ゲームセンター
ゲームセンターを増築してから数日後。
施設の機能で個人アカウントを作成できて個別にポイントを保有できるので、希望者に1日2個魔石を支給という形で振り分けている。
俺を抜きにして毎日12個消費するが、その分狩りを頑張ってくれて普段より10個以上は魔石獲得が増えたから問題ない。
今日も狩りを終えたシスハ達は、さっそくゲームセンターに駆け込み遊んでいる。
「ふはははは、貧弱貧弱ぅですね!」
「うわーん! シスハちゃん強過ぎるんだよぉー!」
シスハとフリージアが格闘ゲームで遊んでいるようだ。
対戦画面の表示されたモニターを見ていたが、シスハにフリージアがストレートに3回負けて完全敗北していた。
「随分一方的にやられたな」
「だってずるいんだよ! しゃがんでずっと蹴ってくるの!」
「おほほほほ、むやみに突っ込んでくるのが悪いんですよ。悔しければ精進するんですね!」
涙目のフリージアにシスハが高笑いして追い打ちをかけている。
フリージアもそれなりに操作できるようだが、シスハの方が上手みたいだ。
俺もこの格闘ゲームはそこそこやったけど、最初の内は下段蹴りが結構刺さるんだよなぁ。
そう微笑ましいなと感想を抱いていると、煽られて悔しかったのかフリージアが泣きついてきた。
「平八ぃ! 私の仇を取ってほしいんだよ!」
「えっ、どうして俺が?」
「無理を言ったらかわいそうですよ。大倉さんが私に勝てる訳ないじゃないですかー。余裕の3タテしちゃいますよ」
「……できらぁ」
「えっ、なんですって?」
「やってやらぁ! 上等だこの野郎! お前ボコボコにしてやるぞ! ゲームで俺に勝てると思うなよ!」
「ほほう、受けて立ちましょう。もうすっかりやり込みましたからね! 大倉さんなんかに私が負けるはずがありません!」
シスハは胸を突き出してそれはそれは憎らしい表情で俺を見ていた。
こ、こいつ調子に乗りやがって! ゲームでも俺が弱いと思ってやがるな!
……ふっふ、いいだろう。
俺がこのゲームの経験者だと知らないようだし、ここはひとつわからせてやる!
という訳で俺vsシスハの格ゲー対戦の火蓋が落とされた。
その結果は……俺の完勝だ。
ノーダメージで3タテ余裕でした。
「ははは、大口叩いた割には大したことないな! 精進が足りないんじゃあないかねシスハ君。ちょっと大人げなかったかな?」
「ひ、卑怯ですよ! なんですかあの画面端でずっとボールみたいにバウンドさせるの! 何もできずにやられたんですが! あんなのチートじゃないですか!」
「ただの10割コンボさ。このゲームじゃ常識だぜ。卑怯とは言うまいな」
「ぐぬぬ……認めましょう、今は大倉さんが強いです。ですがいつか絶対バスケットボールにしてやりますからね!」
「わーい! 平八ありがとう! 仇を取ってくれたんだよ!」
悔しそうにするシスハを見てフリージアが大喜びしている。
上達するまで対戦する気はなかったが、あんなに煽られたら仕方ないよなぁ。
その後シスハにコツを聞かれたので教えてやり、フリージアと練習し始めたのでその場を後にした。
次にクレーンゲーム機の方へ行くと、ノールとエステルがぬいぐるみを取ったのかはしゃいでいる。
「やったのでありますぅ! 取れたでありますよぉ!」
「ふふ、よかったわね。だんだんコツを掴んできて早く取れるようになってきたじゃない」
「エステルのおかげでありますよ! 指示が完璧なのでありますぅ!」
ゲームセンターを増築してからというもの、ノールは入り浸ってずっとぬいぐるみのクレーンゲーム機をしていた。
クレーンゲーム機はカウンターで操作するか、30分放置すると中の景品が初期位置に戻る。
この前なんて後数回で取れる位置まで運んでポイントが尽きたせいで、ノールが泣きついてきたから俺の分のポイントをあげたぐらいにはハマってるからなぁ。
「あら、お兄さんもゲームをやりにきたの?」
「ちょっと様子を見にな。にしても何個もぬいぐるみを取ったのか。ぬいぐるみだけじゃなくてプレミアムチケットやガチャ産アイテム取ってくれよ」
「これだって特別なぬいぐるみでありますよ! なんたってSRのぬいぐるみでありますからね!」
抱えるぐらい大きいウサギのぬいぐるみを突き出してノールは自慢げだ。
ゲームセンターのぬいぐるみもガチャアイテム扱いのようで、スマホで認識して説明欄が見れた。
――――――
SRキュートなぬいぐるみ
ゲームセンターでのみ入手可能なぬいぐるみ。
部屋に置くだけで癒しの効果があるかもしれない。
とても可愛い。はい、とても可愛い。
――――――
「むふふ、見ているだけで癒されるのでありますよ~」
「うーん、ガチャ産よりは何となくかわいい気がするな。でも癒されるのは気のせいじゃないか?」
「気のせいじゃないのでありますよ! 説明にも書いてあるでありましょ!」
「そうね。私も1つ貰ったけど何となく癒される気がするわ」
「家の中に沢山置けばもっと癒されるのでありますよ! 居間にも飾るのであります!」
「ほ、程々にしといてくれよ……」
ノールの部屋は既にガチャ産ぬいぐるみで埋め尽くされているから、家全体がああなるのはちょっと……。
プラシーボ効果的な物かと思っていたが、エステルまで癒されるって言ってるし本当に効果があるのか。
何となく俺も癒されてきた気がするぞ。
それからノール達は次のぬいぐるみに挑戦し始めたので、別のクレーンゲーム機を見に行くと今度はマルティナとルーナが挑戦していた。
見たこともない種類の台で、丸い小さな落とし口が円を描くように高速で動いていて、それと逆方向にアームが同じく高速で動き目で追うのがやっとだ。
既にカプセルを掴んでいて後は落とすだけのようだが、タイミングを計っているのか2人共無言で真剣な顔つきをしている。
そしてマルティナがバチンと勢いよくボタンを押してカプセルが投下されたが、落とし口に入らず弾かれてしまう。
「くっそぉ! あと僅かなのに!」
「今回は遅かった。もっと早く離せ」
「マルティナ達もクレーンゲーム機やってたのか。見たことないタイプの台だけど難しそうだな」
「あっ、君も見に来たのかい。これ本当に難しくてなかなか取れないよ」
「うむ、絶対に1等を取りたい」
マルティナはともかくとして、ルーナまでもぐぬぬと悔しそうな表情を浮かべている。
あのルーナが寝ずに遊びに来る時点で、ゲームセンターは夢中になるようだな。
この台の説明を聞いてみると、数字が書かれた引換券が入った丸い容器が配置されていて、それをアームで掴んで落とし口に入れる典型的なタイプだ。
しかもどの引換券が容器の中に入っているか事前に確認できた。
普通なら端っこに落とし口があるけど、この台は容器と同サイズの落とし口が常に円状に移動している。
アームは落とし口と逆走して動くようで、タイミングよく容器を落とし口に入れるようだ。
しかし、それだけじゃなくてアームが容器を掴んだ途端、中の等級に合わせて落とし口とアームが移動速度を変わるらしい。
さっきの目で追うのがやっとの速度は1等で、流石のマルティナ達でさえ苦戦しているようだ。
「お前らの動体視力でもタイミング合わせられないのか」
「アームも穴も移動速度が毎回違うから難しいよ。僕もルーナさんも何度か挑戦してるんだけど、数ミリでもズレると弾かれるんだよねぇ」
「ゲームとやらはこんなに難しいのか。戦闘以外で悔しく思うのは久々だ」
「まあ簡単に景品を取られたら商売上がったりだからな。俺としては助かるけど、1等を狙わずに他の簡単なやつを狙ったらどうだ? 自分達が欲しい景品もあるだろ」
「景品を取ること自体が楽しいから、欲しい物は特にないんだよね。5等とかは何個か取ったけど、どうせなら1等を取ってみたいのさ!」
「同じく。レア物を取るのが楽しい」
どうやらマルティナ達はどれが欲しいというより、良い景品を取ること自体に楽しんでいるようだ。
この台の1等はSSRスキルアップだから、俺としてもその方がありがたい。
各々好きなゲームで楽しんでいるようだし、ゲームセンターが有意義に使われていたよかったな。
……魔石が勿体ないと思っていたが、俺も少し遊ぶとしますか。




