一歩前進
地面に埋まった金貨を見つけた後、地図アプリを確認しながら洞窟の探索を続けていた。
その結果さらに3つ埋められた箱を発見。中には金貨が詰まっていて、フリージア達は大喜びしていた。
「わーい! 沢山お宝見つかったね!」
「まさか天井や地面に痕跡を残さず埋め込んでいたとは思いませんでしたね。普通に探索しただけじゃ見つからない訳ですよ」
最初に見つけたような床に埋まっている物だけじゃなく、天井や壁の中にも同じように埋められていた。
それぞれの箱にはやはり黒い硬貨が1枚入っていて、刻印がどれも違っている。
金貨のように価値のある物かわからないけど、何かしらの意味があるのかもしれない。
「こんな隠し方をしていたのに、どうして残っていたのでありましょうか。持ち主はどうしたのでありますかね?」
「取りに戻ってこられない事情でもできたんじゃないか。ここも隠れ家のような場所だしな」
「洞窟を使っていたのは何者だったのかしらね。痕跡も残さずに埋める魔法や、特別な箱まで用意できるなんてただ者じゃないわよ」
「ふむ、洞窟自体手が加えられている。快適に過ごせる環境、私の寝床候補に入るほどだ」
寝床候補って……まあ、ルーナがそう言うぐらい手が加えられていてただの洞窟じゃない。
それに地図アプリじゃないと見つけられない宝の隠し方。
少なくとも魔導師がここを使っていたのは確実だ。そしてそいつはここに戻れずお宝は残ったまま、と。
漁師さん達から聞いた話だと海賊だとかそういう類がいたって話は聞いてないし、何者が使っていたのか見当も付かない。
正体は気になるところだがわかるもんでもなさそうだし、お宝はありがたくいただいておこう。
まだお宝が埋められていないか地図アプリと睨めっこしていると、ふとある地点に目がついた。
行き止まりになっている部屋なのだが、その中にはかなりの数の赤い点が存在している。
「ん? この行き止まりの部屋、妙に魔物が多いようだな。湧き場所かもしれないぞ」
「ついに魔物が湧く所まで下りてきたのね。この先はどんな感じなの?」
「ほぼ一本道で下まで続いているな。上の方に比べると部屋は少ない」
「部屋が少ないとなると、一体何のために下まで掘り下げているのでありましょうか。最深部に何があるか気になるでありますね」
今俺達がいる場所は部屋がいくつもあって魔物もいるが、この先は一本道で下りていくようだ。
1番下がどんな感じになっているか見えないぐらいには深い。
それなのにその途中に部屋のようなものが見当たらないのは不自然に思えるが……むしろ重要な物を隠すからこそただ一本道でひたすら奥に掘り進んだ可能性もある。
最深部には宝物庫があって、お宝がザックザクというのもあり得る話だ。これは是非とも奥まで行きたい。
が、それよりも俺は魔物が沢山いるであろう行き止まりの部屋が気になっていた。
「なあ、ちょっと行き止まりの部屋に行ってもいいか?」
「何か気になるものでもあったの?」
「見た感じ宝とかはない。だけど試してみたいことがあってさ」
「試したいこと? お兄さんがそう言うなら別に行くのは構わないけれど」
「助かる。それじゃあ向かうとするか」
エステル達は首を傾げていたが、さっそくその部屋へと向かう。
到着するとやはりただの行き止まりの部屋で、中には沢山のアステロピスキスが壁に張り付いていた。
青いアステロピスキスもいて、あれが希少種に違いない。
「魔物がうじゃうじゃいるでありますね。まるで巣のようでありますよ」
「称号なしにここに入ったら、四方八方から突き刺そうと飛んできそうですね」
「こんな場所で何をするつもりなの?」
「ふふふ、それは試してからのお楽しみってやつさ。とりあえずこの中の魔物を一掃するか」
「それはいいでありますが……何をするつもりでありますかね?」
ノール達は意味がわからないとまた首を傾げつつも、特に苦戦することなくアステロピスキスを全滅させた。
青いアステロピスキスはやはり希少種で、特段強い訳じゃなくまとめて倒し魔石を入手。
全滅後しばらく待つと、光が集まり魔物が湧き出し始める。
「よし、ここが湧き場所で確定だな」
「そんなことの確認にわざわざ来たんですか?」
「おいおい、俺の意図にまだ気が付かないのか。ここはある意味探し求めた場所じゃあないか?」
「探し求めた場所……でありますか?」
「平八何か探してたの?」
全く、どうやらまだ俺がここに来た意味をわかっていないようだな。
宝探しに夢中で大切なことを忘れているじゃあないか?
だが、エステルだけは意図に気が付いてくれたようで、俺の考えを言い当てた。
「もしかして魔石集めの罠を作る場所ってこと?」
「正解! さすがエステルだな」
「ふふ、褒めてもらえると嬉しいわね。でもそんな上手くいくかしら」
「さっき魔物の湧き場所は魔素が多いって言ってただろ? なら、湧き場所は魔力を補充する罠を張るのに最適なのではないか? そしてここは人が滅多に来ない洞窟で、魔物もある程度いる場所が限られる。この条件なら外より作れる可能性は高い、そうだろう?」
そう、この場所は自動魔石トラップを作る場所として十分候補地になる可能性を秘めている。
洞窟へ入る前にエステルが湧き場所は魔素が濃いって言ってたから、頭の片隅にその考えが浮かんでいた。
そして中の状態を確認して実際に湧き場所を見て、これはいけるだろうと試しにきたのだ。
俺の考えを理解したノール達は呆れ混じれな雰囲気をしていた。
「ガチャが関わった時だけは本当に頭が冴えるでありますね……」
「馬鹿野郎! ガチャが関わってるのに頭の回転が速くならないとか正気か!」
「今の方が正気に見えん」
魔石自動化の可能性を感じたならこれぐらい考えるのは普通だろ!
正気も正気、ド正気だぞ俺は!
「うーん、お兄さんの言う通りここは魔素が多いわ。自動的に発動する魔法を仕掛ければ、普通の場所に比べて必要な魔力が貯まるのは早いかもね」
「やっぱりか! それなら今すぐ――」
「けど、この空間全体を攻撃するとなれば結構魔力が必要になるから、期待しているほど効率は良くなりそうにないわよ?」
「えっ……マジか」
「魔物だけを感知して襲う魔法とかはできないんですか? エステルさんなら朝飯前ですよね」
「出来なくはないけれど、そういう機能を仕込むと複雑になるから使う魔力も多くなるの。繰り返し発動する魔法となればなおさらね。単純に一定範囲を攻撃する魔法の方がまだ効率としてはマシだわ」
なん……だと。魔素が多いならそれこそ数分おきに発動できるかと思ったけど、そんなに甘いもんじゃなかったのか。
部屋の広さは大体縦横100メートル程度の大きさ。ここ全体を攻撃するとなると確かに魔力は結構使いそうだ。
魔物だけを狙い撃ちして消費を抑えるのは俺も考え付いたが、その方が逆に消費が多くなるのか……魔法ってやはり難しいな。
エキスパートであるエステルが言うんだから間違いはないだろう。
うへー、せっかく自動化できるかと思って期待していたのに……。
ガクリと肩を落としていたが、エステルは俺を励ますように提案をしてきた。
「それでも外で探すよりかは可能性は高いと思うから、試してみるのはいいんじゃない。どうする?」
「エステルがそう言ってくれるなら一応試してみるか」
そうだ、試してみる価値は十分にある。
いきなり成功しないなんて当たり前なんだし、こうやって試行錯誤して徐々に自動化へ近づいて行けばいいんだ。
閉所でどんな風になるのか今後の参考にもなるしな。
「ちなみにだけど、こういう場所で魔物を倒すならどんな魔法を使うんだ?」
「そうねぇ……1番楽なのは入り口を塞いで中を真空にしちゃうとか。あっ、魔物だとそれでも即死するかわからないし、そもそも魔石が入るか怪しいわね。やっぱり手っ取り早く爆破かしら? だけど洞窟内だと崩れる可能性もあるかも……風でバラバラ……光で消滅……闇で圧縮……うーん、選択肢が多いのも困りものね」
「物騒な呟きが聞こえるのでありますが……」
「ま、まあ多少物騒なことを言うぐらい可愛いもんさ」
「多少ではない気がするのでありますけど……」
しばらくエステルは頬に片手を当てて考え込むと、パンと手を叩いてニッコリと笑った。
おっ、どうやら使う魔法が決定したらしい。
「うん、ここはシンプルに雷にしましょうか」
「それでこの部屋の魔物全部仕留められるのか?」
「壁に張り付いているから問題ないと思うわ。とりあえず仕掛けちゃうわね」
部屋の外の通路へ出ると、エステルは目を閉じて少し溜めを作ってから杖を振りかざした。
「うーんと……えいっ!」
部屋の天井の中央に魔法陣が浮かび上がり、直後に地面へ雷が落ちる。
雷は全方位へ滑るように地面を走り、壁を登って天井まで到達し部屋全体に広がった。
壁に張り付いていたアステロピスキスは感電しプスプスと煙を上げ地面に落ちると、光の粒子になって消えていく。
上手く魔法が制御されているのか、俺達のいる場所には一切届いていない。さすがエステルさんだ。
「おー、全部倒しちゃった! 凄いよエステルちゃん!」
「これぐらい当然よ。消費魔力を抑えるのに威力は絞ったけど問題なかったわね。後は魔力がどのぐらいで貯まるかだけれど……」
そう言ってエステルはジッと天井の魔法陣を見つめている。
どうやら次の発動を待たなくても魔力の貯まり具合がわかるようだ。
「うーん、そうね。次に使うまで2時間ってところかしら」
「早いには早いけど、貯まるまで時間がかかるな」
「自動型の魔法だから仕方ないもの。後、問題があるとすれば、魔素を吸収したせいで魔物の湧きに影響があるかどうかね。入り口を塞いで地形を変えた影響も確認しておきたいわ」
「確かに湧き場所の魔素が減るのと、地面とかに手を加えた場合どうなるか気になるな」
今まで湧き場所に手を加えたことってないからな。
あるとすればエステルによる爆撃で湧き場所がボコボコになったぐらいだが……一応後で修復はしているけど。
この機会に色々と湧き場所を弄ってみるのもありかもしれない。
それにしてもだ。
「そう考えると、魔物ってどうやって発生してるんだろうな。召喚みたいなものなのか?」
「それこそ考えてもわからないことね。そうなっているからそうとしか言いようがないもの」
うーむ、魔素が関係していそうだけど、結局魔物の発生する原因はよくわからないな。
魔人であるマリグナントはある程度魔物の発生を制御していたっぽいから、絶対何か法則があるはずだ。
これさえ解決できれば魔石集めももっとスムーズになりそうなのだが……魔石自動化より難しそうだけど。
今はただ魔石自動化に向けて色々試すだけにしておこう。
「これを他の部屋にも設置できれば、1つ1つは遅くても結構な魔石の稼ぎになりそうですよ。湧き場所は他にも残っているんですよね」
「ああ、このままお宝探しは継続して、湧き場所にも行って罠を仕かけるとするか。湧き場所によって魔素の多さも変わってくるかもしれないしな。……ぐへへ、こりゃとんだ収穫だぜ」
「大倉殿にとってはこっちの方がお宝でありますね……」
「うむ、魔石に目が眩んでいる」




