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俺が魔族軍で出世して、魔王の娘の心を射止める話(の予定)  作者: 遠野空
第四章 ダークプリンセス、魔王に喧嘩を売る
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ダークプリンセス、魔王に喧嘩を売る――その6



――その6





 でっかい声に驚いたのか、幸い、マヤ様は目を丸くして黙ってくれた。

「親子喧嘩はやめましょうよ。命令無視についちゃひとっつも後悔してない俺ですが、だからといってこれが褒められたことじゃないというのは、わかってますし」

 ここは一つ、理性的な意見を出してみた。


「ば、馬鹿者っ」

 マヤ様が何か言う前に、震え上がっていた樽おっさんのクロードが口を挟んだ。

「後悔してないとはなんだ、奴隷上がりの分際で。先程の魔王陛下のお言葉を聞いてなかったのか! 厳罰に決まっておるわっ」

「そうだそうだっ、死刑だ!」

「そもそも、命令無視をするだけあって、貴様は生意気だ」

「この争いも貴様のせいだぞ!」

 クロードの怒声に、他の三名も次々と追従する。

 おい、なんでんかんでん、俺のせいかい!?


 て……あれ……ちょっと待てよ。


 俺はむかつくおっさんは無視して、首を傾げた。

 そう言えばさっきから魔王陛下は「例外が認められた例はないな」と口にした後、反抗したマヤ様に対して「それでもナオヤを斬ると言えば、なんとする?」とか何とか続けただけだ。


 俺も今気付いたが、よくよく振り返れば、魔王陛下はまだ一度もご自分の考えを口にしてはいない。全て相手の問いに答えただけなのだ。

 それをこの樽共は、自分の都合のいいように解釈してるんじゃないのかー。

「早く床に額をこすりつけ、お二人に謝罪するのだ。その後で正式に死罪を申し渡して」


「やかましい、黙れえっ」


 いきなり俺がどやしつけると、軍議の間の中が一瞬で面白いように静まり返った。

 おっさん四名なんか、顎を落として魂飛ばされた顔してやがる。多分、生まれてから一度も怒鳴られたことないんだろうな。けっ。

 ……逆に、マヤ様はなぜか上機嫌になって、きらきら輝く瞳で俺を眺めていた。抱き寄せる手にも力が入ってるのがわかる。


 そのことに力を得て、俺は続けることにした。

 つか、どうせ死刑なら、遠慮する意味なんかないしな。死ぬ前くらいは言いたいことを言わせてもらうぞ。

 元自殺志願者をナメんなっ。


「魔王陛下! 失礼ながらこのナオヤ……まだ魔王陛下の真のお考えをうかがっておりません。どうせ死刑なら、せめて魔王陛下の口からそう仰ってください。マヤ様の父君である魔王陛下に死をたまわるなら、俺も諦めがつきましょう」


 口べたな俺だが、この時ばかりは必死こいてセリフを考えた。

 ゆっくりとしゃべったせいか、何とかトチらずに最後まで言えた感じだ。

 有り難いことに、マヤ様も俺が話し終えた途端、すかさず口添えしてくれた。

「言われてみれば道理です。父上、とくとお聞かせ頂きたい。この一件、父上はどのようにお考え――」

 途中でマヤ様は、やや濃いめの眉をひそめた。


「なにか、おかしいことを申しましたか?」


 ――えっ。

 マヤ様の鼻梁の高い横顔と、真っ白な肌(とドレスの胸)に見とれていた俺は、遅ればせながら陛下に目を戻す。

 と……なんと陛下は……魔界の覇王は、静かに微笑していた。

「あの……陛下?」

 行きがかり上、俺はおそるおそる尋ねた。

 元々、尋ねたのは俺だしな。

 すると、なんと陛下は俺に対して輝くばかりの笑顔を見せ、頷いたではないか。


「そう。確かに予は、まだ自分の考えを述べてはいない。もちろん、理由はある。最初に皆に告げたはずだぞ。本日の査問会は、いつもと多少事情が異なる、と。……これは元々、ナオヤを裁くための査問会ではない。逆だ、あの査問委員共を予が裁く場だったのだ」


 うえっ?

 俺がたまげたのは当然だが、樽おっさん四人組の狼狽たるや、目も当てられないほどだった。こんな短時間にだあっと脂汗かくのって、漫画くらいでしか見たことない。


「ど、どどど、どういう意味でしょうか、陛下」

 クロードおっさんが文字通り、哀訴する

「任命されて間もないとはいえ、臣めらは務めを誠実に果たしてきたつもりですがっ」

「……愚か者め」

 長い金髪を舞わせ、陛下が四名を睨む。


「貴様達が査問委員の地位にいてから、予にその悪辣あくらつな行いを報告する者が増えておる。地位の高い者や賄賂を送る者には裁きの手心を加え、そうではない兵士達には、例外なく過酷な罰を申し渡しているとな」


 既に陛下はすっかり笑みが消え、肌が粟立あわだつような冷えた眼差しへと変わっていた。つか、見られてない俺でもパンツを濡らしそうになったぞ……なんだ、この迫力は。


「一族の者から推薦されたとはいえ、貴様達をこの地位に据えたのは、予の不明であった……遅きに失したが、その方らの罪は予が裁くこととしよう」




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