虫
今回で一応一章の終わりです。
章のこと気にした人が一体何人いたことか。
まあ、作者も大概ですが。
「――めっちゃ虫いるんだけどぉ!!」
私の悲鳴じみた叫びが森に響き渡る。
しかも、数匹の虫がこっちに反応したし!
羽音凄いぃ……。
「うわやったよ、この子。――あ、自分でおびき寄せたんだからガンバ、ラピス」
「お姉の虫嫌い、年々悪化してない?」
「虫が嫌になるエピソードが増えるからじゃね?」
あの二人は、こっちの様子見て楽しんでるしっ!!
敵は、3。
内訳は、クモ1のハチ2。
こいつら自然界じゃ敵だろうに、何仲良く手を組んでるんだか!
『ジャイアントスパイダー Lv.13
属性:物理・斬撃 毒 』
はい、こっちも毒付きですよ。そして、噛みつき攻撃ね。
高さは、40cm位。要はキモい。
距離は5mを切った。そろそろ殺らないと。
――歩法 嚆矢
ゼロから一気に加速する。
でも、敵に向かってじゃない。すぐ横に生えている木――多分広葉樹――に向かう。
――歩法 碧空
人体や木などの周囲のものを足場にして、空中に飛ぶ技。
木々を飛び回り、敵の上空に位置取る。
「――風蝕ッ!!」
――歩法・撃法混合 風蝕
そのまま斜め下に踏み切って、一匹のハチに上空からの蹴り+地を抉る踏み込みをプレゼント。
頭に直接叩き込んだ。
ぐしゃりと気色悪い音が響いたときには、既に私は上空に戻っていた。
残されたハチとクモの視線が木々を飛び交う私に向けられた。
その瞬間、私は再度風蝕を、今度は木を足場に放っていた。
「箒星っ」
自重と踏み込みのエネルギーの一切を鋒に収束して、クモを貫き殺す。
「――――ギッ」
断末魔らしきもの(クモって鳴き声みたいなのあるのかな?)をあげて、そのまま消滅。
残り一体のハチは果敢にもその不快な羽音を目一杯響かせて、こっちに針を向けて突撃してくる。
速度はなかなか。でも、まだ遅い。
「『サンダーアロー』!」
新しく覚えた『サンダーボール』よりも速い魔法で迎撃。
一瞬、動きを止める。その間に私は紺碧正近を鞘に落とし込んだ。
正直、一秒でも早く視界から消えてほしい。けど、近づきたくは無い。
だから、自分が殺しきれる限界まで離れたところから最速で。
「瞬雷!!」
凛、と鈴の音が一拍。
腹の真ん中辺りで上下に分断されたハチは、ポリゴンへと還った。
『『刀』のスキルレベルが上がりました』
『『敏捷強化』のスキルレベルが上がりました』
『『走破』のスキルレベルが上がりました』
やっっと終わったね。
一人で複数体の相手をするのは苦手なのに、更に苦手な存在(それも大きい)と戦うのは、流石に辛い。
基本的に対人戦闘しかしてこなかったせいで……。
……それにしても、
「手伝ってくれても良くない?」
今の戦闘で攻撃を一切していないサニーとアンバーに文句を言う。
さらっと、離れた所にいるし!
「呼び寄せたの、ラピスだし」
「私達も出来れば相手したくないしね」
いや、うん。事実だけど、何か納得行かない。
特にサニーは。
「アンバーはともかくさ、サニーは虫割と大丈夫だったと思うけど。……それに火とか虫に効きやすそう」
「普通のサイズなら問題ない!……が、奴らデカくね?」
「ついでに魔法は『火魔法』が一番効きやすいね」
結論、皆んな虫の相手は嫌だ。という訳だね。
うん、もう帰ろうよ。
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「――んじゃ、今日の配信は終わりってことで」
「見てくださり、ありがとうございました」
時刻は17時前、サニーと並んで、締めの挨拶をする。
アンバー? あの子配信者じゃないからね、これは私達ですべきことだろう。
『乙』
『次の配信は?』
『もっとやって』
コメ欄は、若干過疎ってきた。今日は私もサニーもあんまりコメント拾わなかったからかな……。
取り敢えず、質問には答えとかないと。
ゲームの時間は、明らかに多いからこれ以上増やすのは、ね。
「サニーは明日も配信するの?」
「――ん? ラピス約束忘れた?」
約束? そんなのあったっけな……。WJOの内でも一応携帯端末のメールとかは確認できるので、早速見よう。
「何時頃したっけ?」
「……月初め」
本当に忘れていやがった。みたいな感じのジト目が突き刺さる。
……うん、忘れてる私が悪いな!
それっぽいのを探して、内容を確認する。
ええっと…………、内容をまとめると(色々無駄話が多かった)、夏休みの始めのうちに、ショッピングモールに行こう、と。
「いや、あのさ、日にちの指定がない約束を急に言われても困るんだけど」
「今決めたから、問題ないな!」
「問題しかねぇ……」
そこまで話して、相変わらずのサニーの様子に呆れている私に、サニーとは真逆の方向から注がれる視線が一条。……視線だから、二条かも。
「いいなぁ……。行きたい」
「アンバーは明日稽古でしょうに」
「分かってるよう…………」
割と本気でしょぼくれてるね。しょうがない、特効薬を使おう。
アンバーの耳に顔を寄せて、配信に拾われないように小声で、
「湊君、明日来るってよ?」
「――じゃあ行かない」
特効薬は本当によく効くね。
湊君。彼こそが、アンバーが密かに(本人以外にはバレてる)思いを寄せる子である。
小柄な子で、お互いの苦労話を聞き合っているうちに……ということみたい。
顔真っ赤にして、可愛いなあ。しかも、即答にしても早いな。
「ラピス、血は争えんな」
「そんな昔を懐かしむような顔されても…………」
どうせ、私の初恋のこととか考えてんでしょうに。
何年経っても、からかって来やがって。
配信始めたての頃、視聴者さんの反応で一喜一憂してたことでも、バラしてやろうかな……。
『なになに、どゆこと?』
『話が見えんな』
『ラピス「記憶力良いほうよ」<ーこれ本気で言ってた?』
『言ってやるな』
あ、視聴者さん置き去りにしてた。
そうして、すぐに配信を切ってもらおうとした私よりも、数瞬サニーの方が早く動き出した。
こういう些細なことで経験の差が出るね。
「ラピスの初恋について、懐かしん」
「――はい、終わりっ。配信切って!」
感心した私が馬鹿だった。
サニーはその後すぐに配信を切った。
……とんでもなく不満げだったけど。
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。




