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望まぬ出会い――その13




――その13





 お、同じって、これって俺の特殊能力かナンカなのか。むしろ、単なる気の迷いでそう見えてるだけだと思ってたのに!

 そう思ってびびった瞬間、いきなり世界は正常な流れを回復し、一斉に周囲の喧噪けんそうが戻ってきた。


「えっ!? ナオヤさん、いつの間にっ」

 ころんと可愛く転んだミュウが、今更のように驚いていた。

「うわっ、ホントだ。こりゃ偶然じゃないやっ――て、うおうっ」

 危ないところでレイバーグの剣撃が喉元を掠め、俺は大きく飛び退すさる。あ、あぶねーっ。喉をかすったじゃないか! したたる血の筋を感じ、俺は青ざめた。

 幸い、過剰に俺を警戒してるのか、向こうもすぐには斬りかかってこなかった。



「なるほど、肉の盾に使うためと称し、無駄とも思える召喚を繰り返していた理由は、これか」

「これって……どれだ?」

 まだ完全に動揺が抜けてない俺は、ドモりつつ訊く。

 レイバーグは哀しい笑みと供に首を振った。

「君と僕は、ある意味では特別なんだと思う。もちろん、人としてではなく、戦士としてだけど。お互い、妙な運命を背負ってこっちへ飛ばされてしまったようだ」

「おい、自慢じゃないけど、俺は鋭い方じゃないんだよ。赤点がデフォだった俺にも、ちゃんとわかるように説明しろ」


「……のんびり説明している時間などない。あいにく、君との勝負も先延ばしにする以外はないようだ。ただ、もし興味があるなら、この大陸の歴史を詳しく調べてみるといいよ」


 レイバーグが謎めいたことを言った。

 詳しく訊きたかったのは山々だったが――ちょうどその時、俺達が出てきた魔王城の本棟から、やかましい足音と共に、どっと兵士の群れが溢れ出てきた。

 先頭にはヨルンがいて、俺を見てせわしく手を振っている。

「おおっ、まだ無事だったか! 安心してくれっ、援軍のお出ましだぜぇええええ」

「ヨルンっ」

 ほっとして叫ぶと、良いことは重なるものである。

 城の別棟、つまりこの空中歩道が行き着く先の建物からも、ばらばらと兵士が走り出てきた。あっちはあっちで、誰かが異変を見つけたらしい。こうなると、空中歩道の両側から兵士が迫る形なわけで、形勢は一気に逆転したと言えるだろう。

 俺は、未だに橋の真ん中で泰然たいぜんと立つレイバーグを見て、呆れちまったね。

 もっと早くズラかっていれば、ひょっとして逃げ切れたのかもしれないのに。




 さらに――奴にとっては駄目押しとも言える援軍まで来た。

 俺の頭上に黒い影が差し、押し寄せようとしていた兵士達が、軒並みその場で急停止してしまった。

 なぜか皆、一斉に夜空を見上げたかと思うと、次々と平伏していく。

 例外なく、あのかっこ悪い拝礼のポーズを取って、震えていた。


「……なんだよ? て、うわあ」


 遅れて見上げたところ……なんと魔王陛下が黒い翼を広げて空中に浮かんでいた。

 ちょっ――この人、空を飛べたのか! つか、あの天使みたいな翼(ただし真っ黒)って自前かぁ。

 魔王ともなると、なんでもアリだなっ。


「グレイルの愚か者めが、捕虜について馬鹿な使者を寄越したのでな」


 陛下は未だ宙に浮いたまま、特徴ある深い声音で説明し、俺に小さく頷いた。

「強情なナオヤがさぞかし困っているだろうと思い、帰還を早めたのだ。しかし――」

 と既に真紅に染まった瞳が、じろりとレイバーグを見据える。

「予の居城に、招かざる客人が来ているとは……これは予想外であった」


「――! 魔王ナダルかっ」


 あの、全てにおいて余裕ぶっこいていたレイバーグが、さすがに表情を改める。

 まあ魔王陛下の登場となれば、当然だろう。

 これでまだナメた態度取ってたら、こいつは神に等しい全能の戦士か、あるいは本物の馬鹿である。


「お主の名は訊かずともわかるぞ、レイバーグとやら。いずれ、決着を着けるつもりであった」


 陛下は悠然ゆうぜんと下降して空中歩道に降り立つ。途端に、背中の翼は綺麗に消えてしまった。

 いちいち驚くよな、おい。なんと、収納自在かい!

「ふん? 予の仕事を減らしてくれたようだな」

 陛下はグレイルとその一党の死骸をざっと眺め、冷静に呟く。

 その後、右手を水平に伸ばした……あのマヤ様と同じく。

 たちまちその手に、レイバーグの刀を上回る、長大な剣が握られた。見たこともない漆黒の剣だが、色よりそのデカさにびびるわ。ご自分の身長より遙かにでかいぞ、おい。

 マヤ様の剣の趣味は、父親譲りだったらしい。

「皆は下がっているがよい!」

 陛下が短く命じた。

 無論、あえて異議を唱える命知らずは、この城にはいないだろう。

 


 ここまで悪条件が重なると、他人事ながら、俺は絶体絶命のレイバーグを心配しちまったが――。

 むしろあいつは、ゆっくりと微笑を広げるところだった。(色んな意味で)大丈夫なのか、こいつは?

「貴方との勝負も、もちろんいずれはせねばならないだろう、魔王陛下」

 レイバーグは慇懃いんぎんこの上ない態度で深々と一礼してみせた。



「しかし、これから忙しくなるのは、むしろ貴方の方でしょうね」



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