精霊は踊る
申し訳ないのですが、かなり短いです。
「老師、お願いいたします」
前線指揮を執るらしいスヴァルドさんの言葉に、老師さんは首肯を一つ。
数歩前に出る。
「――『理を支えし者、揺蕩いし水の精霊、流転せし風の精霊、普遍たる土の精霊よ。理に座す御方、世を照らす極光よ。我が声を聞き給え』」
老師さんから青、緑、茶、白のMPが烈火の如く立ち昇る。
詠唱魔法……では無さそう。あれは魔法ごとに定められた詠唱によって、魔法の威力を上げるものだけど、WJOにおいて現状複数属性が混じった魔法は確認されていない。
二次スキルに溶岩とか吹雪とかはあるけど、あれは溶岩属性と吹雪属性とでも言うべきもので、複合元とは別だ。
まぁ、老師さんの方がプレイヤーのあらゆる魔法使いよりも熟達しているだろうし、私程度の知識じゃあ参考にさえならない。
これこの場にサニーいたら大騒ぎだろうね。
「あれは『精霊魔法』という力だ。精霊の力を借り受けることで自身の力量を超えた魔法を行使できる。その分魔力の消耗は激しく、己の力をあまりにも超えた力を振るうと反動が来るがな」
朗々と続く老師さんの詠唱を邪魔しないようにスヴァルドさんが教えてくれる。
んだけど、非常に嫌な予感がする。
それは3割程の勘とスヴァルドさんの以前あった時よりも鋭い視線。
睨むように老師さんのことを見ている。
ねぇ、「理に座す御方、世を照らす極光」ってなんか凄い思い当たる節がいるんだよね。
どっかの王様じゃないのかな?
「『我が名、アルヴリク・フォン・アドラーを以て命ず。断て『不在絶死の刃』』」
老師さんの頭上、いつの間にか収斂されていたMPが放たれた。
それは私の認識を振り切るギリギリまで加速して、オーガの根城を斬り裂いた。
……………………え、っと、マジで言ってる……?
なんか建造物が斜めに斬られて倒壊していってるんだけど。
えぇ………………?
「――ガフッ」
視線を向ける。
崩れ落ちる老師さんに手を伸ばす。
が、その前に周囲のエルフの人達が支える。
彼のHPバーは殆どが暗転しており、正に風前の灯火。
すぐに手持ちの中で一番効果量の多いポーションを取り出し、付近のエルフに預ける。
スヴァルドさんが剣を抜いた。
そうだ、今はそれどころじゃない。
「最速でお届けしろ。決して殺すな。――総員、抜剣」
視線が向けられる。
抜刀しつつ『ブレイバー』の面々と頷きあう。
全員で走り出す。
頭上を魔法が通り抜けていき、半壊状態のオーガの根城に叩き込まれる。
――だが、その寸前で巨大な壁が展開される。
老師さんが命がけで作った隙だ。
ならば一秒たりとも無駄には出来ない。
少数のエルフがオーガの根城の近くで先んじて潜伏、老師さんの攻撃の直後を狙って不意打ちを行う予定。
だが、彼らでは大物は殺せないとの事。あくまで斥候なんだろう。
「異邦人の皆さま、大物の正面任せてよろしいか」
「承りました。ラピスさん、ヘイトをお願いしても大丈夫ですか?」
前以て決めていた役回り。
その再度の確認。
死んだら終わりのエルフの面々を真正面には立たせられない。
『ブレイバー』は物理アタッカー2名に攻撃と支援の魔法使いがそれぞれの4人。
タンクは基本カレジさんが担う。
その状態なら私がヘイトを取り続けて、暴れるのが最適解。
確認したところ単純火力ではカレジさんの方が上。
オーガのボスは身長が高く、弱点を狙いにくいので私よりも平均的に火力が出せる。
それに私とは違い、連携して戦う前提の面々だ。
無理に私を組み込むよりも独立させて、私単独とパーティーでの連携の形の方が強い筈だ。
出現した壁は魔法によるものだろうから、いずれ消える筈。
なら、そっちは放置してボスに掛かり切りでいいだろう。
まずは一撃を入れて、注意を釘付けにする。
それだけを考えろ。
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