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迷宮再挑戦

 以前挑戦して断念したハジノ迷宮。

 再度挑むために俺達は足を運んでいた。

 1層目に入ると相変わらず緑色の丸い魔物、アシッドスライムが徘徊している。


「ついにリベンジをする時がきたか」


「ほう、ここがハジノ迷宮ですか。他の迷宮に比べると穏やかな場所ですね」


「私達が今まで攻略してきたのは異変が起きた場所だもの。ここはまだ周囲に影響を及ぼす状態じゃないのよ」


「でもいつかは他の迷宮みたいになるんでありますかね? 冒険者の狩場になっているみたいでありますけど、攻略して消えたらどうなるのでありましょうか」


「ファニャさん達が途中で断念するほどの迷宮……どんだけ難易度が高いのかな」


 今は俺とノールとエステルとシスハとマルティナの5人で行動をしている。

 ここは王都の冒険者の狩場にもなっているから、低階層の内は目撃される可能性があるのでルーナとフリージアはディメンションルームで待機中だ。

 何があるかわからないし、おまけにミニサレナとモフットも彼女達と一緒にいる。

 実際に俺の懸念が当たったのか、地図アプリで確認すると迷宮内に複数の人の反応があった。


「おっ、今回は他の冒険者もいるぞ。本当にここで狩りをするんだな」


「ルーナとフリージアは控えてもらっていて正解だったわね。まだ層が浅い内は他の冒険者がいる可能性も高いわ」


「見られても誤魔化せますが、余計な心配事は減らすに限ります。その点マルティナさんは存在感が薄くて助かりますよ。安心して狩場に同行してもらえますからね」


「うぅ……ど、どうせ僕は存在感がないですよ……」


 マルティナはしゃがみ込んで地面を指で弄り今にも消えてしまいそうだ。

 UR装備の効果のおかげで、事前にいるって知らないと隣にいても認知できないからなぁ。

 それにバレたとしても人間だから言い訳もできて、マルティナは表立って同行させやすいのもある。

 今までは他人があまりいない狩場や迷宮だから気にしてなかったけど、他の目があるところでは注意しないとな。

 10層目を超えちまえば人もほぼいなそうだし、そこからルーナ達も外に出す予定だ。

 

 そんなこんなで特に支障もなく俺達は5層目に到着した。

 マルティナの負の力の影響か、スライムが襲ってくるどころか逃げていくから一切戦闘をしていない。

 5層目は広場で見覚えのある銀色のスライムが一体だけ徘徊している。


 ――――――

●スチールスライム 種族:スライム

 レベル:50

 HP:4000

 MP:0

 攻撃力:2400

 防御力:2万

 敏捷:60

 魔法耐性:0

 固有能力 なし

 スキル 変形

――――――


「おっ、スチールスライムか。あいつ前は結構手こずったよなぁ」


「スライムなのに動きが速くて体も硬いのよね。でも今なら簡単に魔法で消し飛ばせると思うわ。やっちゃう?」


「待て待て、ここは俺に任せてもらおうか。あの頃から成長したってことを少しでも見せてやろう」


「おお、大倉殿が珍しく勇ましいのでありますよ!」


 前は俺とノールとエステルで協力して倒したからな。

 あれからだいぶ経ったんだし、俺だってやれるってところを見せてやろう!

 

 スチールスライムは防御力がめちゃくちゃ高いが、代わりに魔法耐性は皆無だ。

 となると、魔法か防御力無視装備じゃないと倒せない。

 なので俺は称号を魔導師な団長に切り替えて魔法を使えるようにした。

 エステルとの特訓の成果を見せてやろう!


 さっそくセンチターブラを起動させ銀色の液体を目の前に出した。

 思念操作で個体に変形させて射出すると、スチールスライムが反応して同じように体の形が変わる。

 体の一部を細長くして壁に撃ち込み、ゴムのように伸び縮みして高速移動を始めた。

 だが、着地点にセンチターブラを先回しさせ、薄く引き伸ばしてスチールスライムを包み込んで閉じ込める。

 前回は目で追うのもやっとだったけど、見える、俺にも敵が見えるぞ!

 

 上手く拘束できたので俺は片手に魔力を集中させて火の玉を形成した。

 これは初歩的な魔法だがスチールスライムを倒すだけなら十分な威力だ。

 ボールのように火の玉を投げ、センチターブラを当たる位置に移動させて一部分穴を空ける。

 そこに火の玉が入っていき中で爆発しスチールスライムを撃破した。


 どやっ、と決めポーズをしてノール達の方を見ると、珍しくシスハが素直に褒めてくる。


「やりますねぇ。まあ私が召喚される前に倒した魔物でしょうし、これぐらいは倒してもらいませんと。大倉さん1人で倒したって点は評価いたしますよ」


「ここに来るまでも変わったスライムばかりだけど、あんな速さで動くのもいるんだね。君の使うセンチターブラとどこか似た魔物だったような……」


「おっ、よくわかったな。センチターブラも思考で変形する金属みたいなもんだから、最初はスチールスライムの動きを参考にしたんだ。真っ向勝負で打倒した俺はオリジナルを超えたぞ!」


「スライムと比較するのはどうなのでありますかね……」


「ふふ、いいじゃない。お兄さんの成長が見られて嬉しいわ」


 もうレベル的に遥か格下とはいえ、俺1人でもスチールスライムを倒せたのは感慨深いな。

 称号変更の効果だけど魔法もちゃんと扱えるようになったし、俺でもやれることが多少は増えているぞ!

 ……まあ、適正レベルの戦闘だと称号はパーティー全員にバフが入る総長一択なんだけどな。


 スチールスライムも無事に突破し、そのままの勢いで10層に到達。

 入口からすぐの部屋には、あの忌まわしきルーレットの台座が鎮座している。


「さて、ようやく問題の10層目だな……」


「ここに来たらあの頃の苦労を思い出しちゃったわ……」


「戦闘以外で苦しめられる辛さをよく味わったのでありますよ……」


「大倉さん達は随分苦い思い出があるようですね。妙なルーレットが置かれていますがこれを回すのですか?」


「ああ、矢印の止まった先の扉が開く仕組みだぞ。それでボス部屋を目指すんだけど、外れを引くと入口に戻されるんだ」


「面白そうじゃあないか! ゲームみたいでワクワクしてきた!」


 俺の話を聞いたマルティナは目を輝かせている。

 話だけ聞くと面白そうに思えるけど、実際はルーレットを回して当たりを引くまで何時間も沼る地獄。

 しかも外れ部屋にはスライムがいて無駄な戦闘もさせられる二重苦、もうあんな苦行は御免だ。

 そこでこの平八は考えました。


「という訳で今回ご用意したのがこちらです。テッテレー、ディメンションホール!」


「あっ……そういうことですか。本当に大倉さんは迷宮破壊がお好きなんですね」


「えっ、どういうこと?」


「壁の中を通って直進する気でありますよ。精霊樹の迷宮でやっていたでありますね」


「戦力だけじゃなくて道具面でも、あの頃に比べて攻略しやすくなっているわね」


 俺がディメンションホールを取り出すと、マルティナ以外は何をするかすぐに察したようだ。

 そう、自由に進めないなら壁に穴を空ければいいじゃない。

 困惑するマルティナを他所に、ディメンションホールを壁にぶっ刺して隣の部屋に移動する。

 地図アプリでボス部屋の位置を確認してまっすぐ進み、あっという間に大きな扉の前に到着した。


「ははは、ざまぁないぜ! 1回もルーレットを回さずにボス部屋へ辿り着いたぞ!」


「迷路やギミックをガン無視して進むなんてロマンがないね……」


「言いたいことはわかるでありますが、ここの迷路は本当にきついであります。楽に突破できてよかったのでありますよ」


「ノールもだいぶお兄さんの思考に染まってきたわね」


「倫理観に欠けることもありますけど、大倉さんのやることは効率的ですからね」


 マルティナは残念がっているけど、あの沼を体験したノールとエステルは安堵している。

 あの地獄のルーレットを体験しなかったんだから感謝してほしいものだ。

 ボス部屋に到着したので、今度はディメンションルームを壁に突き刺してルーナとフリージアを呼び出した。

 まだ呼び出す必要はなかったけど、一応ボス戦だから念のためだ。

 

 10層に居るボスは巨大な黄金に輝くアウルムスライム。

 シスハ達はボス部屋の扉を少し開いて中を見ていた。


「ほぉ、これはなかなかに大きなスライムですね。大倉さん達が撤退した気持ちもわからなくありませんよ」


「こんな大きなスライム初めて見た! しかも金色! か、カッコいい……」


「おっきくて凄いキラキラしてるね! カッコいいんだよ!」


「スライムがカッコいい……? 貴様らの感性はどうなっている」


 マルティナとフリージアの反応にルーナが呆れていた。

 いくら金色でもスライムがカッコいいか……そうかな、そうかも?

 そんなことはいいとして、前回はここで撤退したが今回はこいつを倒さないといけない。

 改めてステータスを見てみよう。


――――――

●アウルムスライム 種族:スライム

 レベル:60

 HP:20万

 MP:0

 攻撃力:4500

 防御力:3000

 敏捷:20

 魔法耐性:30

 固有能力 黄金の輝き

 スキル 威張り散らす

――――――


 うーむ、弱くはないけど今としてはそんなでもないな。

 でも10層目でこれだと、Aランク冒険者達が到達した40層はどんだけ強い魔物が出てくるんだ。


「さて、人もいないことだしサクッと終わらせるか」


「今の私達なら普通に倒せるでありますもんね。それじゃあ行くのでありますよ!」


「おい待て。何正面から普通に入ろうとしているんだ?」


「えっ、でも倒して進むんでありますよね?」


「せっかくボス部屋から出てこないのに馬鹿正直に入る必要もないだろう」


「また何か良からぬことを考えていそうだわ。流石お兄さんね」


 さっきシスハ達が見て平気だったように、部屋の中に入らなければ先制攻撃される心配はない。

 なら、わざわざ部屋の中に入って戦う必要はないはずだ。

 ごにょごにょっとノール達に作戦を説明し実行に移した。


「じゃあ頼んだぞ」


「うん。行け、僕の友達よ!」


 まずはマルティナに頼んで、ゴースト達を部屋の中に侵入させる。

 そしてアウルムスライムに纏わりつくと、マルティナの負の力を媒介させてデバフをかけた。

 すぐにゴーストが部屋から逃げ帰ると、エステルがえいっと定番となった極太の光線を放つ。

 光線に触れた途端にアウルムスライムは煙のように体が蒸発し、何の抵抗もなく巨大な全身が消滅した。


「よっしゃ! エステルよくやったぞ!」


「ふふ、もっと褒めてくれてもいいのよ。前回は力不足だったけど、今ならあれぐらい一撃で仕留められるわね」


「エステルさんなら僕のデバフもいらなかったんじゃないかなぁ……」


「大倉殿はその点容赦ないでありますからね。相手を確実に仕留める準備だけはしっかりするのでありますよ」


「ふむ、だから私にカズィクルの準備をさせていたのか。出番がなくてよかった」


 隙を生じぬ二段構えでルーナのスキルも準備していたが、エステルだけで十分過剰火力だったか。

 まずはこれで前回断念した10層は突破できた。

 ここから未知の領域だが、果たして何が待ち構えているんだろう。

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俺は片手に魔力を集中させて火の玉を形成した。 これは初歩的な魔法だがスチールスライムを倒すだけなら十分な威力だ。 あれ?今更ながらですが・・・ 平八って魔法使えたんだ? 【342 魔法診断】では ・…
未知の敵に油断は禁物。準備しすぎたかな?とかオーバーキル過ぎたかな?位で丁度いいと思うんよね。 遠距離からのデバフマシマシからのロングレンジの超火力! 大正解だとおもうw勝てばよかろうなのだァ!
さすがは大倉殿 最高だぜ!
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