タンクってこれでいいのだろうか?
まずはザガンのヘイトを私達に向けて、攻撃の隙をつくりだすところから始めないと。
真面目な話、攻撃しながら防御も並行するのは非常に非効率だ。
加えて、火力面的にこの場の近接アタッカーでも上の方の私が防御担当となると、私達が攻撃の全てを叩き落さないと一体全体何分かかるんだと。
サニー含む遠距離組は次の一合は参加できなそうなのも痛いね。
ただそれ以上に気になる点が1つ。
「3カウント後、各自突撃。ラピスは魔法優先、次点で足止めで頼む。触手は俺達だけでも十分だ」
「了解。…………ハーフェン君、まだいける?」
アルゴルさんはVITが高いようでしばしば攻撃を受け止めているのは見て取れる。
だが、ハーフェン君はVITをさして鍛えていない。だからすべての攻撃を避けるか流す必要性がある。STRはそこそこ鍛えてはいるみたいだけど、身長とか武器のリーチもあって強く弾くってのは比較的苦手。
だから一番消耗が激しい筈だ。
私みたいに脳死で突ってぶった斬るとかしていられない立場が、普段以上に精神に負荷をかけてもいる筈。
駄目そうでも私が動けばいいんだけど…………
「――いけます。昔よりも体力あるんですから」
であった頃のハーフェン君、本当に体力無かったからなぁ。
昔の認識のままだなぁ。……琥珀相手にもその節があるし、後で情報のアップデートをしないとな。
「いくぞ。3、2――」
各自武器を構えて、蹴り足に力を込める。
先陣を切るのは私だ。
触手を掻い潜り、足の1本でもいいから駄目にしたいところだ。
出来なくても、魔法を最速で止めるためには刀の間合いまでは詰めないとだから、結局接近は必須。
「0!」
――歩法 迅雷
全身を倒して、重力さえも走力に変えて疾走する。
まず反応したのはフルカスだが、こちらへのアプローチは特に無し。
一拍遅れてザガンの視線がこっちに向いて、MPが収斂される。
フルカスには魔法の使用権が無いとみていいか?
いや、まだ断定は駄目だ。
フルカスはお世辞にも魔法使用が達者とは言えなかった。
反応は出来ても行動が遅れた線はまだ残っている。
放たれた魔法は『ダークネスブレイズ』が3発、6振り。
この程度ならばどうとでもなる。
「『散魔対斬』」
放たれた闇剣を雑に回避しつつ前へ。
最後の1振りを斬り飛ばして、その先に迫る触手を見据える。
6本すべてがフルカスの制御下にあるそれらは未だ単調だ。
ならば、突破は容易。
ギリギリを狙って回避して、彼我の距離は一足一刀。
だが、敵の身体は既に退避行動に出ている。
ザガンの表情から見てフルカスの行動。やっぱり反射はフルカスの方が良いな。
「『スパークピラー』」
背後に雷の柱を設けて、退路を塞ぐ。
これで一瞬でも時間を稼げれば儲けもの。
そうしている間にも触手4本はアルゴルさんとハーフェン君のもとへ。
ついでにザガン主導らしき範囲攻撃魔法が発現。
「『散魔対斬』」
2人を巻き込む広範囲の魔法は看過できない。
ここは消し去る以外に手は無かった。
そこを狙うは残り2本の触手。
触手の数を認識していなかったら良い手だね。
――歩法 閃刃
『散魔対斬』の勢いを移動に転用。触手から逃れる。
もう少し触手の数が多くて、密度が高ければ危なかった。
まぁ、ただその程度だ。
「『練魔纏斬』」
移動した先はザガン・フルカスの右側面。
踏み込み、刃を翻す。
――斬法 伐刀
右後ろ足に全力の横薙ぎを放って、機動力を削ぎ落す。
「もういっちょッ」
――歩法 碧空
体勢が崩れた敵の馬の背を踏んで、軽く跳躍する。
「『練魔纏斬』」
――斬法 村雨
背後から触手の右側の付け根に刃を振り下ろす。
フルカスは敵の背後から見た時に左側に頭が存在する。
だから、身体の右側は視界に収めにくい。
だからこその背後からの攻撃。
ザガンではこれには反応できないし、フルカスが対応するにもこっちの位置の認識が困難。
――でも、フルカスは強引に防いできたね。
無理やり触手自体を盾にして根本から切り落とされるのを防いできた。
状況を少しでもマシにするためだね。
しかも、すぐに短くなった触手を一気に伸ばして私への攻撃。
総じていい反応だ。
とは言え、それはまぁ予想通り。
バックジャンプして全身の力を抜いてダメージを抑え込む。
HPは2割程持っていかれたけど、これで厄介な触手を上に持っていけた。
「GO!!」
私が着地する前に響いたカレジさんの号令。
アタッカー達が一気に加速した。
魔法を防げるように、私も距離を詰めなおすか。
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