっぽい。
全体的に繊細な感じに仕上がっている。それでいて、無骨さも感じられる。
相反する性質を帯びた一品になっている。
「銘は、『蒼狗装束・碧兎』。自身の仕事ながら、中々の品になったと思うわ」
言葉を失う私にナフトールさんは、ドヤ顔付きで告げる。
これは、凄い品を作って貰った。とても綺麗で、私にこれを纏うだけの実力があるかと言われれば、無いと言わざるを得ない。
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。
蒼狗装束の具体的なイメージに関しては、
FG○の沖田 総○さんと、七つの魔剣が支○するのナナ○さんの服装を混ぜた感じです。
両方が通じる人は、果たして何人いるのやら……。




