信じる
陽多side
俺の拳を喰らった加那は、後ろに吹っ飛び、倒れた
「……はぁ……」
気絶している加那を見て、俺は肩の力を抜いた
「陽多君……」
「香奈、大丈夫か?」
「うん……何とか……」
「そうか……っ!!おい!血が出てるじゃねえか!」
香奈の右膝から大量に流れている血。くそ、早く病院に連れていかないと!
「待ってろ。救急車を呼んでやるから」
「ありがとう」
俺は急いで携帯で救急車を呼んだ。
救急車を待つ間に、俺は出来る限りの手当てを香奈の膝にしておく。効果はほとんどないと思うがな……
「この傷は加那にやられたのか?」
「……うん」
「そうか」
「……陽多君、加那ちゃんはどうなるんだろう?」
「警察に引き渡すしかないだろうな」
加那は殺傷事件の犯人として追われてるんだからな
「どうして加那ちゃんは私達の事を信じてくれなかったのかな……?」
「それは加那にしか分からねえよ」
何かしらの事情があるんだと思う。じゃないとあそこまでの人間不信にはならないからな
「私達……何の力にもなれなかったね……」
香奈は俯きながら言った
「そんな事ねえよ」
「えっ?」
俺の言葉に香奈は顔を上げる
「今までは血を見るためなら平気で人にコンパスをさすような奴が、泣いてたんだ。俺達は十分、あいつの大事な人になれたと思うぜ」
「そう……かな?」
と、その時だった
「う……」
「あ……!加那ちゃん!」
気絶していた加那が目を覚ました
「気が付いたのか?」
「いたたた……陽多さん、本気でやったの?」
「一応手加減はしたぜ?ま、おしおきにはちょうど良いだろ」
加那は殴られた場所を抑えながら俺達の所に歩いてくる
「おいおいまだやる気か?」
「……ううん、ほら、コンパス持ってないでしょ?」
確かに、手には持ってないようだが
「実はどこかに隠してるとか……」
「じゃあ身体検査する?」
そう言って加那は服を脱ごうとする。
待て待て待て!
「脱がんで良い!信用してやるから!」
というか急に脱ぐな!見えちまったじゃねえか!下着が!
「あれ?陽多さん鼻血出てるよ?」
「陽多君……こんな時に……」
「い、今のは仕方ないだろ!?」
俺は必死に弁解するが、香奈は明らかに冷たい目で俺を見ている
「なるほどね~、陽多さんの血を見る簡単な方法があったんだね」
「陽多君の鼻は正直だからね」
やかましい!
「陽多さん、これからワタシをどうするの?」
「警察に連れていく。お前、追われてるんだぞ?」
「うん、分かってる」
「……やけに素直だな?」
「まぁ……ね」
加那はさっきまでと違い、落ち着いていた
「もしかして加那ちゃん。私達を信用してくれてるの?」
「ああ……さっきの鼻血か……」
血を見れば信用するって言ってたもんな
「それもあるけど……」
「けど?」
他に理由があるって言うのか?
「……さっき殴られた時にね、陽多さんの思いが伝わったんだ。香奈さんを傷つけられた怒りと……ワタシに対する心配がね。手加減してくれたのも、ワタシを心配してくれたんだよね?」
「……ああ」
「ワタシ、少しだけ信じられそうなの。陽多さんの事も、香奈さんの事も」
「加那ちゃん……」
加那はさっきと違う、笑顔を俺達に見せた
「二人とも、ありがとね。二人と一緒に過ごした時間、忘れないよ」
「……また会おうぜ。罪を償ってからな」
「私達も……忘れないよ!もう一人の『かな』ちゃんの事を!」
「うん!」
そして、あいつは俺達に最後にこう言った
「二人とも……『信じる』よ!」
加那を警察に引き渡し、香奈は病院に行った。
公園で一人になった俺は辰也に連絡した後、さっきの男の人に連絡した
『そうか、彼女は捕まったのか』
「はい、色々ありましたが……」
『辛かったよね、一緒に過ごした友達が……』
「俺は大丈夫です。加那は最後に俺達を信用してくれました、それだけで十分ですから」
『そうかい、彼女が……』
にしても、加那を知っていたこの人は一体何者なんだろうか?
「あの、貴方はどうして加那を捜していたんですか?」
『……うん、ちょっと事情があってね。詳しくは話せないんだけど』
「事情……」
『ごめんよ。実は僕はとある人に依頼されてある事件を調査してるんだ。それに彼女が関わってると思ったんだけど』
「その事件の内容も話せないんですよね」
『うん……本当にすまない。こればっかりは……』
いかん、さっきから謝らせてばかりだ。俺は謝罪してもらいたくて電話したんじゃないのに
「良いんです。それよりも、色々とありがとうございました」
『変わってるね、君は。普通ならここまで何も話さない人にお礼なんて言わないものだよ。むしろ怒っても良いくらいだ』
「ははっ、手伝ってくれた人にそんな態度取らないですって」
『そうか……』
「では、これで」
『うん、また会えると良いね。それじゃ』
そして、電話は切れた
「……事件か……」
結局、あの人の正体は分からなかったな
「でもまぁ……一先ず一件落着だな……」
今回の事件は解決したし、しばらくはゆっくりと……
「あれ?陽多さんじゃないですか?」
「お、蜜柑か」
帰ろうと思った時、公園に蜜柑が入ってきた
「こんな所で何をしてるんですか?」
「ちょっと事件に巻き込まれてな」
「陽多さんはよく事件に巻き込まれますよね」
「何でか分からんがな」
蜜柑は俺の隣に歩いてきた
「お前はどうしたんだ?こんな時間に一人で公園に来るなんて危ないぜ。お前も一応女の子なんだから」
「一応って何ですか一応って」
俺の言葉に蜜柑は不満顔になる
「少し考え事をしてまして、落ち着いて考える場所が欲しかったんですよ」
この時点でやっかい事の匂いがプンプンする。
関わるな……!事件が終わったばかりなんだ!俺は帰って……
「考え事って何だ?何かあったのか?」
……放っておけませんでした、俺のバカ
「相談に乗ってくれるんですか?事件に巻き込まれたって言ってたし疲れてるんじゃ……」
「大丈夫だよ、良いから言ってみな」
「そうですか……ありがとうございます、陽多さん。実は……」
そして、俺は蜜柑の話を聞くことにした




