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過去の過ち

数年前、とある小学校。

この学校では教師達の知らない所でとある問題が起こっていた


「ほらっ!かかってきなさいよ!男の癖にだらしないわね!」


「うぅ……もう許してよ……。僕が何をしたって言うのさ……」


「別に何もしてないよ?ただ単に私が気に入らないだけ……よっ!」


「うっ!ひど……い……」


一人の少女が原因であった。

小学四年生であったその少女はただ気に入らないという理由だけで暴力行為を行っていたのだ。


当然、その少女は怪しまれる筈なのだが、暴力を受けた相手は、恐ろしい脅しを受けて何も言えなくなってしまうのだ。


彼女に逆らう者も現れず、学校を転校する子供が増えるばかり、最悪の状況だった。

教師もその少女を疑ってはいたが、証拠がなく、少女も知らないと言い続ける。どうにもならなかった。


そして、その少女とは……


「おい、聞いたか?また暁が一人転校させたんだってさ」


「また?怖いなぁ、暁さんに逆らうと酷い目にあうんでしょ?」


暁瑠美、それが問題を起こしていた少女であった


「ああ、将生も気を付けろよ?」


「うん……」


成河将生、彼もこの時は暁瑠美に逆らおうなどという考えは全く考えていなかった。










しかし、数ヶ月後の事だった


「え!?そんな!嘘でしょ!?」


「いや、残念だけど、あいつは転校したよ」


「そんな……」


普段から凄く仲が良かった友達が転校した。

突然の出来事に将生の頭は混乱していた


「何で……何で急に!」


「……目をつけられたんだってさ」


「誰に……!?まさか……暁さんに!?」


「………」


自分の友達が暁瑠美のせいで転校することになった。

これを知った将生は今までにない程の怒りを覚えた


「許せない……!」


「お、落ち着けよ将生。暁に逆らえばお前まで目をつけられるぞ」


「関係あるもんか!僕は暁さんを許さないぞ!」


「将生……」


成河将生は決心した


「暁さんと話をしてくる。彼女が謝るまで、僕は彼女を許さない」


「おいおい、正気かよ将生」


「シャレを聞いてる暇はないんだけど!?」


「分かったよ。じゃあお前の好きな様にしてみな」


そして、将生は瑠美を呼び出すのだった











「はぁ?謝れ?」


「そうだよ」


将生の話を聞いた瑠美は早速苛立ち始めた


「誰が?誰に?」


「君が!転校させた皆にだよ!」


「何で私が謝らないといけないのさ?あいつらが勝手に転校したんじゃない」


瑠美の言葉に将生の怒りに火が点いた


「……ねぇ、本気で言ってるの?」


「本気だけど~?」


「お前っ!!」


ついに将生は瑠美に掴みかかった


「痛いわね、放しなさいよ」


「うるさい!お前のせいで……お前のせいで……!」


「放せって言ってるの……よっ!」


「うわっ!」


瑠美が将生の顔を殴る


「ふん、弱っちいわね」


「くぅ……このぉ!」


将生は再び瑠美に近づくが


「何度やっても同じだっての!」


「つっ!!」


瑠美の攻撃をまともに喰らった将生は倒れこんだ


「私に指図して!生意気なのよ!」


「ぐっ!うあっ!」


瑠美は倒れた将生に更に蹴りを入れる


「あははっ!私に逆らったあんたには罰として毎日付き合ってもらうわよ」


「………良いよ」


「言っとくけど断っても駄目だから……って、え?」


将生は痛む体に鞭打って立ち上がる


「僕が毎日君に付き合うよ。その代わり……もう誰にも手を出すな」


「あ、あんた何でそこまでやるの?自分が痛い目にあうのが怖くないわけ?」


「怖いし嫌だよ。だけどさ……」


将生は瑠美を睨みながら言う


「君みたいな奴のせいで、また転校させられる子が出てくる方がもっと嫌だ」


「何よ……それ……」


瑠美はわなわなと拳を震わせる


「ふざけんじゃないわよぉっ!!」


そして、瑠美の拳が再び将生の顔面に……


「っ!!」


「なっ!?」


……叩き込まれる直前に将生は瑠美の手を掴んだ


「くっ!放せ!放してよっ!」


「君を許さない……!許すもんかっ!」


「きゃあっ!!」


将生は本気の拳を瑠美の顔にぶつけた。

普段、彼は喧嘩などはしない性格なのだが、今回ばかりはそうもいかなかった、瑠美を許せなかったのだ


「う……ひっく……痛い……痛いよぉ……」


「君はその痛みを……今まで何人に与えてきたの?」


「っ……!」


瑠美は泣きながら顔を押さえる


「君が皆に与えてきた痛みは君が今感じているものの何倍なんだろうね?」


「う……うう……」


「……ねぇ分かった?君のやってきた事がどんなに酷い事なのか」


「……ごめん……なさい……」


「それを言うのは僕じゃないよ」


将生はそう言って立ち去ろうとする


「ま、待って!」


「……何?」


「私……反省するから……皆に……謝りたいの……だから……」


一人では皆がどこに転校したのか分からない。だから手伝ってほしい、そういうことだった。

手伝う義理はないので将生は断ろうと思った。しかし、瑠美の目を見て、彼女が本気だということに気づいた


「……信じて良いんだね?」


「信じて……ください……」


「はぁ……分かったよ」


将生の答えに、瑠美は少し嬉しそうな表情を見せた


「じゃあまずは職員室に行こうか、暁さん」


「ね、ねぇ、お願いがあるんだけど……」


「……まだ何かあるの?」


「私、反省するよ。そ、それで……反省したらで良いんだけど……」


「何?」


「わ、私と……友達になってくれない……?」


「………え?」













その後、瑠美は職員室に行き、全てを話した。

教師達からきついお説教をもらい、瑠美は改めて自分のしてきたことがどれほど最低な事だったか思い知った。


将生は、瑠美の為に転校した皆の連絡先を調べた。

彼の友達を含めた何人かは連絡が取れたので、瑠美に謝りに行かせることにした。


瑠美は心から謝った。許してもらえないなら土下座もした。

その結果、謝った相手からは一先ず許しを貰えたのだった。


最後に、学校の皆にも瑠美は頭を下げた。皆に恐怖を与えてごめんなさい、と。

初めは信用する子は少なく、瑠美に近寄る事もなかったが、しばらくして、瑠美が本当に心から謝ったと信じて貰え、彼女を怖がる子はほとんどいなくなったのだった。


そして……


「これで、一先ず落ち着いたね」


「うん、全部成河のお蔭。ありがとね」


「暁さんが本気だっから手伝ったんだよ。もしも嘘だったらすぐに見捨ててたさ」


「あ、あのさ成河。そろそろ反省したって認めてくれる……かな?」


「……そうだね、じゃあ約束通り、暁さんと僕はもう友達だね」


「う、うん!」


瑠美は凄く嬉しそうな笑顔を見せた。


瑠美が事件を起こしたきっかけ。最初は小さなものだった。

自分が引っ込み思案で友達が出来ず、その鬱憤を晴らす為に机やイスを叩いたりしていただけだった。

だが、それがエスカレートして、周りの子を殴るようになり、そうしないとストレスが溜まるようになってしまったのだ。

将生に殴られるまで、瑠美は周りの人間の事など全く考えていなかったのだ


瑠美にとって、将生は初めての友達だった


「じゃあさ!せっかく友達になったんだから私の事、名前で呼んでよ!」


「名前ってことは……瑠美ちゃん?」


「そうそう!」


「じゃあ僕も名前で呼んで良いよ」


「う~ん、普通だとつまんないなぁ」


瑠美は少し考えた


「よしっ!じゃあ今からあんたのこと、ショウって呼ぶわね!」


「うん、良いよ」


「えへへ……」


瑠美はこの日から変わり始めた。

引っ込み思案を直し、無闇に周りの子に暴力行為をすることもなくなった。


そして、瑠美は小学校を卒業し、二度と同じ過ちを繰り返さないと決心して、中学生になったのだった。














現在 蜜柑side


「これが瑠美ちゃんが小学生だった頃の話だよ」


「……なるほど」


瑠美ちゃんはこの話を隠し続けていたんですね、友達である私達にも


「でも、瑠美ちゃんにとって成河君は恩人なんだね」


「恩人って程じゃないさ。僕は彼女を殴ったんだ。力で無理矢理従わせたようなものさ」


「そんなことはないと思いますよ。ちゃんと瑠美ちゃんが皆に謝る為に手伝ったんですし。それに殴らないと分からない人もいるものですからね」


「ところでさ、瑠美ちゃんにとって成河君って最初に出来た友達なんでしょ?それなのに瑠美ちゃん、面倒な人って言ってたけど……」


そういえばさっき会った時に言ってましたね、『面倒な奴』って


「うーん……多分瑠美ちゃんが改心してからも世話を焼きまくったせいだと思うよ」


「なるほど、それで……」


どれだけ世話を焼いたのかは知りませんが、きっと瑠美ちゃんも内心では面倒とは思ってないでしょうね、ただの勘ですけど


「それで……二人は瑠美ちゃんのこの話を聞いても彼女の為に行動するのかな?」


成河君が聞いてきました。全く、何を今更


「当たり前です。この程度の過去を話しただけで私達に嫌われると思っている瑠美ちゃんに一言言ってやります」


「同感。文句を言ってやるためにも瑠美ちゃんを連れ戻そう!」


「そっか……」


成河君は安心した笑顔になりました


「でも、瑠美ちゃんは誰に連れていかれたのかな?」


「うん、連れていったのは小学校時代に瑠美ちゃんが転校させて、連絡先が分からなかった人達なんだよ」


「えっ!?戻ってきたんですか!?」


「今まで連絡がつかなかったんだけどね。瑠美ちゃんに復讐するために戻ってきたんだ」


復讐……ですか……


「どこに行ったのか分かる?成河君」


「ごめん、そこまでは分からないんだ」


ふむ……では急いで捜さないといけませんね。

……そうですね、そろそろ学校も終わってるだろうし……手伝ってもらいますか


「ちょっと待っててください、二人とも」


「え?蜜柑ちゃん?」


私は携帯を取りだし、電話をかける


「……もしもし?私だよ。あのね、今ちょっと手伝ってほしいんだけど……」


私は電話の相手に事情を説明します


「……って事なの。手伝ってくれ……あ、本当!?ありがとう!じゃあお願いするね、お兄ちゃん」


私は電話を切りました。


さて、応援も頼みましたし、私達も急いで捜しに行きますか。

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