気を取り直して出発
そこで、気落ちした俺に言い聞かせるように、マヤ様が決断した。
「構わぬ、ナオヤ。まず、その地下神殿とやらへ、向かってみよう」
「い、いいんですか……」
かなりテンションの落ちた俺は、遠慮がちに訊き返してしまった。
「だって、ネージュの指摘通り、勘違いの線が高いですよ?」
「ネージュさんじゃないものっ。元々はあたしの指摘だし、あたしの指摘だしっ」
エルザが膨れっ面で連呼したが、俺もマヤ様も無視した。
「それはどうかな?」
マヤ様が片手を腰に当てたモデルポーズで、ニヤッと笑う。
地下ダンジョンにいても、めちゃくちゃ決まるな、この人。
ぼおっと考えていたら、やたらきっぱり言われた。
「そもそもサクラの証言など、マヤは話半分どころか、二割以下しか信じていない」
「おっとおっ」
俺達の注目はたちまちマヤ様に集まった。
「マヤが多少信憑性があると思うのは、封印の神器の実在くらいだろう。これは、あのユメも在処を気にしていたようだから、実在するのは事実かもしれぬ。ただその所在については、サクラは案外、しっかり覚えていると睨んでいるぞ」
マヤ様は、口元を綻ばせて俺を見た。
「だからこそ、サクラはナオヤ達を置いて先に取りに行ったのではないか?」
「うおっ」
なるべく考えないようにしていたことをずばり指摘され、俺はかなり焦った。
「じゃ、じゃあ、サクラはなぜ隠し場所を覚えていることを」
「――言わなかったか?」
マヤ様が先んじて答えた。
「それはもちろん、マヤがサクラを信じていないのと同様、サクラの方でもマヤ達を完全に信じていないからだろう。当然よな……元々、マヤ達はサクラの味方ではない。油断しないに越したことはないのだし、そんな切り札の存在を、全てべらべら話すとは思えん」
――マヤがサクラの立場でも、ナオヤのような側近くらいにしか言わぬ。
さ、最後の最後に、微妙に俺が照れるセリフ、来ました!
「はああっ」
「さすがは!」
「なるほどなぁ」
あぁあああっ。俺が照れたのは置いて、ローズとネージュと――それにレイバーグまで一緒になって感心してからに。
もう少し、人を信じるってことを覚えようぜっ。
しかし、このマヤ様の決断が文字通りの鶴の一声となり、俺達はエルザが見つけたという、地下迷宮に赴くことになった。
「よ、よし。ならこの裏通路はやたら狭いから、一列縦隊だな」
俺はエルザを手招きして言った。
「じゃあ、エルザが先頭ってことで」
「えぇええええええっ」
他に選択肢もないだろうに、もう最初から腰が引けた上に、悲鳴など上げてくれた。
「だっだって、先頭って一番致死率が高くて」
くだくだと言い訳を始めたところで、マヤ様が一喝した。
「いいから、とっとと先頭に立たぬかあっ」
「は、はいぃいいっ」
おぉ……よく「飛び上がって驚く」とか言うが、ホントに人が飛び上がるのって、初めて見たぞ。マヤ様の一喝は強力だわー。
先に何が待ち構えているかも知らず、この時の俺は、まだこんなことで感心する余裕があったのだな。




