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望まぬ出会い――その4

 



 ――その4





 結局、俺はネージュを上等戦士として採用し、臣下の中に加えることにした。

 魔法の援護がいかに重要か、それは先の奇襲でもばっちり証明されたしな。他にもギリアムをささっと上等戦士に引き上げたり、エルザとミュウを奴隷の地位から二等戦士に引き上げたりと、できることは全てやった。


 残念でならなかったのは、俺の生還を泣いて喜んでくれた獣人のボンゴは、今の俺がどうがんばろうと、奴隷の地位から引き上げられなかったってことだ。

 今は、奴隷頭から奴隷の一番上の奴隷長にしてやるくらいがせいぜいだった。それでも随分喜んでくれたが、本当に悔しい。

 獣人は奴隷以上の地位にはできないって原則があって、その壁は俺にもどうにもならないのだな。

 まあ、今後の課題だろう。


 そして、俺の臣下用のリングの色を黒に決めたりとかいうどうでもいい用事から、ミュウとエルザ用に王宮の外に部屋を借りてやるなどの私用やら、あと、またぞろ持ち上がった「今度こそ、ちゃんと砦を攻略してくるがよいぞ」というマヤ様の命令にぶったまげて、ギリアムと策を練ったりしてるうちに、瞬く間に一週間が過ぎた。

 事件の予兆は、早くもその朝にはあった。

 ギリアムが早朝から王宮の俺の部屋を訪ねてきたのだ。





「実は、ルクレシオン帝国の王子と王女が我が軍の捕虜となり、帝都に到着しております」


 応接室に案内された彼は、座るなりそう述べた。

 それはいいが……またしてもお茶の用意のために部屋を出たミュウの背中を見送り、不審そうに俺に訊いてきた。


「ところで、ミュウと暮らしているのですか」


 顔が赤くなったのが実感できたね! いや、そうまっすぐ訊かれるとは思わなかった。

「いやっ。王宮の外に、ちゃんと部屋を借りてやったさ。でも、本人が一人だと落ち着かないそうなんで、落ち着くまでうちにいるということで今はその」


 ……つか、よく考えたら、それって一緒に暮らすってことか。 

 でも俺、ホントに別居してるのと変わらない生活送ってるしな。そもそも、このところは女の子といちゃいちゃしてる暇なんかなかったし。

「そう……ですか」

 幸い、ギリアムはそれ以上突っ込まず、遅れてお茶を用意して出て行くミュウをちらっと見た後……用件を続けてくれた。



「話を戻しますが。彼らは奴隷として、今は一応、私が預かっております」

「えっ?」

 俺は驚いて、ティーカップ持つ手が止まったね。

 だが、ギリアムは驚く意味を取り違えたようで、全然関係ない説明をした。

「あ、お忘れですか? 私は奴隷の出荷場の総責任者でもあります」

「いやいや、それは覚えているさ! そうじゃなくて、王女と王子なのに、奴隷担当のギリアムが預かるのか」

「はあ?」

 まだギリアムはよくわかったない顔つきだった。


「そもそもの発端は、マヤ様が捕らわれかけたことにご立腹なさった魔王陛下が、帝都から増援を多数送り込み、国境付近を徹底的に警戒させたのです。その警戒の網に、ルクレシオン帝国の王族が引っかかり、まとめて捕らえられたというわけです」


「王族ともあろう者が、国境くんだりで何してたわけ」

「どうやら、前線兵士を激励するために、内密に訪問していたようです」

 あー、なるほど。お忍びってヤツね。こっそり来て、兵士に有り難いお話をしたり、もしくは活を入れると。

 しかしこの人、まだ俺が本当に訊きたいことがわからないのな。

「そりゃわかったけど。敵とはいえ、王族なら捕虜としても特別待遇になるんじゃ?」

「どうしてでしょう? 敵は敵であり、王族といえどもそれは変わらないはずですが」

 ギリアムはむしろ首を傾げていた。

「捕らえた以上、奴隷として扱うのが適当ではないでしょうか。まあ、魔王陛下からはまだ扱いの指示が来てないのも事実ですが」


 駄目だ、この人。

 すっかり、魔界の価値観に染まってるな。

 とはいえ、この世界じゃ帝国側でも同じようなもんかもしれない。なにせマヤ様だって、リグルス達に、荷物よろしくトランクの中に押し込められていたわけで。

「じゃあ、それは今は置いて。……俺にそんな話を持ってきた理由は?」


「そのことです。私も迂闊でしたが、私は出荷場の責任者とはいえ、今はナオヤ様の臣下であります。そこで、魔王陛下の指示が来る前に、まずナオヤ様の指示を仰ごうかと、かように思いました」


 ……それを先に言えって。話が回りくどすぎ。

 もちろん俺は、すぐに移動を申し渡そうと思ったが、その前に、問題の王族とやらに会ってみることにした。

 もしかして、俺が最初に会った鬼その1とその2みたいな連中だったら、警備兵の多いそういう場所の方が安全かもしれないしな。

 というわけで、俺はギリアムに案内を頼んで、早速出荷場に出向いた。


 ……それが、さらに難儀なヤツに遭遇する、第一歩となるとも知らず。





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