墓標
装備に関して一頻り騒いだ後、探索に出る前に冒険者ギルドを訪れる。
「出来れば、周辺のマップデータと出現モンスターの概要が知りたいね」
『その辺だと現状、情報全然無いからな』
『第七まで行けてる奴、多分プレイヤーの1%とかだぞ』
『しかも紙耐久のソロ』
『↑そう聞くとヤバイ奴で草』
ヤバイ奴とか言うな。
否定しきれないだろ。
「硝煙塗れの戦場で歩兵が存在するのが現代だよ? それに比べればゲームのソロ程度危ない要素無いから」
本当に死ぬ事が無くとも、私は銃弾の雨の中、歩兵として戦いたくはない。
本当に、自衛隊員の皆様には頭が下がる。
護国の為に、真っ先に戦うとかは無理だね。
身近な人以外を守る為に命を賭けたりは出来ないな。
まぁ、日本は攻め込まれたりとかは特に無いから、あの方々のメイン活動災害対策に見えかけてるけど。
それはそれで、本当に立派な行いではある。
閑話休題。
最初受付に行ったが、そこで視聴者さん達と話すと邪魔なので端っこに除ける。
受付の人(筋骨隆々の仙人みたいな顔の男性だった)に、色々聞いたところーー
「北側は、サバナの続きで横向きに流れる大きな川があって、そこにボスがいる。西側はサバナよりも砂漠とか寄りで、墓地がある。東側には狩猟系の村、か…………。皆んなはどこが見たい?」
北側はどうせ行く。
まだレベル的に厳しそうだし、暫く先だと思う。
個人的に行きたいのは、墓地の方。
村的なところは、前にドワーフの集落行ったし。
あと、墓地ってゲーム的に何かありそう。
……すっごい罰当たりな思考だな。
アンケートも投下。
はてさてどうなるかな?
『狩猟民族はちょっと気になる』
『墓地かな。ゲームあるあるのイベントありそう』
『墓地派』
何分と経って無いけど、一旦ここまでにする。
西側7割、東側3割ってところか。
じゃあ、西で。
「西側優勢だし、西側エリアでクリアできるクエスト受けてから行こうか」
消耗品とかは十分にあるし、クエスト受けたら直行で良いね。
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道の両脇の露店達を流し目に見ながら、西側エリアに向けて歩いていく。
「サバナ地帯の集落とかって、実際はどんな生活しているんだろうね? 狩猟中心な何となくイメージなんだけどさ」
この街は、農耕と畜産になるのかな?
と言うか、狩猟するにはモンスター大分強くなってるけど、街の人のレベルとかってどうなってるんだろうね?
『なんか分かる。鳥とか罠使って』
『めっちゃ原始的なものだけで、罠成立させるイメージ』
偶に動画見るよね。
なんか、鍋蓋みたいなの使った鳥用の落とし穴みたいなのとか。
確か、イメージにいるような鳥は東側エリアに出現する筈で、西側エリアにはいないらしい。
まぁ、今度行こうかな。
「ーーもし、異邦のお方」
「はい?」
街の門の程近く、右側より声を掛けられた。
声音は、お年を召した女性のそれ。
目を向けると、杖を付いて、スカーフのようなものを巻いた白髪の女性がそこにいた。
左手に杖を、右手に花束を緩く握っている。
「カタコンベの方へと向かわれるのですか?」
「カタコンベとはこの先にある大きな墓地のことですよね? でしたら、これから行く予定です」
カタコンベって言い方、英語では無いね。
イタリアだかドイツだかの言い方だったかな?
「お願いがございます」
「まず話を聞かせてください。残念ながら、余り出来ることの幅が広くないもので」
「ええ。私をカタコンベに連れていっていただきたいのです。夫の命日なのですが、私ではモンスターの類いになす術が無く…………」
命日、ね。
連れて行ってあげたい。
とは、思うけどーー
「私は単独での戦闘が主で、誰かを守りながらの戦いは不得手です。安全が保障出来ません」
「ーー構いません。構うものですか。この歳になると、脚が動かなくなってきましてね。あと何度行けるか、分からないのです」
強い目だ。
同時に寂しい目だった。
安全性は決して高いとは言えない。でも、少し分かるから。
「……分かりました。努力は致しますが、危険性は十分にあります。ご注意を」
「ええ、お願いしますね」
仕方がない。
ここで見捨てたら笑われちゃうし、自分を許せなくなりそうだ。
まあ、私も花は供えたくはなるんだ。
だから、全力で届ける。
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。




