三人の場合
数時間前、とある中学校
「今日も疲れましたね~……」
誰もいなくなった教室、そこに蜜柑は一人で座っていた
「二人とも遅いですね」
今、瑠美と菜由華の二人は職員室に行っており、三人で帰ろうと思っていた蜜柑は教室で待つことにしたのだった
「ふわぁ~……ちょっと眠くなってきましたね……」
授業中居眠りをしていたにも関わらず、蜜柑に眠気が襲ってきた
「寝て待ってても良いですかね……」
そう言いながら、蜜柑は机に突っ伏した。そのまま眠りの世界に……
「おい、お前一人か?」
「……はい……?」
突然誰かに声をかけられ、渋々体を起こす。
すると、いつのまにか周りには数人の男女の生徒達がいた
「何ですか?私に用事でも?」
「別に誰でも良いんだけどさぁ、ちょっと金貸してくんないかな?」
「お金、ですか?」
「そうそう!貸してくれればなにもしないからさ!」
蜜柑は2秒ほど考えて答えた
「ごめんなさい、貸せません」
「……は?」
「いや、友達ならともかく、出会って1分も経ってない人達にお金を貸す理由がありませんから。あ、今1分経ちましたね」
時計を見ながら言う。その態度に聞いてきた男子生徒は苛つく
「おいこら、優しく言ってる内に出せよ。金出せやこら」
「いや、だから嫌ですってば」
「てめぇ……!」
蜜柑の態度に怒りを見せる男子生徒は、声を荒げた
「生意気言いやがって!何様のつもりだぁ!?」
「何様というか……私は市川 蜜柑と言うものですが?」
蜜柑が言った瞬間、取り囲んでいた生徒達は驚いて声を上げた
「なっ!?市川 蜜柑!?」
「そ、それって市川 辰也の妹の!?」
「や、やべぇ!よりによってそんな奴の妹に喧嘩売っちまったのか!?」
「逃げろ!バレたら市川に殺されるぞ!」
連中は蜜柑の名前を聞き、一斉に逃げ出していった
「む、お兄ちゃんは優しい人ですよ」
当然、蜜柑のそんな言葉を聞くものは誰もいなかった
「……ということがありまして」
その後、瑠美と菜由華の二人と合流して、さっきの話をした
「あ~、オレンジも被害にあったの?」
「最近多いんだよね。そうやって脅してお金を取っていく人達って」
「二人も被害にあったんですか?」
蜜柑が聞くと二人は頷いた
「うん、放課後に一人だった時にね」
「私も!一人だった時に狙われたの」
「大丈夫だったんですか?菜由華ちゃん」
「ちょっ!?オレンジ、私の心配は!?」
「瑠美ちゃんは心配ないですから」
「わ、私も一応女の子なのに……」
肩を落とす瑠美を無視して、蜜柑は菜由華の方を見た
「で、どんな感じだったんですか?」
「うん、追い返したよ」
「ほうほう、いつもの菜由華ちゃんなら自分から逃げると思ったのですが、追い返したんですか?」
「うん、だってあの人達……」
そして、菜由華はその日の出来事を話し出した
「ほらほら早く金出せって」
「痛い目にあいたいのかなぁ?」
「う、うう……」
菜由華は数人の生徒達に囲まれ、困ってしまった。
お金は持っている、でも……
「だ、駄目!今日は渡せない!」
「は?今日はって何だよ?」
「だって今日は……新作ゲームの発売日だから!」
「あ?」
呆ける生徒達を気にせず、菜由華は熱く語り出す
「今日買うゲームは私が何ヵ月も前から凄く凄く楽しみにしてたゲームなの!私はこれを絶対に買わないといけないの!だから……お金は渡せません!!」
「ちっ、何だそりゃ?そんな事に使うのかよ」
「………………そんな事?」
菜由華の雰囲気の変化に気づかない男子生徒はそのまま馬鹿にしたように言う
「ゲームなんて暇潰しにしかなんねえじゃん?あんなのに金を使うなら俺達に渡せっつーの」
その瞬間、菜由華は自分の頭が切れる音がした
「……に……したな……」
「何だ?文句あんのか?」
「ゲームを馬鹿にしたなああああああ!!」
「うおおお!?何だこいつ!?」
先程までと明らかに違う菜由華を見て、囲んでいた生徒達は慌て始める
「よーし分かった!全員ゲームの楽しさを叩き込んであげるよ!」
「な、何だよそれ?」
「ふふふ、少なくとも一週間は徹夜でゲームしてもらうからね!」
「ふ、ふざけ……!」
「うるさーい!全員廃人になるまでゲームしてもらうから覚悟してよね!!」
「こ、こいつヤバイわよ!」
「ヤバイぞ!マジで廃人にされちまうぞ!」
生徒達は完全に菜由華を恐れて逃げて行った
「あっ!こら逃げるな!待ちなさい!」
しかし、完全に暴走状態の菜由華は逃げた生徒を追いかけていった。
その後、瑠美に見つかり冷静になったのだった
「って感じだったの」
「なるほど、相手が地雷を踏んだわけですか」
菜由華の話を聞いて、蜜柑は納得したように頷く
「だってあの人達!ゲームにお金を使うのが馬鹿みたいな言い方するんだよ!?次会ったら絶対にゲームの楽しさを……」
「はいはい、落ち着きなさいって」
「む~……」
瑠美に宥められ、頬を膨らませる菜由華
「それにしても、本当に被害が多いみたいですね、まさか菜由華ちゃんまでカツアゲにあってたとは」
「ねぇ、私は?私の話は聞いてくれないの?」
瑠美が必死に話を聞いてアピールをする
「聞かなくても想像つきますって。『あんたらに貸すなら捨てた方がマシよ』とか言って怒らせた挙げ句、返り討ちにしたんでしょう?」
「な、何で分かったの!?」
「エスパーですから」
「嘘つけ!」
「……というか本当にそうだったんですか。ほとんど適当に言ったんですけど」
「だ、だって~、あんな奴らに貸すなら捨てた方が良いじゃない?」
「そんな事を言うから喧嘩になるんですよ」
蜜柑は一つため息をついた
「でも困りますね。こんなにカツアゲが多いと放課後、安心して過ごせないじゃないですか」
「クラスの子も何人か被害にあったみたいだよ。中には実際にお金を取られたって人もいるんだって」
「ったく、弱い子からお金を奪うなんて最低ね」
「何とか出来ないんでしょうか?」
蜜柑の言葉に二人は苦い顔になる
「難しいわね……ああいう連中は何回も同じ事やるから」
「私達だけじゃちょっと難しいよ」
「そうですか……」
その後、二人と別れた後も蜜柑は考えていた。どうにかする方法は無いものか。
そして、家に帰る前に落ち着いて考える場所が欲しくなり、たまたま近くにあった公園に入ったのだった
陽多side
「……と言うわけです。最近本当にこういう被害が多いんですよ」
「なるほどな」
蜜柑の話を聞き、俺は本格的に放っておけないと思い始めていた
「よし、じゃあ明日皆にも相談してみるぜ。多分手伝ってくれると思うからな」
「良いんですか?」
「ああ」
「ありがとうございます!凄く心強いです!」
蜜柑は嬉しそうに笑う。うん、なかなか可愛いじゃないか。久し振りに女の子らしく見えたぞ
「陽多さんは私を普段どんな風に思ってるんですか?」
「あれ、聞こえたか?まさかエスパーかお前?」
「顔に思いっきり出てましたからね。エスパーじゃなくても分かりますから」
「まぁお前が女の子らしい所って言ったら胸が大きい所くらいだしな」
「さっきから色々と酷くないですか!?」
怒る蜜柑を余所に、俺は早速、次の事件の解決策を考えることにした




