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アルグド山脈の探索

 アルグド山脈を目指して14日後、俺達はようやく目的地に到着した。

 遠くから見ると山の起伏がありつつ遥か先まで続く緑で染まったジャングルで、一体どこまでこの森が広がっているのか見当もつかない。

 近くまでくると木はどれも馬鹿デカくて中は日の光が届かないのか薄暗く、この中に入るだけでも勇気がいりそうだ。


「うわぁ……こりゃ想像以上の森だな」


「この森のどこかにいるシルウァレクトルを探さないといけないと思うと、それだけでげんなりしてくるわ」


「シルウァレクトル以外にも色々な魔物がいるって話ですよね。どんな魔物がいるのか戦うのが楽しみです!」


「これだけの森で幻の果実があるのなら、他にも美味しい果実がありそうでありますね。むふふ、プルスアルクス楽しみでありますな!」


「お前なぁ……採取して渡すんだから絶対に食うんじゃないぞ」


「ちょっとぐらい! ちょっとぐらいいいでありましょ!」


「アホか! 完美品を持ってくに決まってんだろうが!」


「そ、そんなぁ……」


「ノール、食べたかったら2個手に入れればいいじゃない。私も幻の果実は食べてみたいもの。1体見つけたら近くに他のシルウァレクトルもいるかもしれないわよ」


「その手があったでありますか! 気合を入れて探すでありますよ!」


 全く、幻の果実って聞いてからずっとこの調子だもんな。

 こいつ完全にプルスアルクスを食うつもりだぞ。

 ……まあ、俺としても幻の果実は食べてみたいから、是非とも2個確保して皆で味わってみたいな。

 複数体シルウァレクトルを見つけたら乱獲しておけば、他にも神魔硬貨と交換してくれる人もいるかもしれない。

 そう野心を密かに抱いている中、フリージアが目の前の森を見て飛び跳ねながらはしゃいでいた。


「わぁー! 森だ! エルフの血が騒ぐんだよ!」


「無駄に元気な奴だ」


「フリージアさんはやっぱり森が好きなのかな?」


「うん! それにここ私が住んでた森と似てて懐かしさを感じる!」


「エルフってこういう森に住んでるんだね。一度見てみたくて色々と調べたことはあるけど、エルフってどこにいるのか全くわからなかったんだ」


「私達が住む村に来るのは同じエルフぐらいだったからね。人に見つからない森の深い場所だって長老が言ってたんだよ。私も外に殆ど出たことなかったもん」


 へー、フリージアがいたエルフの里はこういう森にあるのか。

 確かに人が簡単に踏み入れられる領域じゃなさそうだし、ひっそりと暮らしたい森に住む種族としては安全だな。

 魔物だってフリージア級の強さの奴がいれば殆ど相手にならない。

 もし人が攻め込んできたとしても、森の中で狙撃でもされちゃひとたまりもないだろうなぁ。

 

 さて、とりあえずまだ森に入ってはいないけど、確認できる範囲で魔物がいるか地図アプリを見てみよう。

 運が良ければ入り口付近にシルウァレクトルがいても……ありゃ、全然赤いマークがないぞ。


「うーん、見た感じ魔物はそんなにいないみたいだな。やっぱ探すなら奥まで入るしかないのか」


「地図アプリに魔物の反応がなくても、一応注意はした方がいいと思いますよ。ここはクェレス方面ですから、トレントのような擬態系の魔物がいてもおかしくありません」


「うげぇ……そういえばここにトレントもいるって言ってたな。シルウァレクトルも蔓みたいな見た目で、なかなか発見できないって話だったが擬態系の魔物かもしれんな」


 クェレスから離れてるとはいえ、元々こっちの方面は似たような魔物が多いって話だった。

 この森も魔法の素材を落す魔物とかがいるみたいで、当然トレントも存在する。

 過去にはグランディスがここで発生したって話もしてたぞ。

 今なら楽に倒せそうだけど、あいつの相手はあんまりしたくないなぁ。

 トレントには散々苦労させられて、擬態系の魔物の相手をしないといけないと思うと憂鬱だ。

 だが、そんな気分の俺にエステルが微笑みながら忘れかけていたことを思い出させてくれた。


「あら、それならちょうどいいわね。私達には擬態を見破る達人がいるじゃない」


「ふふんーん! 私はスペシャリストなんだよ!」


「あっ、そういえばフリージアは擬態したラピスを見破れたでありますね!」


「うむ、フリージアがいればトレントも一瞬で発見できそうだ」


 そうだよ! フリージアの固有能力【神域の射手】で擬態を見破れたんだ!

 彼女さえいれば擬態した魔物なんて一目で見分けがついてしまう。

 シルウァレクトルが擬態能力を持っていたとしても、俺達なら比較的に発見しやすいはず。

 朗報を聞いた心境でこれは勝ったな……と思っていると、マルティナが不気味な笑い声を上げ始めた。


「クックックッ……」


「よし、それじゃあ出発するとしようか」


「ちょっと! 僕を無視しないでくれよぉ!」


 マルティナが俺の手を掴んで涙目で訴えかけてきた。

 自分から言わず何か聞いて欲しそうにしていたから、思わずスルーしちまったぞ。


「それで、そんな自信満々そうに笑って何が言いたかったんだ」


「話を聞いた限りだと、木とかに化けてる魔物がいるって話だよね? それ、僕も見破れるかもしれないよ」


「マジか!? そんな特殊能力持ってたのかよ!」


「クックック、僕は死霊術師だからね。生命が宿っている対象かどうか判別するぐらい朝飯前さ」


「おー、マルティナちゃん凄いんだよ!」


 いつもの調子で中二的発言をするのかと思いきや、予想外に役立つ提案だったぞ!

 さっそくマルティナは擬態した魔物を探すべく、10体の紫色に光るゴーストを呼び出した。


「擬態してる魔物を見つけてほしいんだ。頼んだよ」


 マルティナの周囲に浮かんでいたゴースト達は、お願いされると頷くように動き回ってバラバラに森へ向かって行く。

 地図アプリがあれば索敵を頼むことはないと思っていたが、擬態も見破れるとなれば話は別だ。

 しかも複数同時に飛ばせるとなれば、探索範囲も広いし効率もいい。

 デバフ以外にもめちゃくちゃ有能じゃあないか!

 ノールも同じ感想を抱いたのかマルティナを褒めていた。


「おー、ゴーストで索敵できるのは便利そうでありますなぁ。マルティナの死霊術師としての力は頼りになるのでありますよ」


「ファニャさんに褒めてもらえて光栄です。ちょっと温存していますけど、見つからないようならもっと手伝ってもらいますね」


「これで私達は探索が少なくて済む。マルティナ、助かる」


「ふ、ふん、多少はやるみたいですね。ちょっとは見直しましたよ」


 ルーナは素直に褒めているが、シスハはぷいっと顔を背けながら一応褒めている。

 褒めるのならもっと素直に言ってやればいいものを……本当に意固地な神官様だな。

 それにしてもだ。


「これ、もしかして簡単に見つかるんじゃないか?」


「私達が自力で探すよりはいいかもね。けど、こんだけ広いとゴーストでも探すのは大変だと思うわ。マルティナの力の届く範囲も限界があるから、私達もある程度奥には進まないとね」


 あっ、ここで待ってればいいかと思っていたけど、マルティナのアンデッドは離れすぎると力を維持できないんだったな。

 ゴーストだからスケルトン達よりは持ちそうだが、この広大な森を探索するには俺達も森の中を進まないといけないか。

 シルウァレクトルを見つけたらそこまで倒しにいかないといけないから、ゴーストが探している内にここにいる魔物も把握しておかないと。

 はしゃぐフリージアを先頭にさっそく俺達は森の中へ入り、彼女の案内に従ってついていく。

 フリージアの後ろを歩くと不思議なほど歩きやすくて、険しいはずの森もスムーズに奥へ進んでいける。


「うーん、こっちが歩きやすいかなー」


「さすがエルフだけあって森の中の移動はお手の物だな。いつもより歩きやすい気がするぞ」


「えへへ、それほどでもあるんだよ! 先導は任せて!」


「ふふ、頼もしいわね。フリージアがいなかったら私の魔法で辺り一帯更地にしていたところだわ」


「また恐ろしいこと言ってるでありますね……。本気でやる気だったのでありますか?」


「冗談に決まってるじゃない」


「エステルさんってさらっと怖いこと言うんだね……」


「うむ、エステルは恐ろしい。逆らわない方がいい。シスハでも泣きだすレベルだ」


「うふふ……大神官様並に怖い人が他にいるとは思いませんでしたよ……」


 エステルは凄く可愛らしいけど、あのシスハが恐怖を抱くぐらい怒らせたらマジで怖いからなぁ。

 比較的まともだけどこうやって危険な発想をし始めることも稀にある。

 実際に狩場をいくつか破壊した実績もあるしな……後で直しているから平気だと思うけど。


 そんな会話をしながら森を進んでいるが、未だに地図アプリに魔物の反応はない。

 まだ入り口付近だからあんまりいないのかと考えていると、不意にマルティナが声を上げた。


「ん、友達が擬態した魔物を見つけたみたいだ。確認してみるかい?」


「おお、もう見つけたのかよ。けど確認ってどうする気だよ」


「クック、僕は友達と視界共有ができるって言ったじゃないか。それを君にも見せてあげられるんだよ」


「そういえばそんなこと言ってたな。よし、見させてくれ」


 マルティナが俺の肩に手を触れると、視界が自分の見ているものと全く別のものへ切り替わった。

 目の前には緑色の巨木があって、どうやらこれが擬態している魔物のようだ。

 エステルも同じようにマルティナに触れてもらって視界共有をしているようで、感嘆の声を漏らしている。


「これに擬態してるのか……色は違うけど木っぽいからトレント系だろうな。だけど擬態している魔物がいるのはわかったのは僥倖だ。マルティナ、お前の能力凄いな」


「こんな風に見えるのはちょっと不思議な感覚ね。他人にも見せられるなんて凄いじゃない」


「えへ、えへへへへ……そ、そんなに褒められると照れちゃうな」


「わー! いいないいな! 私にも見せてほしいんだよ!」


「も、もちろんだよ!」


 マルティナに視界共有をしてもらうと、フリージアは森に来た直後と同じぐらいはしゃいでいる。

 これは思っていた以上にマルティナの探索は頼りになりそうだが……この広い森のどこにシルウァレクトルはいるのだろうか。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「私達が住む村に来るのは同じエルフぐらいだったからね。人に見つからない森の深い場所だって長老が言ってたんだよ。私の外に殆ど出たことなかったもん」 私の他に? 私は外に?
[一言] 言葉遣いが痛いだけで、一応は常識人枠のマルティナ
[良い点] ゴーストのうなずきが良い [一言] 一個目を手に入れる前から二個目を考える 危険な兆候 苦戦の描写が見られそう
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