序章:ゴブリン兵 Ⅴ
体重すら上乗せした戦斧による地嵐がホブゴブリンの背中に叩きつけられる。
それを成したのは勿論、アンバーだ。
「遅かったね」
「一人で突っ切っといて何を言うか。まあ、後1分位で皆きちゃうよ?」
ありゃ、そしたら大混雑だな。
なら――
「早めに蹴散らさないとね」
「独り占めならぬ二人占めって? ハーフェンすぐ来るよ」
「じゃあ、三人だね」
――歩法 迅雷
馬鹿な話もそこそこにホブゴブリンを本気で仕留めにかかる。
「――――!!」
「オオオオオッ!!」
ゴブリンとアンバーは共に裂波の気合を以て、得物を振るう。
正面衝突の轟音が耳朶を打つ。
「『練魔纏斬』ッ、ハァァ……!!」
――斬法 箒星
アンバーが攻撃は止める。ならば私がするべきは一切の防御を捨てて、一撃でも多く斬撃を浴びせることだ。
アンバーの真横を一気に走って、腹部に全力の突きを見舞う。
まだ終わりじゃない。
突きを終えた瞬間に身体を止めずに、旋回を始める。
「オオォオッッ!」
――斬法 玲瓏・撞響
峰を拳で殴って、一気に加速させる。腹をかっさばいて、そのエネルギーのままに一歩退く。
「――――」
「――遅れました! フッ……!」
――斬法 流水
アンバーが戦斧を振りかぶったところに、割り込んでホブゴブリンの金棒を逸らす。
ギリギリで来たのに、いい仕事をする。
「『フェルスラッシャー』ッッ――!!」
「『練魔纏斬』――伐刀!!」
前後両面から、威力重視の横薙ぎを叩き込む。
『三人、前衛組が着く! 独占はそこまでな。私達も2分以内にそっち行く。……その前に雑魚狩りするけど』
「了解」
少しだけ集中をホブゴブリンから逸らす。
遠距離組は雑魚狩りとかをしてくれているみたいだから殆どいないかもだけど、結構な数のプレイヤーがこっちに走ってくる。
――斬法 流水・瀑布
流し、地面に放る。
ホブゴブリンの馬鹿力に任せた一撃は地面とぶつかって、大量の土埃が舞い上がる。
「そこだぁ……!!」
「通れ」
妹たちが先程私が斬り付けた膝裏へそれぞれ攻撃する。
がくり、とホブゴブリンの身体が落ちる。
「『ロア・ストライク』――!」
一人前衛組の中でも一際速い。
大剣に軽装。銀髪が揺れる。
「いやぁ、遅れた遅れた。流石と言うべきかい?」
「カレジさん、やっぱり動き良いですね。太刀上流に入りません?」
「謹んでお断りするよ。僕が振れるのは直剣だけだし」
ちぇ……、かなり動きいいからちょっと歩法とか使ってみてほしいのに。
「もう皆現着さ。悪いけど、一応ギルドリーダーとして君たちだけに手柄を全部持っていかれるのは避けたいからね。横から失礼するよ」
「そう簡単に出来るとは思わないで下さいね? 太刀上を舐めると痛い目見ますよ?」
「なに、全力でやるさ。――『魔宝石開放:黄昏の刻』『魔装剣』『剣磨』」
カレジさんの大剣の柄の宝石が黄昏色に輝く。
その光はたちまち彼の身体を覆い、銀髪を赤く染める。
ついで使用されたスキルは剣を光で包み、金擦りの音を響かせる。
アクティブスキルの連続使用。多分一定時間継続するタイプだから、クールタイムとかありそうだけど。かなり本気と見た。
まだ本命残っているけど……、まあ、他人の心配よりも自分の心配だ。
――歩法 迅雷
気にしている場合では決して無いので、そろそろホブゴブリンを屠りにかかる。
段々と人が集まりだして、ホブゴブリンの周囲を囲んでいる。
超至近距離にいるのはタンクの人達。アンバーやハーフェン君も防御ガン無視で攻撃に参加している。
――歩法 隘路
プレイヤー達の隙間を縫うように走る。
ちらりと後ろを確認する。
そこまで速度出ていないとは言え、カレジさん割としっかりついてきてるな。
結構バフでの上昇量あるみたいだね。あのカタカナのスキル。
「――――――!!」
「合わせろ……!」
「「「「「『フォートレス』!」」」」」
迫る金棒。真正面にいたタンクの人計5人が全員スキルを用いて、抑え込む。
轟音が周囲を支配する。
けれど、彼らの守りは小揺るぎもしなかった。
流石の防御能力だね。私の何十倍かな? いや、私も流水とか使って良いなら大分マシだけど。
「『練魔纏斬』」
「『ワイルドバスター』!」
――斬法 地嵐
豪雷はここまで人が密集してる中使えるほど、隙きが小さい技ではない。
だから、妥協して地嵐を選択した。
私が振るった振り下ろしは、同タイミングで放たれたカレジさんの袈裟斬りと共に、ホブゴブリンの胸元を斬り裂いた。
少し膝が曲がった。ならば、そこを足場にしよう。
――歩法 碧空
軽く飛び上がって、位置するはホブゴブリンの顔面目の前。
「『練魔纏斬』――」
構えた瞬間、ホブゴブリンの先に、数名のプレイヤーが見える。
それも離れたところに。
そっちはボスのゴブリン・ジェネラルの方。動いていないから一旦無視してホブに群がっているプレイヤーを無視して先に挑もうとしているみたいだね。
まだここに到達しているのがかなりの上澄みの前衛ばっかりなせいで、極々少数だけど。
まあ、良い。
「ラアッッ……!!」
――斬法 烈火
若干溜めてから、一気に開放する。下から上のものを穿つ一撃はホブゴブリンの首に綺麗に突き刺さる。
傷口を抉ろうと身体を捻り出したとき、それは起こった。
「――――オォオオアアァァアアァアッッーーーーーー!!」
衝撃の伝播。
咆哮一つ。
たったそれだけで私の、私達の身体は大きく吹っ飛ばされた。
お読み頂きありがとうございます。
今後も読んでくださると幸いです。
作者は、主人公よりも主人公みたいな性能のキャラを作品に一人は絶対に入れる病気に罹っています。
私が小説書き始めた遠因になった作者さんの影響ですね。私のお気に入りユーザーから探してみてください。




