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ホームセンターとお嬢様


 台風に備えて、俺はホームセンターに必要な備品を買いに来た。

 そこで学年トップの成績を誇る天才・霧咲さんと出会う。


 霧咲さんは中二病で学校で会う時は高飛車キャラを演じている。

 だけど今日は大人しい地味なキャラだ。


 黒く長いストレートの髪で視線はやや下向き。

 そして感情を一切感じさせない無表情。


 日七瀬さんによると、この地味でコミュ障気味の状態が本当の霧咲さんらしい。


 そんな彼女は突然現れた俺に驚きつつも、なんとか声を掛けてきた。


「……ひさしぶりね。春彦さんもホームセンターでお買い物?」

「ああ。台風に備えておこうと思って」

「……そう」


 出会って数秒で会話がなくなった。


 霧咲さんと二人っきりで話をするのはこれが初めてだけど、想像以上に会話が続かない。

 もしここに日七瀬さんが居てくれたらフォローをしてくれるんだろうけど。


 それに言葉の端々にトゲがあるような気がする。


 霧咲さんは俺を自分のものにしたいと言っていたけど、今まで恋愛的な好意をみせてくれたことはない。むしろ敵視されているんじゃないかと思う事の方が多い。


 とはいえ、このまま会話もせずに突っ立っているのも嫌だな……。


「えーっと……。こんなところで会うなんてめずらしいね。今日は日七瀬さんと一緒じゃないの?」

「ええ。日七瀬は今頃、屋敷の仕事をしていると思う」

「それで一人でホームセンターに?」

「……そう」


 むぅ……。またしても会話が途切れてしまった。

 なかなか手ごわいな。

 せめて俺に天音くらいのコミュ力があれば……。


 いや、ないものを今欲しても意味がない。

 もう一度トライだ!


「それにしても霧咲さんがホームセンターに来るなんて、ちょっと意外だね。何を買いに来たの?」

「……世界の滅亡」

「スケールでけぇ」


 なんちゅう返し方だよ!

 無表情状態の霧咲さんがそんなふうに言うと、冗談なのかどうかわからないから、会話の続け方がわからないじゃないか。


 くっ! まだだ!

 俺は諦めないぞ!!


「えっと、そういう概念的なことじゃなくて、ホームセンターで欲しいものがあるんでしょ?」

「……魔眼」

「いや、ないから。そんなの世界中を探してもないから」


 ここで事態は急変した。


 さっきまでまったく俺に関心を示さなかった霧咲さんが、俺に目を合わせてきたのだ。


「春彦さん。決めつけはよくないわ。未だに世界は謎で満ちてる。宇宙人だっているかもしれないし、未来人や超能力者だってきっといると思う」

「そうかもしれないけど……」

「なら、ホームセンターに世界滅亡をもたらす魔眼があっておもおかしくないでしょ?」

「あれ? 俺の方がおかしい流れ?」

「おかしいわね。滑稽すぎて笑っちゃいそう」


 やっと普通に話してくれたと思ったら、今度は電波なことを常識のように語り、俺を批難し始めた。


 どっちに転んでも、俺と霧咲さんは仲良くなれそうにないというわけか……。


 一方、霧咲さんはホームセンターの棚の上の方をじーっと見始める。

 そこにはいろいろな種類のキャンドルが陳列されていた。


「もしかして、キャンドルが欲しいの?」

「……ええ。今日の夜、日七瀬と台風パーティをするの。その時に一緒にキャンドルを観ようと思って」


 へぇ……。変な人だと思ったけど、こういうところは女の子らしいんだ。


 それにしても台風パーティーねぇ。

 今回の台風は規模も小さいし、自宅に居れば危険はない。

 そういう時って妙にテンションが高くなるから、友達と一緒に過ごしたくなる気持ちはわからなくはない。


「わかった。あの位置なら俺の方が取りやすいから任せて。あの右のリボンのイラストが入ったものでいいのかな?」

「え……、ええ」


 俺はすぐ近くにあった脚立に乗り、手を伸ばしてキャンドルが入ったを箱を取った。

 そして霧咲さんにその商品を手渡す。


「はい。これでいい?」

「……ありがとう」

「霧咲さんって、本当に日七瀬さんと仲がいいんだね」

「……親友……だから」


 嬉しそうに静かに笑う霧咲さん。

 その表情はいつも無理をしている彼女とは違う、自然体の本当の笑顔のように見えた。


 ちょっとしたことではあったけど、もしかしたら霧咲さんとの距離が少し縮まったかもしれない。


 ……と、ここで霧咲さんは妙な話をし始めた。


「そういえば、春彦さんの誕生日っていつでしたっけ?」

「九月だけど?」

「そう。……じゃあ、私の方がお姉さんってことね」

「お姉さんって……。同じ学年なのにそこまでこだわる必要ないと思うけど」

「あるわよ。だって……」


 言葉を切った霧咲さんは、無表情で続きを話す。


「私達は腹違いの姉弟かもしれないんだから」


 すぐにその言葉の意味が分からなかった。


「えっ……? 今なんて?」

「腹違いの姉弟」

「俺と……霧咲さんが?」

「そう」

「えっと……、それって中二病設定の話?」

「違う。本当の話」


 なんだ? 何を言ってるんだ?

 そんなこと、あるはずがない。


 だが、霧咲さんから嘘を言っている様子は見られない。


「私の母とあなたの父・純一郎おじさまは、私が生まれる少し前まで付き合っていたのよ。時期的に純一郎おじさまが私の本当の父親の可能性が高いわ」

「ま、まさか……」

「ウソだと思うなら、証拠があるけど見る?」


 父さん……。俺の知らないところで何やってんだよ……。

いつも読んで頂き、ありがとうございます。


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投稿は、毎朝7時15分頃です。

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― 新着の感想 ―
[一言] うーん、もし本当なら、彼女が生まれる前に彼が「しこまれ」ていたということで。 あの父親が二股とか不倫とかをする甲斐性があるようには思えなかったり/w
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