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俺が魔族軍で出世して、魔王の娘の心を射止める話(の予定)  作者: 遠野空
第六章 今度こそ砦攻略(の予定)
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今度こそ、砦攻略(の予定)――その6



 ――その6





「戻ったって命令違反で殺されるって。もうわかってるだろ、そんなこと?」


「待て、ナオヤ。その命令を出した当事者は、ここにいるのだぞ。あたかもマヤが諸悪の根源みたいに言うでない」


 むくれたマヤ様がすかさず隣から口を出した。

 そういや、元々の命令を出したのはこの人なのだった。しかも本人はさっぱり心配してそうにないのが、困ったもんだわな。

 頬を膨らませて怒る様子も可愛いので、全然腹が立たない俺も、全く困ったもんだが。

 ほけっと考えていたら、続けざまに言われた。

「そもそも父上も、『ナオヤに任せておけば安心だ』と仰せだった。なのに、本人がじめっとした暗い顔をしていてなんとする!?」


「ほっといてください! これは地顔ですよっ」

 思わず言い返し、俺は慌てて周りを見る。

 ダークプリンセスが俺と話す場面がよほど珍しいのか、兵も将もこっちに大注目していた。特に、新参のネージュの驚き顔が気になる。

 遠慮ナシにじろじろ見過ぎだろ。




「あの、マヤ様。とりあえずそろそろ日も暮れます。打ち合わせのためにも、少し皆と離れて話しませんか?」

「うん、それは賛成だ」

 マヤ様は即答した。

「ナオヤの周りは、どうも女が多くて駄目だな」

 膨れっ面のまま、こちらを窺うエルザやミュウやネージュなどを見やる。ミュウ以外は、あからさまにさっと目を逸らしたね! 

「それはまた、どうしてでしょう? 俺の記憶からして、魔族軍の中で見たら、女子率はむしろ少なめだと思いますが」

 首を傾げて訊き返すと、マヤ様はきょとんとして見返した。

「えっ」

 薄赤い瞳を瞬き、不思議そうに問う。


「そうだな、確かに少ない方だ。……どうしてなのだ?」


「いえ、俺が訊いてるんですが」

 問い返しても顔をしかめて考え込んでいるので、俺は肩をすくめて言った。

「まあ、とにかく我々だけで」

「う、うん」





 とはいえ、所詮は行軍中の田舎街道沿いだ。

 宿があるわけではなし、全軍を停止させ、俺はマヤ様のユニットハウス……みたいな御輿みこし部屋に移った。

 無論、俺が要請したわけじゃなく、マヤ様の提案である。


 侍女達は慣れているのか、ものの十五分ほどで持ち運んできた木材パーツを組み立て、あっという間に臨時の部屋が出現した。

 ナントカカプセルの利便性には負けるが、実に便利である。

 さすがに、部屋の中は小さな丸テーブルとベッドくらいしかなかったが、打ち合わせというか軍議をするなら、これで十分だ。俺だけじゃ話にならないので、ギリアムも呼んで三名で話し合うことにした。

 マヤ様と一緒に軍議と聞き、ギリアムの顔色が随分と悪かったが、まあ今回は仕方ない。



 メイド服の侍女達が紅茶をそれぞれの前に置き、一礼して退出していった。

 それを待っていたかのように、俺は臨時で作った敵の砦の図面を持ち出す。ちなみに、情報が古いので、この部屋を組み立てている間、斥候役のヨルン達に新たな建設箇所をペンで書き加えてもらってある。

 それを広げて見た途端、俺は声が洩れたね。


「うわぁ……こりゃホントに完成しちゃってるし」


 伝聞に過ぎないが、問題の砦は国境付近に連なる低い山の切れ目にある。

 そこを通る軍道の、なんとド真ん中に建てられているのだ。

 ただし、以前はまだ、砦の左右に城壁まではできてなかったはずだ。だからこそ、魔族軍も被害を出しつつも、砦の左右を強引に通過して、帝国領へ出て行くことができた。

 しかし今、この図面に書き加えられたペン書きの黒い線を見ると、もはや砦の左右にはきちんと城壁ができていて、完全に軍道を塞いでしまっている。

 現時点で、この軍道は帝国によって実効支配されてるのと同じだ。


「これは……まずいですね。どうせ即席で建てた石積みの城壁でしょうが、それでも我々程度の軍勢を迎え撃つには十分でしょう」

 マヤ様への恐怖も忘れ、ギリアムは嘆息した。

「こうなると、もはや普通の城と変わりません。いや、普通の城より始末が悪いです。なにしろ敵は、東方向から来る敵のみに注意を払っていればよいのですから」

 途端にマヤ様がギリアムを睨んだ。

「そこの者、いちいち不利な点ばかり挙げるでないっ」

「す、すみませんっ」

 ギリアムはたちまち緊迫した。

 おまけにマヤ様はそんなギリアムをしげしげと見て、しれっと述べたりする。


「時にそなた……どうも見覚えがあると思ったら、あの時出荷場にいた男だな? ふむ……元気そうで何よりだ」


 真面目くさって頷いているが、ギリアムは魂の抜けたような顔で返事もできないようだった。まあ、あれだけインパクトのあることされたのに、相手は顔も覚えてないとなれば、無理もあるまい。

 俺はもう慣れてるので、いちいち驚かないけどな。

「ところで、ギリアム」

 遠慮なく、二人に割り込む。

「この砦の左右に連なる山だけど……そう高くないように見えるよな、この図面じゃ」

「確かにさほどの山ではありませんが、しかし東側の斜面はほぼ垂直に近いのです。しかも、迂闊に山を登り始めたりすれば、砦から矢雨が降り注ぎましょう」

 さらに、とギリアムは畳みかける。

「この砦を中心とした、かなり広い範囲で、マジックシフトが敷かれていると聞きます」

「なにそれ?」

「簡単に言うと、魔法を無効化させる複数の魔法陣です。有効範囲内では、何者も魔法を使えなくなります」

「むう」

 俺は唸ったが、しかしどのみちそっちはあんまりアテにしてない。



「でも、この地形は使えるかもしれないと思うんだ。場合によっては、だけど」


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