微かな兆候
投稿日ミスりましたね……。
気がつくのが遅すぎた。
頭に鋭い痛みが走る。
ズキズキと何度も私を刺している。
仄かに山肌に懐かしい景色が被る。
あれは何だろう。恐らく、人影。
殆ど見えていないはずなのに、少し懐かしさを覚える。
「――グッ」
不意に、衝撃が襲う。ゴーレムからの一撃。
HPがガリッと一気に持っていかれる。
空中で強引に身体を捻って、体勢を整える。
何故、急に頭痛が起こっているのかまるで分からない。
私は基本的に強靭な肉体を持っている。だから、体調を崩すことなどそうそう無いのだが。最期に風邪引いたのなんて、5年前だし。
本当に、どうして…………? 知りもしないことが頭に浮かんだの?
『どしたどした』
『HPの減り方エグいな。流石紙防御』
『急に動きが止まったぞ』
敵から離れたから、コメントをチラ見する余裕がある。やっぱり皆んなから見ても止まってたのね、私。
あと、紙防御って何だ。紙防御って。そうだよ、今ので5割飛んだわ、こん畜生め。
「……ん、大丈夫」
頭痛は今は治まっている。なら、再発する前に――ぶっ潰さんないと。勝敗を体調のせいにする気はないけど、それでも屈辱的じゃん?
「ちょっと、ガチで殺ってくるわ」
――歩法 嚆矢
ゼロからトップまでの急激な加速。でも、まだ足りない。敵の数は依然4体のまま。それを最速で片付けないといけない。
「――――」
こちらに意識(ゴーレムにあるのかは兎も角)を向けてくる。攻撃が振るわれるのは確定している。
これ以上、攻撃を食らうわけにはいかない。
食らったら死が確定する。
――歩法・撃法混合 風蝕
ダンッ、と強く地を踏みしめて、急加速して距離を詰める。
「オオオオオォォオオッッーー!!」
――斬法 伐刀
全霊の一撃。元々ダメージを与えていたゴーレムの脚に銀線が奔る。けれども、まだ破壊はできていない。
攻撃を受けたゴーレムが横薙ぎを放とうと、体重を先程攻撃を加えた足の方に掛けた。
「廻踵!」
そこを攻める。瞬間的に身体を回して、回し蹴りを叩き込む。
ピシリ、と衝撃に耐えかねて、ゴーレムの脚が砕け、上下に離れる。
ずれ落ちるゴーレムの身体。
地に達する前に、私は脇を駆け抜けた。
「――――ッ」
振るわれる両腕。重ね合わせて、質量を増加させた一撃。これは本当に食らったら即死だね。食らうつもりはそうそうないが。
――歩法 迅雷
身体を倒して、攻撃が当たるまでの時間を伸ばすと同時に、加速することで振り下ろしをやり過ごす。
「箒星!!」
ほんの少しだけ突き刺さり、その状態で停止する。けれど、抜け落ちる気配もない。
突き刺したまま、手を離す。
箒星は、攻撃した瞬間前に出ている脚は右足。
だからこそ、距離を稼げるのは左足。
「ハアアアッ……!」
――撃法 膝押
膝撃によって至近距離の敵の甲冑などに衝撃を与えて、体勢を崩すことを目的とされた技。
その衝撃の一切を、紺碧正近の柄頭に集中させて、強引に刀をゴーレム内部に叩き込む。
本来なら、刀が心配で絶対に出来ない方法。でも、今私が戦っているのは、ゲームの世界だ。多少の無茶は効くんだよね。それも私が当初考えていた以上に、さ。
瞬間的に後退して、システムウインドウを開く。
刀からガントレットに武器を変える。
私の両手を黒鉄が包むと同時に、ゴーレムに深々と突き刺さっていた刀は消滅した。(私のインベントリに戻った)
すかさず、距離を一気に詰める。
刀を叩き込まれたゴーレムを守るかのように、未だ動けるゴーレム2体が立ちはだかる。
でも、コイツらに用は無い。今は、だけどね。
取り敢えず――
「邪魔だよ」
――歩法 隘路
敵影をくぐり抜ける。
――歩法 迅雷
加速を施して、距離を零にもっていく。
「セエアァァッーー!!」
――撃法 砕氷
刀を強引に突き刺した結果生じた亀裂。そこを正確に撃ち抜いた。
みしりと軋みを上げる。亀裂が大きく広がると同時に、ゴーレムのHPが大きく削れる。
突き出した右腕を引き絞る。身体に捻りを加えて、打撃を開始する。
「繚、乱!」
――撃法 繚乱
両腕による高速5連撃の打撃。自身と相手の姿勢や、距離によって攻撃する位置を細かく変更する、まさしく入り乱れた攻撃。それによって、強引にHPを削り切る。
残りは、実質的に2体だけ。
残党は揃って、こちらに攻撃を仕掛ける。戦いにおいて頭数というのは大事だから、その行動は正解だよ。
……現実の戦いなら、ね?
「『サンダーアロー』」
一体を足止めする。魔法によって減少するHPは、1割にも満たない。やっぱり私の育てていないINTでは火力が足りない。けど、今は足止めが出来れば、それで十分。
「――!」
もう一体の攻撃を躱して、強引に詰め寄る。
「昇抉!」
――撃法 昇抉
超至近距離から放つアッパーカット。敵の手首や顎やらを打ち据える技。
一体のゴーレムの頭(に該当する箇所)をかち上げて、そのまま反り返った頭の上に飛び乗る。
「風蝕」
――歩法・撃法混合 風蝕
強引に踏みつけて、もう一体のもとへと飛び込む。
着地点は勿論、ゴーレムの上。
そこに到達する瞬間に、更に一歩脚を踏みしめた。
「――ふぅっ…………!」
――撃法 降魔
全霊の踏み込みによって、地に伏せる。ゴーレムの一部が陥没して、脚が嵌まり込みそうになる。
「あっぶなぁ……」
なんとか引っ込抜いて、バックジャンプ。
ダメージに怯むこと無く迫りくるゴーレム達。懲りないと言うか、懲りるというパターンが無いと言うか……。そっちの方が基本的に楽だから良いけど。
「『サンダーボール』」
先んじて、魔法で牽制。今度は、敵の防御反応を活かして、弾速の(比較的)遅い『サンダーボール』を使用する。『サンダーアロー』に比べて威力や速度は無いけど、その分反応しやすいから足止めには向いている……はず。
一体のゴーレムが被弾する時には、もう一体は攻撃の体勢に移っていた。あいも変わらずの踏み降ろし。次のゴーレム種ではストンプ(踏みつけ)とか希望する。
「そいっ……!」
――撃法 流転
軽く投げ飛ばして、もう一体に向き直る。
振るわれる横薙ぎ。でも、バックジャンプすると投げたゴーレムとかち合うことになるから、回避するなら……上だね。
「神風!!」
――撃法 神風
空中での一回転を経ての踵落とし。横方向の回避と攻撃を同時に行えるから、何かとこの技は重宝する。
踵を風蝕の影響で罅だらけの頭にめり込ませて、殺し切る。
…………コイツら生命体なのかな……?
最後と振り返り、未だ流転を食らってから動きの無いゴーレムを見ると、真っ直ぐに右腕が迫っていた。
「――チッ……」
油断した。横薙ぎなどの面攻撃しかしてこなかったから、パンチは完全に頭から抜けてたよ。
これは防ぎきれない。
かと言って、直撃するわけにもいかない。
ならば、多少は犠牲を出さないと、かな。
「――ラアァァアッ!!」
――撃法 膝押
半ば強引に膝蹴りを振り抜く。脚への衝撃に耐えかねてHPの1割が抉れる。けれど、死に比べれば、安いものだ。
一本脚で踏みきって、懐に入り込む。
構えるのは、両腕。
「繚乱!」
速攻5連。
拳を振り切って、残心。
最後のゴーレムはポリゴンへと還った。
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私は、その後も金策に励んで、最終的に一日で、10万ベルグ近くを稼ぎきった。
でも、頭の片隅には一つの疑問が残っていた。
どうして、あの時、今は亡き彼の事が浮かんだろう、と。
段々と、ね。
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。




