平和が一番!
陽多side
「もうっ!酷いよ賢也君!あんな嘘言うなんて!」
「悪い悪い、ちょっとからかってみたくなってな」
五人がかりで香奈を落ち着かせ、賢也が説明すると香奈は怒りながら言った
「まぁまぁ香奈ちゃん。賢也君がこんな感じなのは昔からなのよ。許してあげて」
「うーん……優里ちゃんがそう言うなら……でも次やったら……!」
「わ、分かってるって。だからその手に握るコンパスを引っ込めろ、な?」
賢也は青ざめながら言った。
で、俺達は……
「「「………はぁ……」」」
三人仲良く燃え尽きていた。ヤンデレモードの香奈の相手は本当に疲れるぜ
「……疲れたね……」
「この後授業なのにね……」
「早退してぇ……」
だが、さっきまでの不自然な会話は無くなっていた 。
「さて、これでHRは終わりだが……三人とも大丈夫なのか?」
担任の岩田先生が机に突っ伏している俺達を見て言った
「大丈夫です……」
少しずつ体力が戻ってきたので俺が答えた
「そうか、まぁ無理はするなよ」
そう言って、先生は出ていった
「よ、陽多君?大丈夫……?」
香奈が心配そうな声で俺に聞いてきた。自分のせいで俺がこんな状態になっているからな。心配で仕方ないんだろうな
「ああ、もう大丈夫っぽいぜ」
「ホント?」
「おう」
これ以上香奈の不安顔は見たくない。というわけで俺は机から顔を上げ、元気な姿を香奈に見せた
「良かった……あの、ごめんね陽多君」
「香奈が謝る事じゃないさ」
悪いのは賢也だしな
「……陽多君は私の事、嫌いにならないの?」
「嫌いになる理由がないぜ」
「だって……私、いつもこんな感じだし……すぐに暴走するし……迷惑かけてばっかりだし……」
「………はぁ……」
ったく、何を言い出すかと思ったらよ
「香奈」
「え?……っ!!よ、よ、陽多君!?」
俺は席から立ち上がり、香奈を抱き締めた
「俺が本当にお前を嫌いになると思うか?」
「うう……」
「俺達、ずっと一緒だっただろ?今更お前の事が嫌になるわけがねえよ。それにな……」
俺は顔を真っ赤にしている香奈を真っ直ぐ見る
「俺は香奈の事が好きだ。すぐに暴走する所も、俺を巻き込んで人助けをする所も、全部好きだ。たから、安心しろ。俺は香奈を嫌いになったりしないからな」
「陽多君……私も……陽多君の事、大好きだよ」
香奈が俺の背中に手を回す。
俺達はしばらく、抱き合ったままだった
『く、組谷君と楓実さんってただの幼馴染みだったんじゃないの!?』
『いつの間にあんな関係に!?』
『羨ましい……そして妬ましいぜ……!』
『あの二人、周りの視線を全然気にしてないわね』
『完全に二人の世界に入ってるな』
……今更ながら教室で随分と大胆な事をやったな、俺達……
時間は流れ、放課後。俺と香奈は二人きりで下校していた
「皆、今日はどうしたんだろうね?」
香奈が不思議そうな顔で聞いてきた。
何故か今日は、二人きりで帰った方が良いと皆に勧められた。
優里に至っては「たまには二人きりで帰るのも良いんじゃないかしら?」なんて事をニヤニヤしながら言っていた
「多分、朝にあんなことがあったからだろうな」
「あ……」
思い出した香奈が顔を真っ赤にして俯く。ったく、皆して変に気を使いやがって……
「じゃ、じゃあ行こうか!陽多君!」
「おう……って前を見ないと危ないぞ!」
香奈は俯いたまま走り出した。
すると
「わっ!?」
「あっ!?」
横から歩いてきた女の子とぶつかりそうになる。
ん?あれは……
「あ、危ないですよ!急に走ってきたら!」
「ご、ごめんなさ……って蜜柑ちゃん?」
「ふえ?あ、香奈さん」
やっぱり蜜柑か。ってことは……
「蜜柑ちゃん大丈夫?」
「お~、危なかったねオレンジ」
「やっぱり二人も一緒だったか」
「あれ、陽多さん?」
後ろから菜由華と瑠美が歩いてくる
「ぶつかりそうになったのって香奈さんだったんですね」
「うう……ごめんなさい……」
「良いですよ。前に私も香奈さんにぶつかりそうになったことありますし」
謝る香奈を笑顔で許す蜜柑
「それにしても珍しいですね、香奈さんが前を見ないで歩くなんて」
「まぁ色々あったんだよ」
俺が言うと香奈はまた顔を赤くする。
それを見た菜由華が目を輝かせた
「何ですか!?何があったんですか二人とも!?」
「な、何もないよ」
「嘘です!さっきの香奈さんの表情を私が見逃したと思ってるんですか!?」
「あうう……」
駄目だ。今の菜由華を止めることは誰にもできない。
……と、思っていたら
「はいはいストーップ。なゆ?香奈さんが困ってるでしょ?」
「あう、でも瑠美ちゃん……」
「だーめ!これ以上迷惑かけないの」
「はーい……」
おお、瑠美が久し振りに大人っぽく見えたぞ
「数日前まで数学の神様の存在を信じきってた人とは思えませんね」
「うっ!そ、それは言わないでよオレンジ!」
うむ、大人っぽく見えたのは気のせいだったようだな
「じゃ、じゃあ私達はこれで!」
そう言い残し、瑠美は走っていった
「逃げたな」
「逃げましたね」
俺と蜜柑は瑠美の背中を見ながら言った
さて、蜜柑達とも別れたし、また香奈と二人で歩き始めたわけだが……
「うう……あうう……」
隣で顔を赤くして歩いているこいつをどうにかせんとな……このままじゃ会話もできないし
「おい香奈」
「ふあっ!?な、何かな陽多君!?ついにプロポーズ!?」
「うん、落ち着こうか」
慌てる香奈の頭を撫でる
「は、恥ずかしいよ陽多君……」
「じゃあ止めようか?」
「……もう少しだけ」
ったく素直じゃないやつめ
「思えば最近、色々あったよな」
「そうだね。色んな事件に遭遇してばっかりだよね」
「ま、たまにはこういう平和な一日も良いよな」
「まぁこれが普通なんだけどね」
その後、俺達は家に帰り、残り一日も平和に過ごすのだった。
……この一日、嵐の前の静けさとかじゃないと良いんだけどな




