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望まぬ出会い――その12




 ――その12





「……そうか、君があの、ナオヤ・マツウラだったか」


 レイバーグが駄目押しのように言う。

 途端に、ぞくぞくするような殺気が押し寄せてきた。うわ、最悪じゃないかっ。



「えっ、えっ? なに、どうしたの?」

 ついに本当にしゃがみ込んだ俺を見て、駆けつけたエルザがきょとんとした顔で尋ねる。しかしそれも、レイバーグの方を見るまでだった。

「う、うわぁ、すっごい二枚目さん!」

 声にとろんとしたものがまじっていて、俺は大いにむっとした。

「アレは敵だよっ。つか、元はルクレシオンの人間だったのに、レイバーグを知らないのか」

「知らないわよぅ、あたしなんか下っ端の間諜かんちょうだモン……でも、へぇー、あれがレイバーグさんなの? かっこいいじゃない!」

 凄くわくわくした口調だった。


 つか、さん付けかよ! 下手したら、即、向こうにつきそうである。これだから美人は信用ならんっ。

 俺はまたしても日頃の持論を確認し、重い腰を上げた。

「ところが俺は、今からあいつと戦うんだよ」

 俺のきっぱりした声に、ギリアム達が大きく息を吐く気配がした。みんな、固唾を呑んでことの成り行きを見守っていたらしい。……結論は出ているだろうに。


「そう、僕らは戦う他はない。……いずれにせよ、僕はいつか君を探し出して倒すつもりだった」


「そ、そんな!」

「レイバーグさまっ」

 ジェイルとセシールが慌てて駆け寄ったが、レイバーグはそんな二人をきっぱりと押しのけた。

「悪いが、下がっていてくれ。僕は、リグルスのかたきを取らねばならない」

 長大な刀を正眼に構え、俺をじっと見据える。

「ナオヤ、君は多分、別に好き好んでリグルスを殺したわけじゃないとは思う。だけど、僕にとってはあいつは親しい仲間の一人だったんだ。短い間ではあるけど、文句も言わずに僕についてきてくれた……彼の無念を晴らさせてもらう!」

「せっかく会ったんだし、先に伝えておく」

 レイバーグの挑戦を無視して、俺はぼそっと告げた。

「戦いの最中、リグルスと少し話したんだ。ヤツは言ってたよ……おまえの行く末を見届けたいって」


 言いつつ、俺は柄にもなくしんみりとした。

 偶然なんだろうけど、これはあのダヤンが最後に残した言葉と共通してる。ああ、俺達は二人共、得難い仲間を失っちまったな。

 もちろん、だからと言ってこの戦いを回避する気はなかったけど。どうせ話し合いで片が付くとは思えないんだし、なら、他人に任せずに自分で戦うのみだ。

 背後ではそろそろギリアム達が騒ぎ始めていたし、しかも城の方から甲高い笛の音もする。あれは警備兵を呼びつける音だ。

 おそらくヨルンが、そこら中に異変を伝えている最中だろう。あと一分も待てばどっさりと援軍が来そうだが、あいにくこいつは、その到着をのんびりと待ってくれそうにない。



「感謝する」

 悲壮な決意を固めていると、レイバーグがなぜか低頭した。

「よく、最後の言葉を教えてくれた。……せめて、苦しまないように倒すと約束しよう」

「あ~、やっぱり俺、おまえが嫌いだな」

 俺は苦笑して首を振った。

 そういや元の世界のクラスでも、こいつみたいにイケメンかつ、やたらと自信に溢れたヤツがいたよな。もちろんひがみなんだが、この際はそれで上等だ。どうせ敵だしな!

「……やはり僕らは、どこまで行っても敵同士のようだな」

「そうさ、言うまでもないだろっ。こいよ、レイバーグ!」

 後ろでギリアムが「ここは臣下の私が先にっ」とか、エルザの「ええっ、勝てるわけないし!」とか、ネージュの「あたしが戦うんじゃなくてよかった!(おいっ)」等の声がわんわん聞こえたが、もう俺は相手にもしなかった。

 どのみち、レイバーグもジェイルとセシールの半泣きの声を制止して、ぎらっと目を光らせている。


「必ず倒す!」

「こっちのセリフだぁーーーっ」


 二人同時に、ぱっと相手に向かって疾走する。

「ナオヤさんっ」

 寸前でミュウの叫び声が聞こえたが、無視。

 しかし、途中でレイバーグが、かっと黒い瞳を見開いた。


「さらばだ、ナオヤっ。ドラゴンバスター!!」


 ――おまっ。い、いきなりそれで来るかっ。

 走りながら、俺は戦慄せんりつした。せめて、何合か斬り合って様子見とかおまえ――。

 色んな思いが去来したその瞬間、レイバーグの長身がぐわっと巨大化した。もちろん本当に巨人化したんじゃなくて、神速のダッシュのお陰でそう見えるのだろう。


 こ、これは駄目だ、斬られるっ。速すぎて、腕を上げる暇もないし!


 俺の心が死を覚悟したその時――以前にも覚えのある感覚が来た。

 これは……そう、あのリグルスと戦った時と同じだ。

 目の錯覚は消え、残像を引いて疾走していたはずのレイバーグの身体が、俺の目にはスローモーションのようにゆっくりと映った。

 そればかりか、なんと俺を追い越して前に出ようとするミュウの動きまで、きっちり見えた。この子、健気なことに、俺を突き飛ばして自分が盾になるつもりだったようだ。


 俺は焦り、まだこのスローモーション化が続いてるうちに、まずはミュウを断固として横へ突き飛ばした。彼女の体勢が崩れるのを確認した後、間近に迫ったレイバーグに刀を振り上げる。

 よし、まだ妙なボーナスステージは続行してるらしい。なら、このまま斬ってやる!

 ……と勝利を確信した時、レイバーグの目がぱっと俺を見た。う、嘘だろっ。



「君も、僕と同じだったのか!」



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