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到着寸前

 ――不平たらたらのエルザを先頭に、俺達はダンジョン……の裏通路をそろそろと進んでいる。


 ただ、あいにくこの裏通路ですらかなり分岐が多く、エルザの記憶力もさしてアテにならない。

 結果、エルザが「あ、なんか道が違うみたい」といきなり言い出し、何度も通過した分岐まで戻ってやり直しということが起きた。

 ただ、珍しく誰も文句を言わないのは、なんとなく地下神殿で出会うことになる、その死体モドキ(おそらくユメの昔の姿)のことを考え、陰鬱になっていたからかもしれない。


 それと、縦一列という隊形も、皆の口数の少なさに拍車をかけていた。





「そう言えば、レイバーグ達はどうやって捕まったんだ」


 あまりにも辛気くさいことに耐えられず、最後尾の俺は、前の方を歩くレイバーグに尋ねてみた。


「それが……ダンジョンで何度か戦闘をこなすうちに、いきなり後ろにつかれてて、気付いたら、彼女の衝撃波みたいなのを食らって、ふっ飛ばされていたんだ」


 一瞬振り返ったレイバーグは、いかにも面目なさそうに答えた。

「なるほど、それで気絶している間に、あそこに連れていかれたと――じゃあ、ネージュは?」

 さらにレイバーグの前を進む、ネージュにも声をかけてやる。

 いや、随分と訊いて欲しそうに何度も振り返るからさ。

「同じ同じっ」

 無駄に嬉しそうにネージュが頷く。


「私も、魔法を駆使して戦闘中に、後ろから問答無用でぶっ飛ばされてしまったわぁ。あれ、ずるいわよねぇ。だって、魔法発動の呪文とか、一切ないもの」


「ふむ? どうもあのユメって、魔法は自在に、しかも即、発動できるみたいなんだなあ」

 俺がうんざりして言うと、俺の二つ前――つまり、ミュウの前から何度もこちらを振り向いていたマヤ様が、むくれた声を出した。




「これっ、マヤにはどうして訊かぬ!?」


「ああっ、いえ! もしかして、マヤ様は捕まった時のことを話したくないかなぁと思いまして、はあ」


「そんなことはない。あの寸足らず(ユメのことかね)は卑怯千万な振る舞いだったので、嫌でも聞かせてくれよう。途中で出来損ないのホムンクルスや傭兵共をなぎ倒して驀進ばくしんしていたところ、背後から衝撃波を食らったのまでは今の二人と同じだが――マヤは、そんなもので気絶するほどヤワではない」


 ここでマヤ様は、歩みを止めて、わざわざ俺に熱心に言ってくれた……ミュウと向き合うようにして、彼女の肩越しに。

 やむなく、皆も立ち止まって耳を傾ける。


「そこで、『貴様、いきなりなにをするのか、寸足らずめがっ』と振り向いて一喝してやったわけだ。無論、叫ぶだけではなく、即座に武器を出して、あいつめがけて走り出したぞっ」


「おぉ。そ、それでっ」

 あまりにも喧嘩っ早いマヤ様に、何気なく聞いていた俺達の方が青ざめたやん。

「それが――」

 いきなりマヤ様のテンションが落ちた。

 実に悔しそうに顔をしかめ、吐き捨てるように言う。


「あの女、なぜかマヤの後ろを指差し、『あ、ナオヤがっ』などとでっかい声で指差しおった。それで」

「……まさか、その大嘘を真正直に信じて、振り向いた途端に倒されたと?」


 半ば呆れ、半ば気恥ずかしさで俺は呟く。

「し、仕方あるまいっ。いきなりだったのだから。それに、こ奴らのように衝撃波ではなく、眠りの魔法をかけられたのだ!」


「い、いや。そう鼻息荒く言われましても」


 お顔も赤いしっ。

 俺が困惑したところで、上手い具合に先頭のエルザが声をかけてくれた。


「あのぉ……この先の行き止まりが、多分、あたしが覗いたところなんですけどぉ」


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